ロンドン(イングランド)発 — 2016年7月、当時24歳のアマチュアだった
ミック・コンランは、ナシム・サディキとの3ラウンド戦を制してナショナル・スタジアムの控室へ戻ったが、それがダブリンのリングに立つ最後の機会になるとは、この先ほぼ10年近くも訪れないことになるとは、夢にも思っていなかった。
しかし9月5日、ベルファスト出身のコンランはついにプロとして初めてダブリンのリングに立つことになる。3アリーナで
ジャック・ベイツンと10回戦を戦う予定だ。
当然ながら、彼は今やまったく別人となっている。サディキに勝利した1か月後、彼はリオ五輪に出場。しかし準々決勝で敗退し、試合後に中指を立てた姿は、当時のアマチュアボクシング界の空気を象徴するものとなった。
それは、かつて愛していたこの競技に対する彼の心を硬くした出来事のひとつに過ぎなかった。ボクシングに人生の26年間を捧げてきたとはいえ、今ではその愛情もほとんど残っていない。「ひどい世界だよ」と彼は
『ザ・リング・マガジン』に語る。「愛そうとしても、ボクシングは決して応えてくれない。だから、決して愛せるスポーツじゃないんだ。」
それでも彼は歩みを止めない。世界タイトルを追い求めるその姿には、それを手にできるかどうかが、彼が満足して引退できるかどうかを左右するという強い決意が感じられる。2022年から2023年にかけての14か月間で、リー・ウッド、そして
ルイス・アルベルト・ロペスにストップ負けを喫し、これまで2度の世界王座挑戦はいずれも失敗に終わっている。現在の戦績は19勝3敗(9KO)。コンランは、次に敗れた時、あるいは世界タイトルを手にした時にはボクシングから身を引くつもりであることを隠していない。
この事実が、自分にかかるプレッシャーの多くを和らげてくれたと彼は感じている。「もしまた負けたら、それで終わりだ」とコンランは語る。「それだけのこと。俺はこの世界から去る。」
「そう言うことに何の恐れもないし、正直言って気持ちが楽になる」と彼は続ける。「今はただ楽しむつもりだ。これまで自分にプレッシャーをかけすぎてきたと思うし、それがたぶん足かせになっていたんだ。」
「これから先のことはなるようにしかならないし、今はこの旅そのものを楽しもうと思ってる。キャリアを通して大きな舞台や素晴らしいパフォーマンスは何度もあったし、ヘイトもたくさん受けた。でも、世界チャンピオンにならなければ、そんなものは全部クソみたいなもんだ。」
コンランは、リングから離れていた14か月に区切りをつける形で、3月に
ブライトンでアサド・アシフ・カーンとの8回戦に判定で快勝した。欧州フェザー級王座への挑戦も期待されていたが、次戦はノンタイトル戦でジャック・ベイツンとの対戦が決まっている。
「この試合はこの試合なりにいい試合だよ、わかるだろ?」とコンランは言い、返答を求める様子もなく続ける。「ジャックはいい奴だし、悪く言うつもりはまったくない。正直に言えば、ジャックは俺の視界には入っていなかった。だからこの対戦が決まった時も『よし、ジャック・ベイツンとやろう』なんて気持ちはなかった。ただ、『まあ、いいか』って感じだった。」
「相手に主導権を握らせればやっかいな相手になるかもしれないけど、そうはさせないつもりだ。」
プロとして8年以上のキャリアを持ちながらも、試合数はわずか22戦。しかも長期間リングを離れていたことを考えれば、コンランはボクシング界においては“若い33歳”なのではないか、という問いが投げかけられた。
「それはどうかな」と彼は笑いながら言う。「この世界で自分を若いなんて、もう言えない気がするよ。もう長いことこの業界にいるからね。
でも、33歳にしてはフレッシュでリフレッシュされた感じはある。リングを離れていた時間が、俺の中に再び火をつけてくれたし、また情熱が戻ってきたんだ。『自分が何をしたいのか、何を成し遂げたいのかはわかってる。そのために何をすべきかもわかってる』って、そう思えるようになったよ。」
「キャリアの終盤に差し掛かっているのは分かってる。俺はバカじゃないし、もう若手でもない。もう尻尾のほうさ。でも、自分に何ができるかは、まだちゃんと分かってるよ。」
コンランは、リオ五輪後にプロ転向を決めた際、同世代の中でも最も注目を集めたアマチュアのひとりだった。その証拠に、プロデビュー戦で6回戦ながらマディソン・スクエア・ガーデンのシアターでトップランク興行のメインを務めたことが挙げられる。しかし、プロキャリアは決して思い描いていた通りには進まなかった。実際、最後にダブリンで拳を交えてからの9年間は、彼の想像とは大きく異なる展開となっている。
「今ごろは世界チャンピオンになってると思ってたよ」と彼は語る。「この時点ではもうそのポジションにいてもおかしくないと思ってたけど、まあ、そううまくはいかないもんだよな。なりたい時に、なりたい場所にたどり着けるとは限らないんだ。」
「でも、すべては計画のうちってことさ。この世界ではタイミングが本当に、本当に重要なんだ。俺の考えじゃ、ボクシングで一番大事なのはタイミングだよ。誰と戦うか、どこで戦うか、どう戦うか――全部が重要なんだ。だから、たぶん思っていた場所にはまだたどり着いてないけど、それでも何年ぶりかにダブリンに戻ってこられて嬉しいよ。」
「これは俺にとって夢のひとつなんだ。このキャリアの段階でそれが叶うっていうのは、本当に素晴らしいことだし、すごくワクワクしてる。2016年の最後の試合はもうずいぶん前だけど、昨日のことみたいに覚えてる。あの場所は俺にとって本当に特別な場所で、アマチュア時代のキャリアの大半を築いた場所なんだ。」
では今の夢は、ダブリンで3度目の世界タイトル挑戦のチャンスを手にするポジションに自分を持っていくことなのだろうか?
「それはもう間違いなくそうだよ」と彼は即答し、少し間を置いてから続ける。「いや、でもさ……実のところ、そんなことはどうでもいいのかもしれない。」
「たぶん今こうしてインタビューを受けてるから、いろいろ言ってるだけかもしれない。でも、世界タイトルをどこで獲ったって信じられないほどのことだよ。月の上だって構わないさ。」
「それにさ、もし世界タイトルを獲ったら、こう言うよ──『アスタ・ルエゴ、みんな。俺はもう行くぜ、じゃあな』ってな。このひどい世界にはもううんざりなんだよ。だから去る。俺がまだボクシングを続けてる唯一の理由は、世界チャンピオンになるという目標があるからだ。そして、それを成し遂げる力が自分にはあると分かってる。」