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「タイソン・イン・トーキョー」じゃない 井上尚弥、米国再登場で敗戦はあり得ないと断言
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Manouk Akopyan
Manouk Akopyan
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「タイソン・イン・トーキョー」じゃない 井上尚弥、米国再登場で敗戦はあり得ないと断言
ラスベガス — 日曜日にT-モバイル・アリーナでジュニアフェザー級の4団体統一王座を防衛する「モンスター」井上尚弥の姿は、シン・シティのあらゆる場所で目にすることができる。

MGMグランドの象徴的な緑色の外壁には井上の姿が描かれ、ニューヨーク・ニューヨークをはじめとするMGMリゾーツの施設では、巨大な看板に試合の広告が掲げられている。MGMグランドに足を踏み入れると、伝統的なボクシングリングと金のライオン像が迎え入れ、ビッグファイトが間近に迫っていることを知らせてくれる。ブラックジャックのテーブルにも井上の顔が描かれ、ストリップのホテルにチェックインすれば、ラスベガス・マガジンの表紙を飾る井上が出迎える。テレビをつければ、チャンネルを変える前に井上の試合ポスターが最初に画面に映し出される。

一流のショーと著名なアーティストが集うこの街で、トップランクとラスベガスは、この日本人トップファイターのアメリカ初となる真のビッグイベントのためにレッドカーペットを敷いて迎えている。4階級制覇王者の井上(29勝無敗、26KO)は、これまでに米国で3度試合をしているが、そのうち2回はパンデミック中のラスベガス、もう1回は2017年のロサンゼルスでのアンダーカードだった。2020年4月には、ジョンリール・カシメロとの試合がラスベガスのマンダレイ・ベイで予定されていたが、パンデミックの影響で中止された。

井上は昨年4200万ドルを稼ぎ、東京ドームに5万5000人を動員するなどの実績を誇っているが、ボクシングファンは彼のアメリカ本格参戦を長年待ち望んでいた。

しかし、直近10試合連続KO中のこの世代最高の才能を前にしても、需要と期待は必ずしも一致していない。メキシコのスーパースター、カネロ・アルバレスが近年独占してきた「シンコ・デ・マヨ・ウィークエンド」に合わせた大規模なプロモーションにもかかわらず、観客の反応は鈍いままだ。

井上対カルデナス戦のチケット価格はここ数週間で引き下げられ、スタジアムの上層席は販売されていない。一般公開の計量は、T-モバイル・アリーナ周辺でビッグファイトが行われる際に定番となっているMGMグランド・ガーデン・アリーナや東芝プラザではなく、MGMグランド内のボールルームで開催された。一般向けにはわずか200席しか用意されなかったが、立ち見が出るほどの人が詰めかけ、需要はそれをはるかに上回っていたように見えた。

このイベントへの期待感を高めようとする努力も、対戦相手である無名のカルデナス(26勝1敗、14KO)に勝つのは既定路線と見られていることで、水を差されている。カルデナスはWBAの1位にランクされているが、2年足らず前までUberやLyft、DoorDashで生計を立てていた選手である。

ブックメーカーは井上を-10000の圧倒的本命、カルデナスを+1200の大穴としており、これは昨年9月のTJ・ドヘニー戦、そして2月の代役キム・イェジュン戦(本来の相手はサム・グッドマン)に続いて、3試合連続で楽な相手との対戦となっている。

長年にわたり、日本の平日昼間に試合を行い、アメリカでは早朝に放送されてきた井上だが、今回のESPN中継は太平洋標準時で午後7時開始予定。ロサンゼルス・ドジャースに所属する同胞の野球スター、大谷翔平が出場するアトランタ・ブレーブス戦の直後に放送されるため、かなりの視聴数が見込まれている。

「理想的な形は、アメリカのファンに僕のボクシングを見せて、KOで勝つことです」と、金曜日の記者会見で井上は通訳を介して語った。「でも何よりも、アメリカでまだ見せられていない何かを見てもらいたい……この舞台は、僕のボクシング技術を見せるのに良いチャンスだと思っています」。

「こういう大きなアリーナでアメリカの観客の前で戦えるのはすごくモチベーションになる。でも、シンコ・デ・マヨ・ウィークエンドの開催ということで、まるでアウェイ戦を戦っているような気分なんです。だから、どうなるかは正直わかりません」

井上の共同プロモーターであるトップランクのボブ・アラム会長は、井上をアメリカで試合させることにこだわっており、井上自身もそれに同意している。アラムや主催者側は、日本からより多くのファンが訪れることを期待していたが、日本での人気がそのままアメリカ、とくにカジノ客層にはつながっていない。試合には約1万人の観客が入ると予想されている。

イベントには30人以上の日本人記者が取材に訪れているが、注目度の低さから現地入りを見送ったメディアも多い。

「井上のような大スターが日本にいるなら、世界中でその姿を見せたいと思うのは当然だ」とアラムはザ・リング・マガジンのインタビューで語った。「彼は日本ではまるで一つの産業のような存在。でもアメリカでもとても良い反応が得られている。彼は本当に素晴らしい人間で、リングの外でも理想的なトップファイターだよ」

また、このイベントでWBOフェザー級王者ラファエル・エスピノサと対戦するエドワード・バスケスのプロモーターを務めるルー・ディベラは、『The Ring』に対し「井上がラスベガスで完売できていないという現象は、今のボクシング界全体に蔓延する問題の一端に過ぎない」と語った。

「なぜ我々は、外国のスーパースターがアメリカの助けを必要としていると傲慢に思い込むのか?」と、ディベラは語った。「観客の反応がないのは、我々が長年にわたってひどい仕事をしてきたからだ。シンコ・デ・マヨ・ウィークエンドに、カネロがリヤドで試合をし、ニューヨークでも大きな興行がある中で、日本のジュニアフェザー級の選手がラスベガスで2万枚のチケットを売るなんて、かなり野心的な話だ。すべての興行が成功してほしいと思っているが、アメリカのボクシング界を立て直す必要がある。今のアメリカでは、ファンの関心がピークではない。『俺たち全員でこの業界をダメにした』と言えないアメリカのプロモーターは、嘘をついている。我々は自分たちのベッドを自分たちで整えたんだ。すべてに責任がある。世界の主要カードがどこで行われているかを見てみれば分かるだろう。リヤドとイギリスがボクシングの中心地になっている。それは紛れもない事実で、井上は東京ドームを毎回満員にできる選手なんだ」

『The Ring』誌のパウンド・フォー・パウンドで2位にランクされ、2023年の年間最優秀選手であり、大谷翔平に次いで日本で2番目に人気のあるアスリートである井上だが、アメリカではカネロ・アルバレスやジャーボンタ・デイビス、あるいはマニー・パッキャオのような熱狂的な支持はまだ得られていない。パッキャオもかつては無名の軽量級ファイターだったが、世代を代表する才能として大人気となった。

WBA、WBC、IBF、WBO、そしてThe Ringの122ポンド王者である井上も、かつてのカザフスタンのKOアーティスト、ゲンナジー・ゴロフキンのように、アメリカでも熱狂的なファン層を築ける可能性はあるかもしれない。しかし、それが「いつになるのか、あるいは本当に実現するのか」は、誰にも分からない。井上自身はニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの試合も望んでいるが、再びアメリカに戻ってくるかどうかは不透明だ。

現在32歳の井上の予定は、しばらく先までびっしり詰まっている。

井上は今後のスケジュールとして、9月14日に東京でムロジョン・アフマダリエフとの対戦を予定しており、12月にはサウジアラビアのリヤド・シーズンで、WBAフェザー級王者ニック・ボールとのフェザー級デビュー戦を控えている。そしてその後、東京に戻り、WBCバンタム級王者で『The Ring』パウンド・フォー・パウンド8位の中谷潤人との、日本人同士によるボクシング界屈指の注目カードが組まれる予定だ。

試合週の井上は、ライト級王者ジャーボンタ・デイビスとの対戦といったSNS上の噂話に対して一蹴する姿勢を見せた。また、126ポンド(フェザー級)以上では戦わないと明言し、3年後には引退する可能性にも言及した。

一方、落ち着いた様子で試合に臨むカルデナスは、サンアントニオ出身の29歳のメキシコ系アメリカ人で、2月に無敗だったブライアン・アコスタに勝利し、キャリア最高の結果を挙げている。彼は「完璧な試合運びをすれば勝てる」と自信を見せており、「もしかしたらバットをリングに持ち込む必要があるかもしれない」と冗談を交えながらも、1990年にマイク・タイソンが東京でバスター・ダグラスに敗れた“世紀の番狂わせ”の再現を狙っている。

あの試合は、井上が昨年ルイス・ネリ戦で起用されるまで、東京ドームで開催された最後のボクシングイベントでもあった。井上はその試合でキャリア初のダウンを喫しながらも、6ラウンドTKOで勝利している。

「彼に勝つには、36分間完璧でなければいけない」と、カルデナスはザ・リング・マガジンのインタビューで語った。「どうやって勝つかはわからない。でも勝つということだけはわかっている。誰も俺が3ラウンド生き残るとも思っていない。世界中が『あいつを倒したのは誰だ?』って驚くような“おいおいマジか”っていう勝利を挙げてみせるよ」


マイク・タイソンがバスター・ダグラスにKO負けした後、当時のトレーナー、アーロン・スノーウェルは「東京ドームがあまりに静かで、ネズミが綿の上に小便をする音が聞こえるほどだった」と語ったことで知られている。

ラットテイル(尻尾のように垂らした髪型)をトレードマークにするカルデナスは、その歴史の再現を狙い、「井上を倒す可能性はゼロではない」と証明しようとしている。

「俺が井上を倒したら、アリーナは静まり返って、針が落ちる音が聞こえるだろう」と、彼は語った。

一方、普段は寡黙な井上も今回ばかりは珍しく、試合前プロモーションの文脈をなぞる形で「落とされて処理されるのはカルデナスの方だ」と断言し、自身はさらに大きな舞台へと進む「予行演習」だと位置づけた。

「負けることへの恐れは一切ない。この試合のために、これまでで一番ハードに準備してきた」と井上は語った。「カルデナスは素晴らしい選手で、総合的に優れたファイターだ。でも自分にとっては簡単な相手だと思う。彼がどんな戦い方をしてきても、自分が優位に立つと信じている……この試合に向けては、ただ純粋な自信しかない」

Manouk Akopyan はザ・リング・マガジンの主任ライター。X(旧Twitter)とInstagramで @ManoukAkopyan をフォロー。

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