エドガー・ベルランガ対ハムザ・シーラーズ、シャクール・スティーブンソン対ウィリアム・セペダという注目の2試合が並ぶ中で、7月12日のPPV興行の最初の試合が、実は最も見応えのある一戦になるかもしれない。
モレル(11勝1敗9KO)は、今年2月1日にWBC世界ライトヘビー級王者デビッド・ベナビデス(30勝0敗24KO)に判定で敗れ、キャリア初黒星を喫して以来の復帰戦となる。27歳のキューバ人モレルは善戦したものの、ベナビデスの圧力と経験に差を見せつけられる形となった。
カタエフ(10勝0敗9KO)にとって、今回の試合はキャリア最大の試練であり、最も注目度の高い舞台となる。強打を誇る無敗のロシア人は、プロ入りから9試合連続KO勝ちを収めてきたが、前戦では初めてフルラウンドを戦い抜き、3月22日にドゥルバル・エリアス・パラシオ(15勝4敗11KO)に判定勝ちを収めた。
層の薄いライトヘビー級において、この試合の勝者は次戦でビッグファイトに手が届く可能性がある。ここでは、モレルとカタエフそれぞれの「勝利の鍵」を紹介する。
デビッド・モレルの勝利の鍵
レンジの外から戦うこと
モレルはカタエフよりも身長とリーチで勝っている。そのアドバンテージを最大限に活かすことが、パワーとプレッシャーを武器にする小柄なカタエフを相手にする上で重要となる。
カタエフにとって理想的な展開は、距離が詰まり、まるで電話ボックスの中で戦っているかのような近接戦だ。そうなれば、彼は強烈なフックやストレートで頭部とボディを狙うことができる。モレルには、優れた運動能力とスピード、そして威力のあるパンチがあるため、相手の攻撃距離に入らせずにダメージを与えることが可能だ。
モレルは、防御とアウトボクシングを重視する典型的な“キューバスタイル”のアマチュア出身ボクサーとは異なる。彼は積極的に前に出て、爆発力とパワーで相手を圧倒するタイプだ。
とはいえ、今回は少しペースを落とし、自身の身長、リーチ、スピードを活かして、カタエフを的確に打ち崩していく戦い方が賢明だろう。
カタエフを下がらせること
モレルが受ける危険の度合いは、どちらが主導権を握るかに大きく左右される。
カタエフ(30歳)は後ろに下がりながらもボクシングやカウンターができるが、真価を発揮するのは前に出て、頭部とボディに連打を浴びせる時だ。モレルがカタエフを内側で戦わせずに押し下げることができるかどうかが、勝利への道の難易度を左右する。
特にジャブと左ストレートでカタエフを後退させ、射程の外に留めておければ、モレルは勝利への近道を切り開くことができるだろう。
ヘッドムーブを取り入れること
ベナビデス戦での敗因のひとつは、モレルの頭の動きが少なすぎたことだった。
彼はサウスポーとしてガードを固め、ブロック主体の防御に頼っていたが、ベナビデスの手数とコンビネーションの前にその戦略は崩された。
この防御面での失敗から学ぶことは、モレルにとって極めて重要だ。もっと頭を動かすことで、カタエフへのカウンターのチャンスを増やし、より大きなダメージを与えられるようになる。
もしモレルがカタエフの攻撃をかわして的確に反撃できれば、自身のキャリアで最も印象的な勝利を手にするチャンスとなる。
イマム・カタエフの勝利の鍵
ボディを徹底的に攻めること
スピードで劣る相手を止める最善の方法は、ボディを狙って動きを鈍らせることだ。
カタエフがスピード面での劣勢を補うには、序盤から積極的にボディを攻める必要がある。実際、モレルに勝利したベナビデスもこの戦法を用い、着弾224発のうち76発をボディに当てている。
カタエフもこれにならい、序盤から執拗にボディを叩くことでモレルの動きを削ぎ、自身のプレッシャーとパワーが生きる終盤勝負に持ち込む展開を目指したい。
ペース配分に気をつけること
カタエフは前戦で初めてフルラウンドを戦い、試合後半には明らかにスタミナ切れの兆候を見せた。
判定勝ちを収めたとはいえ、10ラウンド以上の経験を複数回持つパラシオ相手に後半は苦戦を強いられ、被弾も増え、パンチの威力も落ちていった。
モレル相手に同じような形でガス欠になるのは致命的だ。カタエフはコンディションを整えるか、自身のペースを見極めて戦わなければ、7月12日には初黒星を喫する危険性が高まる。
コンビネーションとレベルの打ち分けを意識すること
カタエフがリズムに乗った時には、手数を出しながら頭部とボディの両方に攻撃を散らしている。
モレル相手にアップセットを狙うなら、その形を再現する必要がある。特にモレルがガードを固めてインサイドで守る場面では、連打を放つことでガードの隙間を突くチャンスが生まれる。
実際にベナビデスは手数と攻撃の多様性でモレルを攻略した。カタエフもキャリア最大の勝利を狙うなら、同様の戦略を取り入れるべきだ。