トニー・ハリソンにとって、引退は単なる「可能性」ではなく、現実のように思われていた。
過去7年間でわずか1勝。特に2023年3月には
ティム・チューに一方的な打ちのめされ方で敗れ、元WBC王者はリングから身を引いたかに見えた。
しかし約2年半のブランクを経て、ハリソンはこれまでとは異なる姿勢でリングに戻ってくる。しかも今回は階級を上げての復帰戦となる。7月26日、ミシガン州デトロイトのリトル・シーザーズ・アリーナで行われる試合では、これまで以上に筋量を増した姿でロープをくぐることになるだろう。
ハリソンは、
クラレッサ・シールズが
ラニ・ダニエルズを相手に行う女子ヘビー級4団体統一タイトル防衛戦のアンダーカードで、ドミニカ共和国のエドワード・ウロア・ディアス(15勝6敗、12KO)との10回戦に臨み、ミドル級デビューを果たす予定だ。相手が同世代であることには敬意を示しているものの、特に厳しい試練になるとは考えておらず、“踏み台”として捉えている。
決して油断はしないし、できる状況でもない。しかしハリソンには、限られた残り時間の中で達成したい大きな目標がある。
「世界タイトルを取り戻すことが自分の最優先目標。160ポンド(ミドル級)でのフィーリングはすごくいい」と、ハリソンは書面コメントで語った。
「すべては7月26日、地元でまた始まるんだ。さあ、食らいついていこうぜ。」
ハリソンの新たな挑戦を支えるのは、ディミトリー・サリタとサリタ・プロモーションズだ。今週初めに新たな契約選手として発表され、今後のキャリアは、
元プロボクサーで長年プロモーターを務めるサリタのもとで進められることとなった。間もなく35歳を迎えるハリソンは、自身のキャリアがすでに長く、体に刻まれたダメージも少なくないことを自覚している。しかし同時に、「技術こそがすべてを支える」とも語り、その点においては自信を失っていない。だからこそ、残された時間と闘いながら“スーパー・バッド”は最後のランを特別なものにしたいと願っている。
「残された時間は短い。だからこそ積極的に戦い、勝ち続けて、再び頂点に戻ってみせるつもりだ。」