元WBCストロー級王者の
重岡優大(28歳)が、現役引退を発表した。
近年、日本ボクシング界には辛い出来事が続いている。2024年8月2日、東京・後楽園ホールで同じ興行に出場していた
小垂繁寿と
浦川大将が、それぞれ試合で負った怪我により命を落とした。
優大はインスタグラムで、弟の近況と自身の将来について投稿した。
「先日、弟の銀次朗は(地元)熊本の病院に転院しました。そして今日、私、優大はボクシングを引退する決断をしました。国立病院大阪医療センターの医師や看護師の皆さんのおかげで、銀は今も生きています。本当に感謝しています。銀が元気になったら、必ず一緒にお礼に行きます。
銀は今、熊本の病院で1日3時間、3種類のリハビリに取り組んでいます。“諦めるな、頑張れ”と毎日声をかけ、心の炎を消さないよう支えています」
兄弟の歩みは、幼い頃に始まった。
「私たちは6歳のときに一緒に格闘技を始め、これまで数え切れないほどの壁を一緒に乗り越えてきました。今も毎日、弟を心配してくれる方々からメッセージをいただいています」
二人の絆は深い。実際、アマチュア時代には熊本県大会の決勝で兄弟対決が予定されていたが、両親とコーチの話し合いで試合は行わないことが決まった。試合開始のゴングが鳴ると同時に銀次朗のセコンドがタオルを投入した。
銀次朗は2018年9月にプロデビューし、世界王者を目指した。兄・優大も2019年10月にプロ入りした。
弟は2022年3月に日本王座を獲得し、1度防衛後に返上。兄にチャンスを譲り、優大は同年11月に日本王座を獲得した。
その後、銀次朗は兄弟の中で初めて世界王者になる機会を得た。ダニエル・バラダレス戦では優勢に進めたが、偶然のバッティングで3回無効試合に終わった。
2023年4月には兄弟そろって暫定世界タイトル戦に臨んだ。銀次朗はレネ・マーク・クアルトを9回KOで下し、IBF暫定王座を獲得。優大はウィルフレド・メンデスを7回TKOで破り、WBC暫定王座を手にした。
二人は正規王座を求め、2023年10月にチャンスを掴んだ。銀次朗はバラダレスを5回TKOで下しIBF王座を獲得。優大はパンヤ・プラダブスリに12回判定勝ちし、WBC王者となった。
同一興行で兄弟そろって世界王者になるのは史上初の快挙。この偉業により、重岡兄弟は2023年10月の『The Ring』誌「月間最優秀ファイター」にそろって選出された。
しかし優大は次戦でメルビン・ジェルサレムに12回判定で敗れ王座陥落。銀次朗も1度防衛後の2024年7月、ペドロ・タドゥランに9回TKOで敗れた。
二人はともに再戦に臨んだが、再び敗北。銀次朗はタドゥランとの2戦目で選手生命を脅かす大怪我を負った。
『The Ring』の取材によると、銀次朗は機械を使わずに自発呼吸ができ、目も開いているものの、依然として体を動かすことも話すこともできないという。
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