ニューヨーク――
ハムザ・シェラーズは、自身が成し遂げたことの大きさを理解していた。
控えめなイングランド出身のハムザ・シェラーズは、2024年2月22日にサウジアラビア・リヤドのANBアリーナで行われたWBCミドル級王者
カルロス・アダメスとの
疑惑のスプリット判定ドローによって無敗記録を保ったわずか4カ月半後、ビッグステージで“仮の存在”から“真の挑戦者”へと自らを変貌させた。
エドガー・ベルランガを粉砕したことで、シェラーズの英国におけるスター性が高まっただけでなく、ボクシング人気の根強いその市場での存在感を確立し、さらに、スーパーミドル級の4団体統一王者
カネロ・アルバレスの対戦候補としての正当性も手に入れた。
26歳のシェラーズは、試合後に突如として現実味を帯びてきたカネロ・アルバレス戦の可能性について語る際も、スロースタートから冷静に対応し、おしゃべりなベルランガを打ち砕いたときと同じように、実に落ち着いていた。
「そうだね、自分としては本当に大きな、大きなパフォーマンスだったよ」とシェラーズは試合後の記者会見で語った。「地に足をつけてるよ。浮かれすぎたくないんだ。ほら、ボクシングっていうのは良い日もあれば悪い日もある。オレにも悪い日はあったし、今日は良い日だった。だからいつも神様に感謝してる。正直言って、めちゃくちゃ興奮してるよ、本当にハイになってる。」
シェラーズ(22勝0敗1分、18KO)は土曜の夜、まるで電動ノコギリのような勢いで攻め立て、4回終盤にブルックリン出身のベルランガを2度ダウンさせた。
ベルランガ(23勝2敗、18KO)は、4回残り42秒でシェラーズの左フックを受けて最初のダウンを喫して以降、完全には立て直せなかった。さらに、同ラウンド残り16秒には、シェラーズの左→右のコンビネーションを浴びて再びキャンバスに沈んだ。
4回はゴングに救われたベルランガだったが、5回が始まると同時にシェラーズはダメージの残るベルランガに猛攻を仕掛けた。イルフォード出身のシェラーズは右→左のコンビネーションでベルランガをぐらつかせ、それを見たレフェリーのデヴィッド・フィールズが両者の間に割って入り、5回開始わずか17秒で12回戦のメインイベントをストップした。
28歳のベルランガが土曜の夜以前に喫した唯一の敗戦は、昨年9月14日、ラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われたカネロ・アルバレス(63勝2敗2分、39KO)との12回戦ユナニマス・デシジョン(3-0)によるものだった。カネロは3回序盤に左フックでベルランガをダウンさせたが、ベルランガは立て直し、試合を最後まで戦い抜いた。
身長6フィート4インチ(約193センチ)のシェラーズは、このキャリアを大きく変える勝利の要因として、カルロス・アダメス戦まで戦っていたミドル級(160ポンド)から、ベルランガ戦でスーパーミドル級のリミットである168ポンドに階級を上げたこと、そして
新たに元WBC世界ミドル級王者アンディ・リーをトレーナーに迎えたことを挙げている。
シェラーズは新たな階級でよりフレッシュかつパワフルに感じており、アンディ・リーとの初のトレーニングキャンプで得たものを十分に生かし、クイーンズのルイ・アームストロング・スタジアムからDAZNのPPVで配信された興行「Ring III」のメインイベントでベルランガを打ちのめした。
「アンディ・リーとのキャンプはたった8~9週間しかなかったから、複雑なことは一切やらなかった」とシェラーズは語る。「とにかくパンチの数を増やすこと、的確なパンチを打つこと、そして試合で求められていることをやることだけに集中した。最初の2ラウンドくらいは取られてたし、自分でもそれは分かってた。」
「でも、ちゃんと対応してた。これは前回のアダメス戦で学んだ大きな経験だったんだ。だからこそ、これが“偉大なファイター”――いや、“偉大”とまではいかなくても“優れたファイター”ってものを作る要素だと思う。試合ごとにしっかり適応できるかどうか。うん、今日はオレにとっていい一日だったよ。」
Keith Idecは『ザ・リング・マガジン』のシニアライター兼コラムニスト。X(旧Twitter)では @idecboxing で連絡可能。