マンチェスター(イングランド)発 —
アキブ・フィアズはこれまでのキャリアで浮き沈みを経験してきたが、25歳の今、ようやくボクシングに完全に集中できるようになった。
フィアズは成功したアマチュア選手であり、2階級制覇王者カール・フランプトンが元IBFフェザー級王者
ジョシュ・ウォーリントンと対戦する際には、スパーリングパートナーとして選ばれた経歴を持つ。その後、19歳でプロに転向した。
それ以来、フィアズはマッチルームとプロモート契約を結び、13連勝を重ね、父親にもなった。一方で、怪我や試合からの長期離脱にも苦しみ、母親と親友を亡くすという大きな悲しみにも直面した。
昨年6月には、
ケイン・ベイカーとの試合が予定されていたが、不正な賭けパターンが確認されたことで直前に中止となった。イギリス・ボクシング管理委員会による長期にわたる徹底的な調査の結果、フィアズに不正行為はなかったと認定され、キャリアを継続する許可が下りた。
フィアズはこの件を乗り越えたものの、完全に忘れたわけではない。
そして今年2月、ライドン・チルコップを2ラウンドTKOで下し、16か月ぶりの復帰戦を果たした。この一連の出来事は、彼にとって新たなモチベーション源となっている。
「前回の試合内容や、ジムでのパフォーマンスを見てもらえればわかる。今の俺と戦うのは本当に最悪のタイミングだ。今の俺の状態は、それくらい仕上がっているんだ」とフィアズは『ザ・リング』誌に語った。
「これまで人生をかけて築いてきたものを、すべて失いかけた気がした。だからこそ、今こそ全力を尽くす時だし、復帰してからはとにかく必死に努力し続けてきたんだ。」
当初、フィアズは今週末、地元マンチェスターのライバル、マイケル・ゴメスJr(21勝2敗、6KO)との注目の対戦が予定されていた。しかし、
ゴメスが手首の負傷で直前に欠場となり、代わってサルフォード出身のアレックス・マーフィーが対戦相手に決まった。
フィアズは、この変更により試合の注目度は下がったかもしれないが、実際にはマーフィーの方が厳しい試練になると見ている。マーフィーは今年4月、スーパーライト級に階級を上げ、
カリール・マジドに僅差で敗れて無敗記録を失ったが、その内容は非常に評価が高かった。
24歳のマーフィーはその後すぐにジムに戻り、短期間の準備で番狂わせを狙っている。ゴメスの欠場は残念だったが、フィアズは意味のある試合を望んでおり、代役がマーフィーに決まっても動揺はなかったという。
「この試合は本当に重要だった。キャンプも完璧に仕上がっていたし、どうせ勝てるような相手との試合では無駄になってしまうところだった」とフィアズ。
「自分には試される試合が必要だし、アレックス・マーフィーはいい相手だ。もちろん、自分が勝つとは思っているけど、ゴメスとはまったく違うタイプの難しさを持っている。理想的な状況とは言えないけどね。」
「マーフィーの方が、ボクシングIQが高いように感じる。スイッチヒッターっぽい動きも見せるし、足も良い。ゴメスは全部のパンチに突っ込んできただろうから、簡単に崩せたと思うけど、アレックスはもっと複雑な課題を出してくる。」
「でも、心配はしていない。試合当日には必ずその課題を解いて、勝ってみせるよ。」
マーフィーに勝てば、それはフィアズの6年間のプロキャリアの中で最大の勝利となるだろう。
2023年10月、フィアズは
リース・ベロッティとのコモンウェルス・ジュニアライト級王座戦で敗れ、キャリア初のKO負けを喫した。しかし、彼はその敗北から多くを学び、再びタイトル戦線に戻る準備が整いつつあると感じている。
とはいえ、今はまだその話をする段階ではないと本人もわかっている。タイトル挑戦が語られる前に、自らの価値を証明しなければならない。その最初のステップが、今週末のマーフィー戦なのだ。
「もうほとんど準備は整ってる。今すぐでも戦える」と彼は力強く語った。
「もちろん、
ベロッティは次にライアン・ガーナーとの欧州タイトル戦が控えていて、いつかはあの借りを返したいけど、今はまだそこに興味はない。先のことは考えていない。」
「俺はあの時とはもう別人だ。あのときは23歳で、今は25歳。精神的にもずっと成熟したと思う。リングの外で起きたいろんな出来事が、急速に自分を成長させたんだ。成長せざるを得なかった。23歳でああいう試合に踏み込んだこと自体、自分がどんな人間かを証明していると思う。」
「俺はあのレベルを経験してる。あの舞台に立ったことがあって、それも若いうちにね。誰とでも戦う覚悟がずっとあるし、昔からそのつもりだった。周りの誰もがそれを分かってる。今はここで大きなパフォーマンスを見せて、そして次こそはあのレベルの試合だ。やらなきゃいけないよ。」