マイアミ――リングの中で何が起き得るかを考えれば、ボクシングほど闇の深いスポーツはない。
タイソン・フューリーは、アンソニー・ジョシュアが「
もし殺せるなら殺す」と発言したことを受けて反応する。ジョシュアは金曜にNetflixで生中継される
ジェイク・ポール戦を前に、リング上での本能についてその言葉を口にしていた。
フューリーはSNSに投稿された動画の中で、次のように語る。
「
アンソニー・ジョシュアがボクシングのリングで誰かを殺すとか何とか言っている動画を送られてきた。そんなことを言うには、彼はもう年を取り過ぎている。37歳でキャリアの終盤、ユーチューバー、ディズニー・チャンネルの男と戦っている立場だ。トミーが倒した相手なのに、売るために“殺す”だの何だの言い出している。勘弁してくれ。
間違った相手に吠えているんだ、このバカ。ひとつ教えてやる。もし俺がお前に出くわしたら、一撃で叩きのめす。俺はユーチューバーでも、お前の半分のサイズの男でもない。俺が“本物”だ。お前は品のない負け犬。地元の若造に15カ月前にKOされたばかりだろ。ジェイク・ポールがお前を失神させるのが待ちきれない。立ち上がってみろ。」
これに対し、ジョシュアは水曜日にマイアミビーチのザ・フィルモア内ジャッキー・グリーソン・シアターで行われた最終記者会見で、自身の発言をあらためて正当化し、これはファイトビジネスの性質だと語る。
「それが俺の仕事だ」とジョシュアは言う。
「俺たちは戦う。殺すことを許可されている。多くの人には理解できないだろうが、これが俺の仕事だ。自分のやっていることを楽しんでいる。何が起きても起きる。ただ、最後に自分の手が挙がっていれば、それが一番大事だ。敬意を込めてね。」
「それがファイターとして持たなければならないメンタリティだ。リングの中は危険な場所で、何が起きてもおかしくない。相手が無事にリングを降りることを願うが、もしそうならなかったとしても、自分はただ仕事をしただけだと分かった上で夜ベッドに入らなければならない。個人的な感情は一切ない。」
この件に関して、
ポールはフューリーよりもジョシュアの発言に近い立場を示す。
「やろうぜ」とポールは語る。
「ファンのためにショーをやろう。戦争だ。人類の歴史を見れば、男たちはもっと狂ったことをしてきた。これは現代の剣闘士スポーツだ。俺たちがここにいる理由は、互いに叩き合うことだ。俺は準備ができている。彼の一番強いパンチを受けたい。すべてが終わった時に言い訳が一切残らないようにしたい。さあ、殺し合おう。」
ジョシュアとポールは、公認の8回戦ヘビー級マッチで対戦し、ヘビー級として通常の10オンスグローブを着用する。リングサイズは22フィート四方で、標準的な20フィート四方よりも大きい。
ジョシュア(28勝4敗、25KO)は、この試合で体重245ポンド以下に抑えなければならない。この数値を下回ったのは、2022年に2階級制覇・ヘビー級統一王者オレクサンドル・ウシクとの再戦時が最後である。
36歳のジョシュアは、2024年9月21日にウェンブリー・スタジアムで行われた元IBFヘビー級王者ダニエル・デュボア(22勝3敗、21KO)戦で、5回KO負けを喫し4度倒されて以来の復帰戦となる。また、2012年ロンドン五輪金メダリストにとって、これが米国での2戦目となる。唯一の米国開催試合では、2019年6月にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでアンディ・ルイスに7回KO負けを喫し、ボクシング史に残る大番狂わせを経験している。
ジョシュアはその6カ月後、サウジアラビアで行われた再戦でルイスをユナニマス・デシジョンで下し、2度目のヘビー級統一王者に返り咲く。
身長198センチのジョシュアと対戦することによる競技レベルの跳ね上がりは、言葉では言い表せない。ポール(12勝1敗、7KO)は2020年にマイアミでデビューして以降、ボクサーとしてもプロモーターとしても急成長を遂げ、モースト・バリュー・プロモーションズを率いる存在となる。28歳のポールは、
7月28日に元ミドル級王者フリオ・セサール・チャベス・ジュニアを相手に、一方的な内容でのユナニマス・デシジョン勝利からこの試合に臨む。今回のジョシュアとフューリーの発言は、英国が誇るトップヘビー級同士の間で続いてきた舌戦の最新章である。その舌戦は、予定されている試合に勝利することを条件に、2026年後半にリヤド・シーズンが両者の対戦を計画していることで、いずれリング上に持ち込まれる可能性もある。
ただしその前に、ジョシュアはまずポール戦を確実に乗り切り、スポーツ史に残る大番狂わせの被害者とならないよう、目の前の仕事を片付けなければならない。