マンチェスター(イングランド)――
モーゼス・イタウマ戦が発表された瞬間から、ジャーメイン・フランクリンは、人々が上から目線で「20歳のイタウマに貴重なラウンド経験を与えて、世界ヘビー級タイトルへの順調な道を後押しする“理想的な相手”だ」と語るのを、黙って聞かされ続けている。
少なくとも公の場では、1月24日にマンチェスターの巨大アリーナ、コープ・ライブ・アリーナで『ザ・リング』ヘビー級9位のイタウマと対戦するとき、32歳のミシガン出身フランクリンが番狂わせを起こすと本気で考えている人はほとんどいないようだ(DAZN独占配信)。
だが、肩の力が抜けていて、知識も豊富なフランクリンは、そんな評価などまったく気にしない。
「こう言うしかないな」とフランクリン(24勝2敗、15KO)は月曜の記者会見の立ち上げで
『ザ・リング・マガジン』に語る。「オレはキャリアの大半をBサイドで過ごす。プロになったときから、相手の地元に乗り込んでボコボコにしてきた。これがずっとオレのストーリーだ。ここへ来るたびに“倒されに来た”“やられに来た”と言われる。
今となっては、そんなのはただの言葉だ。」
フランクリンは英国リングをよく知っている。2022年11月にはロンドンでディリアン・ホワイトに12回の多数決判定で敗れた。翌年4月には再び英国に戻り、二度の世界ヘビー級王者アンソニー・ジョシュアにしっかりした実戦の場を与えた末、判定負けを喫した。
フランクリンは世界トップクラスのヘビー級選手たちと多くスパーしてきた。特にジョシュア戦は、一流選手とリングを共有するとはどういうことかを身をもって知る、非常に貴重な経験になった。
フランクリンはボクシングビジネスをわかっている。イタウマ(13勝0敗、11KO)のこれまでの実力には感心しているが、“未来の王者確定”と持ち上げるのは時期尚早だと考える。
「それがボクシングだ。どんなスポーツでも“次のスター”を予測したり、誰かと比べたりするものだから、まあ普通のことだよ」と彼は言う。
「ちょっと偏っているとは思うけど、普通だ。よくあることだ。」
サウジアラビアの劇的な参入と、次々と生まれるエキサイティングで予測不能な好カードによって、ヘビー級は完全に“チャンスの宝庫”になっている。
しかしマネジメント上の問題がフランクリンを足止めし、その波に乗るのを妨げてきた。
9月、ついにチャンスが巡ってきて、フランクリンはそれを最大限に生かす。テレンス・クロフォード対カネロ・アルバレスの“4団体統一スーパーミドル級戦”のアンダーカードで、
無敗だったカザフスタンのイワン・ディチコを破り、キャリア最高の勝利を挙げた。
フランクリンには、まだまだ存在感を示すための時間は十分にある。リング外の問題に悩まされても、その野心やボクシングへの情熱がしぼむことはない。
「フラストレーションはあるけど、あまり考えすぎないようにしているんだ。オレはキリスト教の中で育ったから、みんな旅路が違うことをよく分かっている」と彼は言う。
「オレの道のりは他の誰かと同じじゃないかもしれない。だから、あれこれ考えすぎたり、誰かを羨んだりイライラしたりしないようにしている。遠回りしているかもしれないけど、結局はたどり着けるんだ。」