ラスベガス発――多くのグアテマラ人男性と同じように、
レスター・マルティネスも子どもの頃はプロサッカー選手になることを夢見ていた。
母国ではボクシングは盛んなスポーツではなかったが、11歳で競技を始めたことで地元で高校の奨学金を得ることができた。そして約20年後、アマチュアとプロの道を紆余曲折しながら歩んできたマルティネスは、人生を一変させる可能性を秘めたラスベガスのアレジアント・スタジアムの舞台に立とうとしている。
もしマルティネスが
クリスチャン・ムビリ(29勝0敗24KO)を破れば、WBCスーパーミドル級暫定王座を手にし、グアテマラ初の世界王者となるだけではない。リング誌スーパーミドル級1位のコンテンダーを撃破し、カネロ・アルバレス vs. テレンス・クロフォードのアンダーカードをNetflixで観戦する世界中の巨大な視聴者層に自身の名を強烈に印象づけることになる。
マルティネス(19勝0敗、16KO)は、168ポンド級でRing誌ランキング1位のコンテンダーをも打ち負かし、Netflixで配信されるカネロ・アルバレス対テレンス・クロフォードのアンダーカードを視聴すると見込まれる膨大な視聴者に、自身の存在を印象づけることにもなるだろう。
「グアテマラから多くの偉大なボクサーが出てきたわけじゃない」マルティネスは
『 ザ・リング・マガジン』 に語った。
「ボクサーはいたけど、“偉大”と呼ばれる選手は少ない。だから、この大きな舞台、カネロ対クロフォードのカードに出られる興奮は想像できるだろう。グアテマラみたいな小さな国から来て、この史上最大級の興行に出られるのは人生最大のチャンスであり、夢の実現なんだ」
その夢が現実に近づいたのは3年前。クロフォードのチームに長年所属してきたエサウ・ディエゲスが、ついにクロフォードのチーフトレーナーであるブライアン・マクイントタイアにマルティネスをじっくり見るよう説得したのがきっかけだった。
ディエゲスはグアテマラ出身だが、クロフォードの地元ネブラスカ州オマハに20年以上住んでいる。
「彼はずっと『この選手を呼んでみろ、俺はよく知ってるんだ』って言い続けてくれていたんだ」マルティネスは振り返る。
「それでついに、彼らも聞き飽きてチャンスを与えてくれたんだと思う」
マルティネスがクロフォード陣営の正式なチームメイトとなったのは、2023年4月にラスベガスで行われたイザイア・スティーン(当時16勝2敗12KO)戦で8回TKO勝利を収めたことがきっかけだった。
「3年前から彼らと一緒にやり始めた」マルティネスは語る。
「彼らは俺を試したんだ。プロ15戦目(スティーン戦)で勝つところを見たがっていて、俺はしっかり勝ち切った。そこで(マクイントタイアが)『よし、キャンプに連れてこい。そこで見てみよう』と言ってくれたんだ。それ以来、このチームの一員になれたことを本当にありがたく思っている」
クロフォードの後押しもあり、マルティネスはフロイド・メイウェザー対マニー・パッキャオ以来10年ぶりにアメリカで行われる最大級のビッグファイト、そのアンダーカードに名を連ねることとなった。
NFLレイダースの本拠地アレジアント・スタジアムには、65,000人超の満員観衆が詰めかける見込みだ。さらに今回はアメリカでペイ・パー・ビューではなくNetflixで配信されるため、世界中の3億人以上の契約者が追加料金なしでこのアルバレス対クロフォードの4試合興行(米東部時間午後9時/西部時間午後6時開始)を視聴できる。
モントリオール出身のムビリ(30歳)は、マルティネスとの10回戦に向けて
勢いで勝っている。アルバレスのWBC王座の指名挑戦者でもあり、スーパーミドル級で最も“避けられる”ファイターとしての評価を確立している。
一方、29歳のマルティネスは、この人生を変えるチャンスに万全の準備が整ったと感じている。
クロフォードと数え切れないほどスパーリングを重ねる中で多くを学び、その妥協を許さない練習姿勢が自らにも染みついたからだ。
「ムビリ戦では俺が有利じゃないのは分かってる」マルティネスは語った。
「でもアウェーでアンダードッグとして戦うのには慣れている。だからこそ、自分自身、そしてグアテマラをボクシングの地図に刻むつもりだ」
クロフォード陣営のサポートを受ける前、マルティネスはほとんど無名のまま技を磨いてきた。
マネージャーのアルド・ミールは、7年前コロンビア・バランキージャで行われたアマチュア大会で、キューバの二度の五輪金メダリスト、アーレン・ロペスを破るマルティネスのアップセットを目の当たりにし、契約を結んだ。この勝利は、アマチュア約40戦のうち半分程度しか勝てなかったマルティネスにとって大きな転機となった。
2019年4月のプロデビュー戦では、元王者リカルド・マヨルガを2回TKOで粉砕。プロとして6年間戦ってきたが、ムビリほど危険な相手と対戦するのは初めてだ。それでもこのハードヒッターは、こうした大舞台を待ち続けてきた。
「レスター・マルティネスはここにいる、大きなことを成し遂げるために生まれてきたんだって証明したい」彼はそう語った。
Keith Idecは『ザ・リング』の上級ライター兼コラムニスト。Xでは @idecboxing でフォローできる。