フィラデルフィア —
ジャロン “ブーツ” エニスは、ここ数年ずっと自分を追い詰め続けてきた。
チームによると、元『ザ・リング』王者であり、IBFとWBAの元ウェルター級王者でもあるエニスは、およそ80パーセントの実力しか発揮できていなかったという。マッチルーム会長でプロモーターのエディ・ハーンは、さらに低く「60〜70パーセント程度だった」と見ている。パーセンテージがいくつであれ、147ポンドを作ることは
エニスの身体にとってあまりにも過酷になっていた。周囲の誰も、2023年以降のエニスを“本来の姿”だとは感じていなかった。だからこそ、154ポンド級への階級アップは必然だった。そして土曜の夜、地元フィラデルフィアの新装されたXfinityモバイル・アリーナ(76ersとフライヤーズの本拠地)で、エニスはタフな
ウイスマ・リマを相手にジュニアミドル級デビューを果たした。
30対1という圧倒的なオッズで迎えたエニス(28)は、その期待どおりの仕事をやってのけた。前に出てくる32歳のリマをあっさりとさばき、WBAジュニアミドル級暫定王座を懸けた12回戦で、初回1分58秒TKO勝ちを収めた。
観客が席に腰を下ろす間もなく、ショーン・クラーク主審が試合を止めた。
「やるべきことは分かっていた」とエニスは言う。「自分の強さは分かっていた。147(ポンド)ではもう限界だったんだ。ジャブを軸にして、ボディに触っていった。相手は早い段階で捕まるのを嫌がって、少し慎重になっていたと思う。今回は本当に調子が良かった。最高の気分で、リフレッシュして、トレーニングが楽しかった。大きなメッセージを送れたと思う。」
この日のエニスのパフォーマンスは、エディ・ハーンの耳に心地よい“音楽”のように響いた。ハーンはすでに、ファンが待ち望む一戦――エニス(35戦35勝〈31KO〉1無効試合)とWBC暫定王者
ヴァージル・オルティス・ジュニア(23戦23勝〈21KO〉)との激突――を来年の第1四半期、ラスベガスかテキサスで実現させる構想を立てている。
「これこそ、ここ数年ずっと見たかった“本来のブーツ”だ」とハーンは試合後に語った。
「ブーツは154(ポンド)を作るためにまだ少し無理をしていたが、これが本当の彼の姿だ。147のときは極限まで削っていたのに、それでも勝ち続け、圧勝していたんだ。個人的には、160(ミドル級)が彼にとってベストウェイトになると思っている。でも今回は154で最高のスタートを切った。リマはそのためのちょうどいい相手だった。」
「ブーツはボクシングの未来だ。彼は規格外に大きい。154を作るのも大変だったが、147を作るときほどの苦労ではなかった。」
エニスは実に12年間、147ポンドのリミットを守ってきた。
ハーンによれば、オルティスはフィラデルフィアでの試合を受けるつもりはなく、すでにゴールデンボーイ陣営と話をつけ、エニスの名前が入った契約書まで準備済みだという。
その先に、ハーンいわく「ファンがエニスに最も望んでいる試合」――エニス対オルティス戦――が待っている。
「ブーツは147を作るために自分を殺していた」とハーンは言う。
「今ようやく、154でのブーツの本当の実力が見えてきた。彼が100パーセントに近い状態なら、どれほどすごいか想像できるか?147のときはまったく100パーセントではなかった。ブーツはもう、
テレンス・クロフォードの後を継ぐ準備ができている。」
「オルティス戦はベストマッチだ。(ゴールデンボーイ社長の)エリック・ゴメス、(同社オーナーの)オスカー・デ・ラ・ホーヤ、そして私の3人で会議室に集まり、DAZNでのブーツ対オルティス戦の契約を来年の第1四半期にまとめた。もう決まっている。ブーツは今夜やるべきことをやっただけだ。ヴァージル・オルティスはジャロン・エニスに破壊されるだろう。彼はこれから全員を粉砕していく。」
リマ戦の前、
エニスは4月に行われたエイマンタス・スタニオニスとの王座統一戦(第6ラウンドTKO勝ち)に向けたトレーニングキャンプで、これまでとは異なる特別な調整を行っていたことを明かした。その試合では、エニスが開始から終了まで完全に主導権を握り、圧倒的な内容で勝利を収めていた。
とはいえ、エニスが147ポンドを作ることに苦しんでいた兆候はすでに見えていた。2024年11月、地元フィラデルフィアで行われたカレン・チュカジアンとの再戦では、12ラウンドの判定勝ちを収めたものの、どこか“クルーズコントロール”に入ったような印象を与えた。
キャリアの中でも珍しく、圧倒的な強さを見せられなかったことに批判の声が上がった。特に、容易に倒すと予想されていた相手だっただけに、ファンは落胆した。
だがその低調な試合の直後、エニスはキャリア最高のパフォーマンスとも言えるスタニオニス戦で、無敗王者を6ラウンドで粉砕し、完全復活を印象づけた。
そして今回のリマ戦。試合前は大口を叩き、自信満々だったリマだが、実際にはエニス(153.5ポンド)の攻撃に全く対応できず、開始直後からリマ(153ポンド)は後退を余儀なくされた。
エニスは初回に2度のダウンを奪う。最初のダウンは右アッパーでぐらつかせた直後、強烈な右ストレートが顎を撃ち抜いたもの。続いて、左・右・左・右のコンビネーションで32歳のリマを再びキャンバスに沈めた。
その時点で、リマにはもう何も残っていなかった。エニスは“メッセージ”を示すために戦っていたのだ。
そして、そのメッセージは確かに届いた。――2026年第1四半期、その意味が本当に明らかになるだろう。
Joseph Santoliquito は、『ザ・リング・マガジン/RingTV.com』で1997年10月から執筆を続ける殿堂入りの受賞スポーツライターであり、全米ボクシング記者協会(BWAA)の会長を務めている。X(旧Twitter):@JSantoliquito