リアム・デイビースはすでにボクシングの頂を垣間見てきた。
ドニントン出身の29歳デイビースは、ゼロから這い上がってきた。数々の印象的な勝利を重ね、イングランド王座、英国王座、欧州王座、そしてIBOジュニアフェザー級王座を獲得。その過程でメインイベントを飾る存在へと成長した。
世界タイトル挑戦が目前に迫っていた2023年11月、
シャバズ・マスードに敗北したことでデイビースは無敗記録を失い、再び山を下ることになった。
現在デイビースは静かに再構築を進め、次のチャンスが訪れたときに万全の準備が整っているよう全力を尽くしている。戦績17勝1敗(8KO)の彼にとって、これは決して初めての状況ではない。
プロ転向を決意した際に華々しい舞台が用意されていたわけではなく、デイビースのデビュー戦はバーミンガムのホリデイ・インという無名の会場だった。成功を掴んだのは努力と、与えられたチャンスを逃さなかったことによるものだった。
再び自らを証明しなければならない状況に不満を抱くどころか、デイビースはむしろそれを楽しんでいる。過去にも同じことを成し遂げており、再びやれると分かっているからだ。
「まさにその通りの気持ちだ。でも平気さ。むしろモチベーションになるからね」とデイビースは『ザ・リング』に語った。「これは第2章なんだ」
5月、デイビースはフェザー級に戻り、2020年東京五輪代表
カート・ウォーカーに3-0の判定勝ちを収め、再起の船出を飾った。
この勝利はデイビースにとって、個人的にもキャリア的にも非常に重要なものだった。そして勝ち方そのものが、ファイターとしての成長を示す内容でもあった。
マスード戦では、技巧派カウンターパンチャーを追いかけたことで代償を払うことになった。ウォーカーも同様のスキルを持つと早くに見抜いたデイビースは、戦い方を工夫し、大振りを狙うのではなく2発、3発のコンビネーションを意識して戦った。
「前回はまた無敗の相手(ウォーカー)と戦った。確かに、これまで自分がやってきたレベルとは違うと言う人もいるだろう。でもそれでもリスペクトは得られると思った。実際、楽に戦えたし、2ラウンド目に相手に空振りさせられたのも事実だ。前のマスード戦では焦って空回りしていたから、今回はそうならないようにしたかったんだ。
スパーリングのつもりではなかったけど、元プロだった父(トリスタン)が『軽く突いていけ。相手は耐えられない』と言っていたから、その通りに多くのパンチを出した。凄みはなかったかもしれないけど、それは前回の悔しさと焦りが影響していたんだと思う」
デイビースが次のチャンスを得るまで、そう長く待つ必要はないだろう。彼はいま、層の厚い英国フェザー級戦線の真っ只中にいる。
現WBAフェザー級王者
ニック・ボールが頂点に立ち、その背後ではナサニエル・コリンズがスペインの
クリストバル・ロレンテへの欧州タイトル挑戦を控え、
リース・エドワーズとガリー・ポワーが空位の英国王座を争う予定となっている。
一方で、スケジュールが空いている男が一人いる。
近年では、ファイターがチームと勝利写真を撮る間もなく、次の対戦相手の話題が持ち上がる。絶好調のミラーが試合後インタビューを終えた際、潜在的な対戦相手としてデイビースの名前が挙がった。
その頃デイビースはキャラバンでくつろいでおり、激闘の12回戦は見ていなかった。それでも自分の名前が出たことはすぐに耳に入った。
「試合自体は見ていなかった」とデイビースは語った。「ちょうどビーチから戻ったところで、キャラバンは電波が良くなくてね。あとで友人が動画を送ってくれた。理由は分かるけど、自分にとっては無駄な試合だと思う。ただ、試合をしたいからやるだろうけどね。ザックはいい奴だし、試合自体に異論はない。誰とでも戦うつもりだ。でも自分にとっては後退だ。自分はニック・ボールのような相手と戦いたい。唯一その試合を受ける理由があるとすれば、肩に荷を背負って全力で叩きのめしてから『なぜ俺をこんな相手と戦わせるんだ?』と言うためだろう」
「もしその試合が選択肢として提示されたら、自分が断ることはないだろう。でもこうも言うはずだ――『やるなら何らかのランキングにつながる形にしてくれ』と。俺はIBF王者
アンジェロ・レオとの試合が好きだし、正直なところ他の世界王者との試合も全部やりたい。自分は彼らと十分に渡り合えると思っているし、前回の試合はただ“勝ち”を取り戻すためのものだった」
デイビースはミラーとウッドストックの試合を見ていなかったが、過去18か月で頭角を現したミラーとその実績を評価している。
彼は126ポンド級のトップファイターとの試合にすぐにでも飛び込みたいと考えている。仮に他のチャンスが巡ってこなかったとしても、マンチェスター出身のミラーとの試合は、再び世界戦線に乗り込むための確かな足場になると理解している。
「俺の地元じゃ“乞食は選り好みできない”って言うんだ」とデイビースは語った。「だからチャンスがあれば何でも受ける。分かるだろ?アメリカの
ブルース・キャリントン、ぜひ戦いたい。アメリカで試合を組めるはずだし、誰の懐も痛まない。あっちへ行って彼を倒し、そのまま世界タイトル挑戦を手にしたい」
マスード戦での敗北は、英国ボクシング界で最も急速に上り詰めた男の快進撃を冷酷に止めるものだっただけに、再びデイビースの声に自信が戻ってきたことは喜ばしい。
ボクシングファンやメディアの移り気は激しい。デイビースは、世界タイトル挑戦の抱負や、日本に渡ってパウンド・フォー・パウンドのスターであり4団体統一ジュニアフェザー級王者・
井上尚弥との対戦の可能性を語っていた立場から、一気に何も聞かれなくなる立場へと転落した。
表向きは常に明るい自信と自己信頼を崩さなかったデイビースだが、ウォーカー戦の勝利後には、この数か月が困難であったことを認めた。
フェザー級への転向は、彼にとって自身を再発見する機会となった。何よりもまず、なぜ自分がボクシングに恋をしたのか、その原点を見つめ直す決意をしたのだ。
現在デイビースは、全精力を自らの技術向上と、自分でコントロールできる部分に注いでいる。ベストの状態を取り戻せば、結果は自然とついてくると理解しているからだ。
「調子はいい」とデイビースは語った。「人生そのものの見方は変わっていない。ただボクシングに対する見方が変わったんだ。以前のように気にしすぎることはなくなった。ボクシングの仕組みを理解するようになったんだ。人生はいつも良かったし、不幸せだったことはない。苛立ちの原因はボクシングにあった。でも努力を続ければ、すべては戻ってくると分かっている。
これまでもトレーニングはしてきたが、試合が決まっていないのにこれほどハードに練習し、食事にも気を配ったことはなかった。今これほど集中できているのは、自分がどこまで行けるのかを知っているからだ。あと一歩のところまで行ったことがあるし、再びそこに辿り着けると確信している。ただボクシングに生き、呼吸し続ければいいんだ」