オレクサンドル・ウシクが先月、ロンドンのウェンブリー・スタジアムでダニエル・デュボアをストップしたとき、ウクライナの偉大なボクサーはヘビー級の4団体統一王座を取り戻しただけでなく、自身がこの時代最高のヘビー級であることを確固たるものにした。
この勝利によって、ボクシング界の花形階級であるヘビー級の、興奮に満ちた活発な時期に非公式ながら終止符が打たれた。
デュボアを下したことで、
ウシクは自身の王座にとって最も差し迫った脅威を取り除き
、アンソニー・ジョシュア、タイソン・フューリー、デュボアといった相手との長年にわたる激闘を経た今、彼の前には際立った、避けがたいライバルがいなくなった。
ウシクは輝かしいキャリアの終盤に差しかかっており、長い期間にわたって多数の指名挑戦者を相手にし続けることはないだろう。彼の4団体統一王座が再び分裂し、新たな挑戦者たちがその数多くのベルトをかけて争うのは時間の問題のように思われる。
ウシク、フューリー、ジョシュア、そして
デオンテイ・ワイルダーは、この10年間ヘビー級の主役であり続けてきた。
これらの大物たちが完全にリングを去った後、ヘビー級ボクシングは移行期に入ると見られており、誰かが一歩前に出て、自らがふさわしい後継者であることを証明しなければならない。なぜならファンはすでに、長年言われてきたこととは逆に、すべての当事者がやる気さえあれば、ビッグマッチや王座統一戦は実現できるという現実を目の当たりにしているからだ。
ウシクがデュボアをストップした試合のアンダーカードで、元2階級世界王者の
ローレンス・オコリー(22勝1敗、16KO)は
左上腕二頭筋の断裂を乗り越え、ケビン・レレナに危なげなく判定勝ちし、WBCヘビー級の1位の座を確保した。
ウシクが今後どうするにせよ、オコリーはその争いの中に名を連ねており、32歳のロンドン出身の彼は
『ザ・リング』に対し、この争奪戦をできるだけ早く始めたいと語った。
「今はみんなウシクにすがっている」と彼は言った。「すべてのボクサー、すべてのヘビー級ボクサー、すべてのヘビー級トレーナー、すべてのヘビー級マネージャー、すべてのヘビー級プロモーターが『よくやった。全員に2回ずつ勝ったんだから』って言っているよ」
「でもそれは、彼に負けてほしくないから言ってるんじゃなくて、彼がすべてのベルトを止めてしまってるからなんだ。だから、『全部返上してくれ。他のみんなにもロイヤルランブル(大乱戦)をさせてくれ』ってことになる。そうじゃないと、ウシクに勝てると思うかどうかは関係なく、タイトル戦は年に1回か2回しか行われなくなってしまう」
「例えば、暫定王者が4人いるとして、それぞれが指名される順番によっては2年ずつ待たなければならない。だから、王座が分裂してくれたほうがいいし、いずれまた統一に向けた動きが生まれる可能性もある。
すべてはウシク次第、という感じはするけれど、もしかしたら…まあ願望かもしれないけど、もし次にジョセフ・パーカーとの試合(WBOが指令予定)をやらないのであれば、なぜ1本だけ王座を手放して、他は保持し続けるんだ? だったら全部返上して、自分のエキシビションマッチやフューリーとの試合、あるいは他の誰かとの試合をすればいいと思う。だから、どうなるかは見守るしかないね」
アギット・カバイェルは、オコリーよりもさらに慎重な立場にある。好調を維持しているドイツ人の彼はWBC暫定王座を保持しており、ウシクが次の一手を決めるまでは、自身の今後について何らかの決断を下すことを望まないだろう。
もしウシクが、あの有名な緑と金のベルトを返上することになれば、カバイェルとオコリーが空位の王座をかけて対戦することになる。その試合に、オコリーは大いに乗り気だ。
「“運命”みたいな言葉はあまり好きじゃないけど、流れはそっちに向かっているように思う。彼は明らかに暫定チャンピオンで、俺はシルバーチャンピオンでWBCの1位。だから、すべてはウシクの動向次第だと感じているよ」とオコリーは語った。
「ウシクは
カバイェルと試合をしたいと思うかもしれないし、パーカーとやりたいと思うかもしれない。他の誰かと戦いたいと思うかもしれない。だから、ウシクが決断を下すまでは、大きな動きはないと思ってる。でも次の試合か、その次には、俺とカバイェルが戦うことになると思うよ。そして世界中を見渡しても、カバイェルに挑戦状を叩きつけてるボクサーなんて他に見たことがない。『カバイェルと戦いたい』なんて言ってるヤツは、一人も見かけないね」
「その話をしているのは、どうやら俺だけみたいだ。でも、時が来ればわかるさ」
今後の混戦に関わってくるのが確実視されているもう一人のファイターが、無敗のWBA暫定王者
ファビオ・ワードリーだ。オコリーは、ワードリーのマネージャーであるディリアン・ホワイトと長年にわたる因縁を抱えており、カバイェルとの対戦がボクシング界の政治的な産物だとすれば、イギリス人同士であるオコリーとワードリーの一戦は、ごく自然で不可避な展開といえるだろう。
「神のご加護があれば、俺たちはどちらも勝ち続けるだろうし、あの試合は絶対に実現すべきものだと思ってる」とオコリーは語った。
「彼がやってきたことを語るなら、『何も成し遂げてない』なんて言うのはウソになる。前回の試合では本当によくやっていたし、あの試合で多くのものを見せたと思う」
「もちろん俺は
ディリアン・ホワイトとの試合を望んでいたけど、それは実現しなかった。今はモーゼス・イタウマがそのチャンスを得ている。ディリアンはファビオのマネージャーだから、もしディリアンとできないなら、ファビオとやらせてくれ。俺たちでダンスしようじゃないか」