イングランド・ロンドン――2002年9月20日にさかのぼると、プロボクシング界に今なお影響を与え続けている、わずか2ポイント差で決着したアマチュアの試合がある。

その日、71kg級準決勝の一つで敗れたボクサーは、将来を嘱望され、優勝候補の筆頭と目されていた逸材であり、しかもスポンサーはあのエマニュエル・スチュワードだった。

しかしどれだけ努力しても、ヘスス・ゴンザレスはハバナでサウスポーの相手を攻略することができず、19対17で敗れて大会を去ることになった。

スチュワードはその日、ゴンザレスが敗れたことに驚きを隠せなかった。それも、名前すら聞いたことのないアイルランド人の少年に負けたという事実に。

だが、運命のいたずらのように、その試合映像を確認していたスチュワードは、勝者のセコンドにいたコーチが「クロンカジム」のTシャツを着ていることに気づいた。

そのコーチは当時アイルランド代表チームの指導者だったトニー・ダンロップであり、ベルファスト・クロンカジムの創設者でもあった。彼のもとで戦っていた技巧派かつ強打のアンディ・リーがゴンザレスを退けたのだ。リーはそれまでにもオンドレイ・モルナー、マルコ・アントニオ・ペリバンをストップし、イスマイル・シラークにも判定勝ちして決勝進出を決めていた。

スチュワードはこの少年のことをもっと知る必要があると感じ、ついには彼の電話番号を入手。そして、その年のクリスマスの日に電話をかけた――あとの話は歴史となった。

リーは2005年にスチュワードのもとでプロ転向し、キャリアをスタート。最終的には2014年12月、WBO世界ミドル級王座を獲得するまでに至った。

師でありトレーナーであったエマニュエル・スチュワードは、2012年10月に亡くなっており、アンディ・リーが世界王座を獲得したときにはすでにこの世を去っていた。しかし、スチュワードとクロンカジムがリーに与えた影響は非常に大きく、リムリック出身のサウスポーであるリーは「スチュワード最後の世界王者」として語られることが多い。

現在41歳のリーは、2017年に35勝3敗1分（24KO）の戦績で現役を引退。現在は、デトロイトで培った知識と経験を、次の世代へと伝える指導者として活動している。

そして、スチュワードの最も有名な世界王者の一人であるレノックス・ルイスは、リーがアイルランド・ダブリンで指導している選手たちに、あの伝説的なクロンカジムの影響が色濃く表れていると感じている。

次に登場するのはパディ・ドノバンだ。彼は9月13日、ベルファストでルイス・クロッカーとIBFウェルター級王座をかけて対戦する予定だ。

しかし、レノックス・ルイスは今月初めにクイーンズで開催された「リングIII」興行において、ハムザ・シーラズがエドガー・ベルランガをノックアウトした際にも、クロンカジムの影響を見て取っていた。

「アンディ・リーの指導スタイルには、クロンカジムのスタイルが色濃く表れているのがよく分かる。本当に多くの部分でね」とレノックス・ルイスは語った。

ルイスとスチュワードは、1994年にルイスがオリバー・マッコールに敗れた後にタッグを組み、ヘビー級史に残る強力なパートナーシップを築いた。

二人は1997年に世界ヘビー級王座を奪還し、1999年にはルイスがヘビー級の4団体統一王者となった。

そして現在、アンディ・リーはジョセフ・パーカーとのタッグにより、自身もヘビー級戦線に関わっている。

「彼は素晴らしいトレーナーだと思うし、ジョセフ・パーカーが彼と組んでいることを嬉しく思う」とルイスは続けた。「ジョセフには彼のような優れたトレーナーが必要だと私は思っている」

パーカーは、ネバダ州ヘンダーソンでケビン・バリーとトレーニングを積んでいた時期にWBO世界ヘビー級王座を獲得したが、2021年に環境を変える決断をし、それ以来アンディ・リーとコンビを組んでいる。

現在、彼は『ザ・リング』のヘビー級ランキングで3位に位置し、WBOの指名挑戦者でもある。さらに、直近の3試合ではディオンテイ・ワイルダー、チャン・ツィレイ、マルティン・バコレを破るなど、ヘビー級で最も勢いのあるファイターの一人だ。

「彼は今や完全にクロンカジムのスタイルを身につけている。間違いないよ」とルイスは語る。「アンディ・リーとジョセフ・パーカーは、まさにクロンカの伝統を引き継いでいるんだ」