リングに全てをかけることは、井上尚弥にとって愛すべきことであり、同時に憎むべきことでもある。
彼を「戦士」と呼ぶことは誇張ではない。逆境に追い詰められたとき、彼は常に応えてきた。ノニト・ドネアとの一戦で眼窩骨折を負い、直近4試合で2度
キャンバスに倒されたにもかかわらず、
井上はその都度復活し、リング上であらゆる困難を経験してきた。しかし、彼をファンのお気に入りにした数々の激闘は、徐々に彼から何かを奪い始めているかもしれない。
ボクシングの歴史には、多くの偉大なファイターが引退を先延ばしにし、限界を超えて戦い続けた例が無数に存在する。しかし井上はその道を選ばない。彼はボクシングを愛し、尊敬し、それに生き、呼吸している。それでも、これまで通りの鋭さを維持している今でさえ、彼は長くは続けないと考えている。
「自分の戦いのキャリアは、適切なタイミングで終えたい」と井上は最近「
ザ・リング」に語った。「あと3年ほどだと思っています。今年を含めてです。」
ファンが拳を握りしめ、彼に引退を思いとどまらせようと懇願する前に、井上は残りのキャリアでファンが望む試合を提供するつもりだ。
次は9月のムロジョン・アフマダリエフ戦。その後、ニック・ボールとの対戦が噂され、2026年5月には
中谷潤人とのビッグマッチが予定されている。
これらの対戦は決して簡単なものではない。しかし、井上は自信に満ちている。その自信は時に過信に近いかもしれないが、彼は現実を見据えている。
32歳の井上は、キャリアを強く締めくくるために最高の状態を維持しなければならない。それには自分自身と正直に向き合い、冷静に自己評価を行うことが必要だ。井上はそのプロセスを通じて、自分が依然として破壊力を持ち、圧倒的なファイターであると確信している。しかし、時間は確実に過ぎている。
「体力やパフォーマンスに衰えを感じたことはまだありませんが、いずれその日は必ず来るでしょう」と井上は語った。「トレーニングや試合の計画を、その現実を念頭に置いて立てる必要があります。人間である以上、いつかは衰えが訪れるのは避けられないことです。だからこそ、自分を理解し、準備を怠らないことが重要です。」