【シェフィールド(英国)】── デイブ・アレンの待望の復帰戦に先立ち、ユティリタ・アリーナには約9,000枚のチケットが販売され、観客で埋め尽くされた。33歳のアレンがアルスランベク・マフムドフとヘビー級で激突するメインイベントに向け、会場の熱気は高まっていた。
両者にとってこの試合は絶対に落とせない一戦であり、世界レベルへの返り咲き、そして勝者に待つ高額なチャンスを考えれば、一歩のミスも許されない戦いであった。
この8試合構成の大会は
DAZNで世界同時配信され、マッチルームによるダブルヘッダーの第1弾として開催された。エディ・ハーンは米国に滞在しており、元統一ウェルター級王者ジャロン・エニスのスーパーウェルター級デビュー戦(対ウイスマ・リマ戦)を見届ける予定であった。
以下はアンダーカードの詳細結果である。
ファワズがボスタンを破り、イングリッシュ王座を奪取
この日のセミメインでは、
ビラル・ファワズが再び番狂わせ役として躍動し、ジュニアミドル級イングリッシュ王座を懸けた10ラウンド戦で
ジュナイド・ボスタンを下した。激しい接戦の末、マジョリティ・ディシジョンで勝利を収めた。
採点は96–95、96–94で37歳のファワズに軍配が上がり、もう1枚のスコアカードは95–95のドロー。これにより、ボスタン(10勝1敗1分、8KO)はキャリア初の敗北を喫した。
序盤、ボスタンは巧みなボディ攻撃を中心にポイントを稼いだが、マイケル・アレクサンダー主審は両者に対し、反則やラフな攻防をたびたび注意。
第2ラウンドでも再び警告を受けた後、両者は駆け引きが再燃し、互いにカウンターフックを解禁した。ファワズはボスタンを再び絡め取る蜘蛛の巣を巧みに張り巡らせ、短い近距離の打ち合いの中で、年長のファワズが鋭いカウンターで応じつつ空振りを多く誘った。やがて、避けがたい偶発的なバッティングにより、両者とも右目上部をカットした。
ハーンは、試合の展開がボスタンの望みよりも速く崩れていったと述べ、まだ3ラウンドも終わらないうちに、ファワズが見えない角度からの強烈な右をクリーンヒットさせたと語った。22歳のボスタンは何とか踏ん張って倒れずに立っていたが、足は明らかに言うことをきかず、ファワズの連打が続いた。その流れは緊張感に満ちた第4ラウンドへと持ち越され、双方がクリーンヒットを奪い合った。
まずはファワズ、続いてさらに鋭さを増したボスタンが応酬し、両者それぞれの理由で熱くなっていった。ファワズはディフェンスの形を崩し、ボスタンがロープ際で揺さぶって主導権を握ると、ボスタンは渾身の力でフックを二発振り抜いたが大きく空を切り、ファワズは訝しげな表情で彼を見つめた。
ファワズが先に仕掛け、ボスタンがさらに激しく応戦。ファワズはディフェンスを崩し、ロープ際で追い詰められる場面もあったが、ボスタンのフックが空を切ると、ファワズは挑発的な表情を見せた。ラウンド終了後、両者はにらみ合い、観客を煽るボスタンに対し、ファワズも気迫を緩めることなく第5ラウンドへ突入した。
ボスタンはインサイドで良い攻撃を見せたが、ファワズも複数のコンビネーションで反撃。互いに打ち合い、観客を沸かせた。
ボスタンが左を放てば、ファワズは右で応戦し、「それが全部か?」とでも言いたげにグローブを振って見せた。ロザーハム出身の若手ボスタンは攻撃を重ね、強烈な左とフックの連打で観客を再び盛り上げる。直後、ファワズのマウスピースが飛び、ボスタンはさらにパワーパンチを打ち込み、試合は白熱した。
ファワズは試合後半に入っても安定したペースを維持していた。ボスタンはバランスを立て直し、パンチの選択も改善されていたが、油断する余裕はなかった。ビラルの華やかなスタイルはそれを許さず、第7ラウンドの冒頭では強烈なアッパーカットと近距離でのボディ攻撃を織り交ぜて攻勢に出た。
残り2ラウンドの時点でも勝敗は拮抗しており、ファワズはボスタンの精神面を揺さぶろうと全力を尽くした。スミス・トレーナーもその様子を見て「挑発しているな」と笑いながら指摘したという。第9ラウンド序盤にはファワズのスーパーマンパンチが炸裂し、互いに見せ場を作る一進一退の展開となった。
ボスタンはフックを的確に当てていったが、ファワズも複数のコンビネーションで応戦し、できる限りスリップして被弾を避けた。近距離での攻防では過酷な状況が続いたが、若いボスタンはインサイドでうまく立ち回り、交換の最後には優勢に抜け出した。
最終ラウンド開始直後、ファワズは怒涛の連打を浴びせ、ややラフな攻防で主審から注意を受けたものの、それを無視してパンチを打ち合い続けた。
ボスタンは攻撃の形を崩し、前のめりで大振りのパンチを放ちながらも、相手の反撃を恐れることなく残り30秒の攻防へ突入。ファワズはアンダードッグとして堂々と、スーパーマンパンチやジャブを打ち込み続け、これまで20ラウンドにわたり見せてきた粘り強さを発揮した。試合終了のゴング後、ファワズが握手を求めたものの、ボスタンは応じず、両者は静かに採点結果の発表を待った。
パドリー、ベロッティ戦で内容以上の大差判定勝

元世界タイトル挑戦者ジョシュ・パドリー(17勝1敗、5KO)は、
リース・ベロッティ(20勝7敗、15KO)を僅差で破り、WBAインターナショナル・ジュニアライト級王座を手にした。初の130ポンド戦での戴冠であったが、判定は多くの観客が感じた試合内容とはかけ離れたものとなった。
スティーブ・グレイの99–92というスコアカードは、あまりにも極端だった。審判歴20年を誇る名レフェリーである彼は、まるで“パドリー色の眼鏡”をかけて試合を見ていたとしか思えない。とはいえ、試合全体を通して積極的に前に出て圧力をかけ続けたワトフォード出身のベロッティに、1ラウンドしか与えない理由を正当化するのは不可能である。
試合は序盤から荒れ模様で、両者が接近戦で主導権を奪おうと攻防を繰り広げた。観客の声援は明らかにパドリーに傾いていたが、ベロッティは動じることなく相手のペースを乱し、最初の3ラウンド(9分間)を通して見事な立ち回りを見せていた。
第3ラウンド序盤からは抱き合うような展開が増え、ベロッティはより印象的な連打をつなげて主導権を握る。第4ラウンドではさらに圧力を強め、パドリーは徐々に身動きが取りづらくなり、窮屈な展開から何とかパンチを出して活路を開こうとした。
第5ラウンド開始時には、観客から「もっと攻めろ!」という声が飛び、人気者のパドリーにさらなる奮起が求められたが、ベロッティはインサイドでの攻防を支配し続け、ボディブローと左ストレートを的確に打ち込んだ。
その流れは第6、第7ラウンドにも続き、ベロッティはパドリーを横に動かしながら追い詰めた。パドリーの好機は一瞬で、時折スイベル(体の回転)からコンビネーションを放つものの、攻撃を継続できず、同じパターンを繰り返すばかりで、これはむしろベロッティの有利に働いた。
ベロッティの有効打が決まるたびに、彼を応援する声はどんどん大きくなり、パドリーへのチャントは間隔が長くなっていった。これは彼が試合で後手に回っていることを示す不吉な兆候だった。
残り2ラウンドに突入すると、パドリーは強引に前へ出ようとしたが、その勢いもベロッティを怯ませるほどではなく、手数も十分ではなかった。ワトフォードの男ベロッティはラウンドの終盤でやや優勢に見え、審判団の印象を変えた可能性もあったが、その直後にタイムキーパーの混乱により一時中断。試合が10ラウンド制か12ラウンド制かで混乱が生じ、両者は残る力を振り絞った。
パドリーはクリーンヒットの右を当てて観客を沸かせると、ベロッティも果敢に前進して応戦。自陣コーナー近くで強烈なパンチを振り抜き、さらにコンビネーションで反撃を見せた。
序盤の互角な展開を経て、時間が進むごとに激しさを増した緊迫した戦いは、最後にふさわしい幕切れを迎えた。両者とも勝利を確信できないまま結果を待ったが、スコアカードは見るに堪えない内容だった。
フィラデルフィアのエニス控室から試合を見守っていたエディ・ハーンは、採点を聞いて驚愕した。
「99–92?冗談だろう?リースに1ラウンドしか与えないなんてありえない。どちらが勝ってもおかしくなかったが、ベロッティにとって最もつらいのは、もしスプリット判定や96–94の僅差なら受け入れられたはずだが、こんなスコアを見せられたら『何のために戦っているんだ?』と思ってしまう。10ラウンド必死に戦って、この結果じゃ馬鹿げてる」と語った。
ウッディン、5ラウンドでロバーツを撃破

ウォルソール出身の有望株
ハムザ・ウッディン(6勝0敗、3KO)は、
木曜の記者会見で宣言した通りの内容を見事に実行し、第5ラウンドで3度のダウンを奪ってポール・ロバーツをストップ。イングリッシュおよびWBAインターナショナル・フライ級の2冠を手にした。
プロ入りから18か月、22歳のウッディンは試合開始直後から主導権を完全に握り、2度のサザン・エリア・ジュニアバンタム級王者であるポール・ロバーツ(7勝7敗2分、2KO)を圧倒。途中経過ではなく、必然的な結末として試合を終わらせた。名門アマチュア出身のウッディンにとって、この試合は「淡々とこなす」ものではなく、自らの攻撃的本能を引き出すために必要な一戦だったといえる。
試合後、ウッディンは情熱的なスピーチを披露した。
「自分への信頼は常にあった。自分がどれほど強くなれるか分かっているし、俺とチームはどこに向かうかも分かっている。ひとつずつタイトルを奪っていくつもりだ。すべての相手、すべてのタイトルを見据えている。相手を距離の内側で倒す、それが目的だ。個人的な恨みなんかじゃない。これはビジネスだ。英国、そして世界のボクシング界に伝えたい──次のスーパースターはハムザ・ウッディンだ!」
試合の公式タイムは第5ラウンド2分14秒。ロバーツ(29歳)の陣営は、愛弟子が崩されて抵抗を見せなくなったのを見て、無念のタオル投入を決断した。
ウッディンは序盤からリズムに乗り、滑るように距離を出入りしながらロバーツの攻撃をかわし、相手の顔とボディは次第に真っ赤に腫れ上がっていった。ジャブを連打しながら間合いを保ち、ショートレンジでは巧みに身を翻す。第3ラウンドでは、飛び込みざまの左フックをクリーンヒットさせ、完全に試合を支配した。
そして2ラウンド後、ウッディンのボディ攻撃がついに実を結んだ。わずか1分間のうちに左ストレートを中心に3度のダウンを奪取。ロバーツは立ち上がったものの、試合の終わりはすでに見えていた。
アンダーカード全結果
ビラル・ファワズ MD10(96–95、95–95、96–94)ジュナイド・ボスタン ※イングリッシュ・ジュニアミドル級王座獲得
ジョシュ・パドリー UD10(99–92、97–93、97–93)リース・ベロッティ ※WBAインターナショナル・ジュニアライト級王座獲得
ハムザ・ウッディン TKO5(2:17)ポール・ロバーツ ※イングリッシュ・フライ級王座獲得
ジュニアライト級:イブラヒーム・スライマン PTS8(80–72)ジェームズ・チェレジ
ライトヘビー級:コナー・タズベリー TKO4(0:58)カリド・グライディア
ジュニアウェルター級:ジョー・ハワース PTS6(60–53)カール・サンプソン
ウェルター級:ジョー・ヘイデン PTS6(60–54)アンジェロ・ドラゴーネ