井上尚弥は、挑戦を追い求めることに喜びを見出すタイプである。しかし問題なのは、その挑戦相手がなかなか見つからないという点だ。
ノニト・ドネアとの初対戦を除けば、井上はほとんどの試合で圧倒的な強さを見せてきた。ルイス・ネリ戦やラモン・カルデナス戦でダウンを喫した場面もあったが、いずれもすぐに立て直し、主導権を握り返した。
これまで比較的順調にキャリアを進めてきた井上(30勝0敗、27KO)だが、今後にはいくつかの難敵が控えている。
フェザー級のニック・ボールやラファエル・エスピノサは、井上よりも大柄でパワーもあるとされており、122ポンド級のライバルであるムロジョン・アフマダリエフは、今年9月に予定されている対戦で「井上を倒す」と意気込んでいる。
それらの強豪はいずれも手強い存在だが、井上にとって最も危険な存在になり得るのが
中谷潤人、現WBCバンタム級王者である。彼と対戦することになれば、日本人スーパースターである井上にとって、もしかすると天敵となるかもしれない唯一の存在だ。
両者の間ではすでに口頭合意がなされているが、具体的な日程や開催地は未定となっている。ただし、井上の中では明確なイメージがあるようだ。
「2026年5月頃かな」と、井上は最近ラスベガスで行われた
カルデナス戦(TKO8勝利)後、記者団に語った。
現在、井上はスーパーバンタム級で快適に戦っており、同階級の全タイトルを保持している。一方、中谷(30勝0敗、23KO)が上の階級に上がり、リスクを取って挑む形となる。両者とも『The Ring』誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキングでトップ10に入っており、日本の誇りを背負って世界の舞台で戦っている。
中谷の名前が話題に上がるとき、井上は遠くからでも分かるほどの笑顔を浮かべる。『The Ring』で現在7位の中谷に勝てば、同誌ランキング2位の井上が再び頂点に返り咲く可能性もある。
この対戦はボクシング界で最も知られた秘密となっているが、数週間は中谷に井上の名前を出さない方がいい。中谷の視線は、今は完全に西田凌佑とそのIBF王座に向けられているからだ。
中谷と西田の一戦は、6月8日に東京・有明コロシアムで開催される予定である。