タイソン・フューリーは
デオンテイ・ワイルダーのことが好きではない。ほんの少しも好きではない。しかし、彼ですら最近のワイルダーの姿には心を乱されている。
両者のライバル関係については、2021年に連続TKO勝ちを収めたことで、フューリーにとってはすでに終わった話となっている。それ以降、ワイルダーにとっては厳しい日々が続いている。
2022年、ロバート・ヘレニウス戦ではこれまでと変わらぬ爆発力を見せ、第1ラウンドでのKO勝利を収めた。しかし、その後すぐに表舞台から姿を消した。
2023年にはジョセフ・パーカーに完封されるような内容で完敗。2024年には、39歳となったワイルダーがチャン・チレイに5ラウンドで打ちのめされ、ストップされた。
敗北が重なる中、フューリーは静かにその様子を見守っていた。英国出身の巨人は、心のどこかでワイルダーを応援していたのかもしれない。しかし、何度も敗れる姿を見て、フューリーは元WBC王者がもはや以前の姿ではないと悟った。
「かつての激しさを誇ったデオンテイ・ワイルダーが、今ではその面影しか残っていないのを見るのは悲しいことだ」とフューリーは最近、複数の記者に語った。
とはいえ、明るい兆しもある。ワイルダーのキャリアは再び上向きつつある。
6月27日、彼は勝利を取り戻した。カンザス州ウィチタのチャールズ・コック・アリーナで行われた試合では、タイレル・ハーンドンが“生け贄”のように扱われ、ワイルダー(44勝4敗1分、43KO)はほとんど遊ぶように戦い、7ラウンドで試合を終わらせる一撃を決めた。
この勝利が今後もっと当たり前のものになることを、ワイルダーは願っている。最終的には、現統一ヘビー級王者
オレクサンドル・ウシクとの決戦が、自身の行き着く先だと楽観的に見ている。
フューリーは、その対戦が実現するとはまったく思っていない。スピード、タフさ、そしてもちろん破壊的なパンチ力──それらはもうワイルダーには残っていない、と彼は語る。
ボクシングの世界は甘くなく、時の流れには誰も逆らえない。だからワイルダーの急激な衰えを見ても、フューリーは驚いていない。ただ、そのキャリア晩年の姿には納得がいっていない。
「彼のことが悲しい」とフューリーは語った。