ノッティンガム(イングランド)発 — 土曜夜のメインイベントでは、轟音が会場を包み込んだ。そしてその喧騒を沈めるように、IBO世界スーパーフェザー級王者
アンソニー・カカーチェが冷静さを保ち、地元の人気者
リー・ウッドを9回TKOで下して観衆を黙らせた。
カカーチェ(24勝1敗9KO)は、IBF王座を自ら返上する道を選び、そ
の王座は5月28日にエドゥアルド・ヌニェス(27勝1敗27KO)と力石政法(16勝1敗11KO)が争う予定だ。試合後のリング上インタビューで感極まったカカーチェは、より大きな報酬を得たことを明かした。
ウッドとの対戦では、義務挑戦者との防衛戦で得る予定だった報酬の2倍が支払われ、敵地での試合を受け入れた。かつて「レイサル」として英国でもっとも刺激的なボクサーのひとりと称されたウッドにとっては、フランク・ウォーレン陣営でのプロモーション初戦となったが、今回は勝利という選択肢はなかった。
最終的にウッドは、絶好調の王者カカーチェに決定的な場面を作ることができず、見事なジャブとタイミングの妙で試合を支配された。そして試合後には、ウッド自身が今後を見つめ直すべき厳しい問いが残された。
このメインイベントは、クイーンズベリー・プロモーションによる全12試合の最終戦であり、イースト・ミッドランズのモーターポイント・アリーナで開催された。前半のアンダーカードはYouTubeで、後半の4試合はDAZNを通じて世界中に配信された。
両者が試合前に語っていた内容を踏まえると、まさに“勝者が残る”一戦であり、そのため開始直後から慎重に距離を測る展開となった。カカーチェが積極的に前に出る一方で、ウッド(28勝4敗17KO)は距離を取って回避を試みた。リングサイドで見守る家族の姿は、緊張に満ちていた。
第1ラウンドの残り30秒、カカーチェが前進しながら顔面にジャブを叩き込むと、ウッドは明らかにダメージを受けたか、少なくとも動揺した様子を見せた。
第2ラウンドではウッドがやや積極性を見せ、左を小刻みに打ち込んでいくが、カカーチェは右を返しながら前進する2階級制覇王者の動きにタイミングを合わせようと試みた。
「リーにはパワーがない、行け!」という声援を受けて前進したウッドは、最後にきれいなカウンターを決め、観客を盛り上げたものの、このラウンドを完全に制したとは言いがたかった。
第3ラウンドでは、ウッドがジャブを2発放って王者を下がらせ、直後に観客が歌で応援するなど、会場には緊張感と期待が高まっていた。だが、カカーチェは美しいアッパーカットを決め、その後も右を立て続けに当ててウッドを翻弄。巧みなフェイントに何度も引っかかるウッドは、単発の攻撃を繰り返すだけでは対応しきれず、連打の必要性が増していった。
インサイドでの打ち合いに持ち込んだウッドは、第4ラウンドに興味深い展開を築いた。1年前、王者カカーチェがジョー・コルディナを意外なTKOで下した時も、密着戦がきっかけだったことを意識しての戦略だった。
しかし、至近距離でもカカーチェは一切ひるまず、ウッドの攻撃は控えめながらも的確で、油断すれば反撃される可能性があることを示していた。
高いガードを保ちながらジャブを軸に試合を進めるカカーチェは、ワンツーの連携が冴え、前に出る動きも明確な意図が感じられた。第5ラウンド終盤、ウッドは3連打のカウンターで会場の歓声を一気に引き上げた。
第6ラウンドでも、カカーチェのインサイドワークが効果を発揮。ウッドはジャブを多く被弾し、「頭を動かして守りを固めろ」とセコンドから指示が飛んだ。
試合は後半に突入し、カカーチェはヒット・アンド・ムーブを徹底。一方でウッドのパンチがヒットするたびに会場は大きく盛り上がり、その稀少な成功がいかに貴重かを物語っていた。
第8ラウンド序盤、ベン・デイビソン・トレーナーから「動かせ、相手に仕事をさせろ」との指示が飛び、ウッドはボディを攻めた。しかし、レフェリーのジョン・レイサムがカカーチェに対しラビットパンチ(後頭部への反則打)を厳しく注意し、接近戦の応酬が続いた。
このラウンドはウッドにとってしばらくぶりの好ラウンドとなり、両者は出血する激戦を展開。しかしカカーチェは王者らしく果敢に応戦し、強烈な左フックを叩き込んで第9ラウンドの激闘を幕開けた。
ロープ際に追い詰められたウッドにはスタンディング・エイト・カウントが与えられ、その時点で試合の行方はほぼ決まった。
一時的に持ちこたえる姿勢を見せたウッドだったが、逃げ場はなく、足元もおぼつかない状態に。ダメージの蓄積を見かねたデイビソンがタオルを投入し、さらなる被害を防いで試合を終わらせた。