「俺はお前から逃げた相手と戦うんだ!」
丁寧な笑み、善意の通訳、それに対する無反応。そして、前王者と新王者のあいだで交わされた敬意ある握手。
それが、元WBAフェザー級王者レイモンド・フォード(17勝1敗1分、8KO)と、IBFジュニアライト級王者エドゥアルド・ヌニェス(28勝1敗、27KO)との間で、実際にはほとんど言葉を交わさずに交わされた“会話”の趣旨だった。場所はニューヨーク、
リチャードソン・ヒッチンズがジョージ・カンボソス・ジュニアを8回TKOで下したマッチルーム興行の短縮版、そのリングサイドでの出来事だった。
両者をプロモートするマッチルーム代表エディ・ハーンは、当然ながらマディソン・スクエア・ガーデン・シアターでの一戦を興奮気味に見守っていた。ハーンは、今回のような場面を経て、来年の今ごろには両者が世界タイトルをかけて実際に対峙することを期待している。
ヌニェスは5月27日、日本で行われた試合でリキイシ・マサノリ(16勝2敗、11KO)に12回判定勝ちし、
空位だったIBF王座を獲得した。ハーンはマッチルーム同士による世界タイトル戦を望んでいるが、ロス・モチス出身のヌニェスは年内にまず任意防衛戦を行う見込みだ。
したがって、願いを実現させるには、両者とも勝ち続けることが絶対条件となる。その第一歩は、レイモンド・フォードが8月16日にサウジアラビアで行う試合だ。相手は好調を維持する元王者
アンソニー・カカーチェ(24勝1敗、9KO)。
アンソニー・カカーチェが2024年5月にジョー・コーディナを8回TKOで破る番狂わせを演じた直後、IBFはヌニェスとの対戦を指令。しかし、両陣営はステップアサイド(回避合意)に合意し、ヌニェスは9月に予定されているアンソニー・ジョシュア対ダニエル・デュボア戦のアンダーカードで、ジョシュ・ウォリントンとの防衛戦を行うことが認められた。
その2か月後、両者のプロモーター間でカカーチェ対ヌニェス戦の合意が成立したと見られたため、IBFは入札手続きを中止した。
しかしカカーチェはその後、IBF王座を返上し、より高額な報酬が見込まれる試合を選択した。
先月にはノッティンガムの地元で元2階級世界王者リー・ウッドを相手に再び見事なストップ勝ちを収め、メインイベントを飾った。
フォードは、
4月12日にトーマス・マティスとの試合で全ラウンドを制する圧倒的な判定勝ちを収めた。現在、WBCおよびWBAで4位、WBOおよびIBFでは5位にランクされている。
IBFのランキングは今月の更新で刷新される見込みだ。というのも、現時点で1位と2位の枠が空位であり、リキイシ・マサノリが敗れた一方、カザフスタンのサウスポー、スルタン・ザウルベク(20勝無敗、11KO)が4月にアジンガ・フゼイルにキャリア最高の勝利を挙げたためだ。
2か月後に控える試合の意図について問われた際、フォードはDAZNのクリス・マニックスに対し、「何もしないままでいるのは嫌だったんだ」と語った。
「最初は断ったんだ。今は世界王者との試合に集中したいと思ってたから、サウジアラビアに戻るのは正直気が進まなかった。俺の本命は“シュガー”・ヌニェスとの対戦だったんだけど、向こうからは『待たなきゃいけない』って言われてさ。それならってことで、今はとにかく動き続けるのが最善の選択だった。」
今月でちょうど1年が経過する。フォードがプロ初黒星を喫し、WBA世界タイトルを失ったのは昨年のことだった。サウジアラビアの首都リヤドでリバプール出身のニック・ボールに12回スプリット判定で敗れ、その後ようやく、2019年から作り続けていた階級から上げる決断を下した。
「向こうからは『12〜16か月待つことになる』って言われたんだ。カカーチェ戦は楽勝だと思ってる。俺がKOで終わらせるよ。ヌニェス対リキイシの試合も見たけど、ヌニェスはいい動きをしてたし、やるべきことをしっかりやった。おめでとうと言いたい。あとは将来的に大きな試合を組めたらいいな。俺には俺の仕事があるし、彼にもある。お互いしっかり勝って、対戦が実現することを願ってるよ。」
昨年まで母国メキシコのみで試合を行っていたヌニェスは、評価の高まりとともに今後も海外での試合を継続していくと見られている。
タジキスタン、ロサンゼルス、そして横浜で実績ある相手にストップ勝ちを収めてきたヌニェスに対し、エディ・ハーンは今後も世界各地でその才能を披露させる意向を示唆した。現在、統一戦への道が限られている階級において、27歳のヌニェスをファンに親しまれる王者として売り出していく考えだ。
WBO王者エマヌエル・ナバレッテは、オールメキシカン対決の可能性もある存在だが、今月、
チャーリー・スアレスとの即時再戦をWBOから指令された。これは、先月行われた試合の物議を醸した結末がノーコンテストに変更されたことを受けての措置だ。