ダニエル・デュボア自身は気づいていないかもしれないが、心理戦の覇者オレクサンドル・ウシクとのライバル関係において、実際に心理戦を仕掛けているのはデュボアの方である。
7月19日にウェンブリー・スタジアムで予定されている4団体統一世界ヘビー級タイトルマッチの再戦に向け、デュボア(22勝2敗、21KO)はボクシング界の不滅の存在となる瀬戸際に立っている。彼にとって、18か月前にポーランドで行われた初戦で9ラウンドTKO負けを喫した直後には、到底届かない夢のように思えた舞台である。
しかし、その後にジャレル・ミラー、フィリップ・フルゴビッチ、アンソニー・ジョシュアを次々とKOで下したことで、
デュボアはヘビー級戦線の頂点へと舞い戻り、IBF王座という実績を手にしている。
ウシク(23勝0敗、14KO)は、これまでのキャリアを通して常に「心理操作の達人」として知られてきた。彼の精神を揺さぶることはほぼ不可能であり、にらみ合いの場では最後まで相手の目を見つめ続けることで知られている。
今回の再戦では、2023年8月の初戦において「ローブロー疑惑」が勝負の流れを左右したとの認識を武器に、デュボアが自ら心理戦を主導しようとしているように見える。
「まあ、観客の前でうまく演じて、それで逃げ切ったのかもしれない」と、デュボアはトレーナーのドン・チャールズによる「ウシクは反則常習者だ」との発言に同調するように語った。「ポーランドでやって、ジャッジも全部あいつ側だったし……」
「でも、それはそれとして、俺のチームには奴を苛立たせるように騒ぎ立ててほしい。言うべきことは全部言ってくれって頼んでる。俺はそのために金払ってるんだから」と、部屋にいた全員が笑う中で彼は挑発的に続けた。
昨年12月にウシクがタイソン・フューリーを判定で下して以来、デュボアは「絶対に揺るがない男」を揺さぶることを己の使命としてきた。
その夜、リヤドでスコアカードが読み上げられた直後、デュボアはリングに飛び入りし、ウシクの試合後インタビューを妨害。38歳のウシクが息子について感動的なスピーチを終えたばかりのタイミングで、即時の再戦を要求した。
さらに月曜日、ウェンブリー・スタジアムのピッチサイドで7月の試合の発表イベントに登場した際には、
フェイスオフの途中でウシクに手をかけて押し、ウシクのフェイントに反応してしまった。
「実際にあいつを揺さぶれたとは思わなかったけどね」とデュボアは振り返る。
「ウクライナ人ってのは、ああいう心理戦とか、精神操作みたいなことばっかやってるだろ。でも俺はただ、自分の身体、精神、魂を万全に整えれば、それで十分なんだ。
心理戦ってやつだよ。あいつはそういうのが得意なんだ。
あいつはつまらない男だと思う。家に閉じこもって、そういう精神的なことばかりやってる。でも結局、リングの上で叩きのめすしかない。すべては心理戦だ。
やつらが本当の痛みと熱さを感じた時にこそ、その壁を破ることができる。神の力があれば、何だってできる。
あいつは俺が与える痛みと熱さに耐えられないと思う。俺はただ、前に出て勝つだけだ。それが作戦のすべて、勝つこと。」
とはいえ、デュボアは極めて冷静に、自身がこれまで23戦で21人の相手が果たせなかった仕事を完遂することに集中している。
火曜日の記者会見では、ウシク陣営が「デュボアはもはや少年ではなく、ポーランドでの敗北以来、2度も困難を乗り越えた男である」と言及した。
また、デュボアのプロモーターであるフランク・ウォーレンも、敗北後の
彼に必要だったのは精神的な強さだったと語っている。
だが、今やすべてが、27歳の彼にとって完璧なタイミングで噛み合っているように見える。
「自信に満ちている。ただ勝つことに気持ちを集中させているんだ」とデュボアは力強く言い切る。
「日々の鍛錬、信念、そして過去から学ぶ姿勢。ただライオンのように大胆に。父がそばで支えてくれたから、乗り越えられた。しっかりした基盤がある。
あいつらがどんな手を使ってきても、今度は俺のホームだ。俺は未来の男だ。」