井上尚弥は、
ムロジョン・アフマダリエフに明確な勝利を収めたことで、ここ数年と変わらぬ強大な「モンスター」であることを証明したと確信する。
過去19カ月間で、ルイス・ネリ戦とラモン・カルデナス戦においてダウンを喫しながらもストップ勝ちで巻き返したことで、4団体統一スーパーバンタム級王者である井上が以前ほど支配的ではないのではないかと疑う声もあった。日本の至宝は、
9月14日に日本で行われたアフマダリエフ戦で、約6年ぶりに12ラウンドを戦い抜くが、ウズベキスタン出身のサウスポーを格の違いで圧倒し、大差の判定で下す。「ルイス・ネリ戦とカルデナス戦でダウンを喫したが、なぜあのダウンが起きたのかは自分でははっきり理解している」と井上は『ザ・リング』の杉浦大輔に語る。「1年の間に2度ダウンしたことで、反射神経が衰えたとか、キャリアが下降線に入ったと言う人もいたが、年齢や反応の鈍化が原因ではない。[アフマダリエフ戦での]パフォーマンスが、それが事実ではないことを明確に示したと思う。」
『ザ・リング』のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで3位に位置する4階級制覇王者・井上に課される期待は大きく、早期KOを狙うあまり、時に無謀な戦い方になることがあった。井上は、そうした攻撃性こそが、2024年5月の初回にネリにダウンを奪われ、7カ月前の2回にはカルデナスに倒された要因であったと確信している。
井上はすぐに立て直し、ネリを6回TKO、
カルデナスを8回TKOで下す。そうした一瞬の脆さを経験したことで、井上は『ザ・リング』122ポンド級2位の挑戦者であるアフマダリエフと対峙するにあたり、自身のアプローチを見直す。
「だから今の自分にとって最大の敵は、自分自身のキャリアだと感じている」と井上は語る。「あの2度のダウンを振り返ると、ある意味では自分のキャリアそのものが足かせになっていたと思う。キャリア初期であれば、あれほどパンチを急いだり、相手を仕留めにいく途中で不用意なパンチを放ったりはしなかったはずだ。そういう意味では、22歳や23歳の頃のほうが、実際には優れていた部分もあったと感じている。」
それでも井上は、アフマダリエフ戦で12ラウンドを通して有効に戦えることを示したと確信する。井上がフルラウンドを戦ったのは、2019年11月にノニト・ドネアに判定勝ちして以来であった。
「スタミナはまったく衰えていない」と井上は語る。「アフマダリエフ戦で見た通り、12ラウンド動き続けても問題はない。パンチへの反応も鈍っていない。だから課題は、その緊張感を維持することだ。同時に、精神的には今のほうが安定している。ボクシングだけでなく、人生経験を通じて、すべてが前向きにかみ合ってきていると感じている。」
Keith Idecは『ザ・リング』のシニア・ライター兼コラムニストで、Xでは@
idecboxingで連絡を取ることができる。