土曜の夜、アーロン・マッケンナが世界の舞台でその存在を強烈にアピールした。ロンドンのトッテナム・ホットスパースタジアムで6万人以上の観衆を前に、
リアム・スミスを圧倒し、堂々の判定勝利を収めた。
そのわずか24時間後、マッケンナはすでにアイルランドのモナハンに帰宅し、テレビの前に腰を下ろしていた。
25歳のミドル級ファイターであるマッケンナが急いで帰宅したのは、前夜の自分の試合を見返すためではなかった。彼にとっての最優先事項は、愛するリヴァプールFCがトッテナムに5-1の快勝を収め、プレミアリーグ優勝を決める瞬間を見届けることだった。
「これ以上ない最高の週末だったよ」とマッケンナは「ザ・リング・マガジン」に語った。
「少し時間を置いているところなんだ。まだ自分の試合は見返していないけど、そのうち見るつもりさ。改善点を探すのが好きだからね。確かに内容は圧勝だったけど、それでも必ず学べること、拾えることがある。それが俺の考え方なんだ。」
アーロン・マッケンナ(20勝無敗10KO)は、以前から将来の王者候補として注目されてきたが、これまでのところ、その真の実力を発揮する機会には恵まれてこなかった。
対戦予定だった相手の多くが試合を辞退したり、そもそもオファーを断ってきた。理由は「知名度が低いから」とされたこともあれば、単純に「相手にするにはあまりに厄介な相手だ」と気づいたからだという声もある。
元WBO世界スーパーウェルター級王者のスミスを相手に見せたマッケンナのパフォーマンスを見れば、今後彼の存在を無視するのは難しくなるだろう。
マッケンナはまだ映像を細かく見返す時間は取れていないものの、あの忘れがたい夜を振り返ると、ある一つの光景が強く脳裏に焼き付いているという。
「一番印象に残ってるのは、たぶん12ラウンドのボディショットだね」とマッケンナは振り返る。「間違いなくあの試合で一番気持ちよかった瞬間だった。12ラウンドを通して、自分がうまくボクシングできていることは分かっていたし、完全に試合を支配していた。でもあのボディショットは、まるで何の前触れもなく出たんだ。ただ投げたら、それが完璧に決まって、相手が倒れた。」
「あのボディショットは、自分のパフォーマンスを締めくくる完璧な一撃だった。ああいう形で試合を終えられたのは、本当に気持ちよかったよ。」
「自分がどれだけ強いか、何ができるかは分かっていたけど、それをようやく世界に見せるチャンスを得られたことが最高だった。」
試合前、多くの人が予想していたのは、経験豊富なスミスと、カリフォルニアのジムで何年も努力を重ねてきた若くハングリーな挑戦者との、激しく肉体をぶつけ合う接近戦だった。
マッケンナもその流れに応じた。試合週を通して静かで鋭さを感じさせる雰囲気をまといながら振る舞い、スミスを何度も緊張感のあるフェイスオフに引き込んだ。リヴァプール出身のスミスは試合週になると気合が入るタイプで、マッケンナの視線に応じるのに多くの言葉は必要なかった。
ゴングが鳴ると、マッケンナはすぐにリング中央でスミスと打ち合うのではなく、距離と時間をしっかり確保しながら試合の流れを見極める冷静さと成熟した戦いぶりを見せた。
マッケンナ自身も本来はアグレッシブなファイターだが、この試合ではインファイトの場面も多く見せつつ、スミスのプレッシャーを逆手に取り、自身の過小評価されてきたテクニカルな側面を存分に披露する機会となった。
巧みにボクシングとフットワークを使いこなし、無難に試合をまとめるのではなく、あの印象的なボディショットでブレイクアウトとも言えるパフォーマンスに強烈な一撃を刻んだ。
「それが最初からのプランだったんだ」と彼は語った。
「何年も前から、俺はいろんなスタイルで戦えるって言ってきた。でもそれを本気で信じてくれていたのは、本当に近くにいる人たちとか、デビュー当時からずっと俺を追いかけてくれている人たちだけだった。どれだけ長く言い続けてきたか分からないけど、俺は打ち合いもできるし、ボクシングもできる。サウスポーにもスイッチできるし、何でもできるって。」
「今回の試合で、それを証明できたと思う。インサイドでもボクシングできるし、アウトボクシングでも上回れた。実際、試合中はかなりの時間サウスポーでも戦ったけど、それでも全く違和感はなかった。」
「俺たちがそう言っているとき、それは本気なんだってことを、みんなには理解してほしい。裏付けがあるんだ。なぜなら俺たちは、努力を積み重ねてきたし、トレーニングも犠牲も、すべて本気でやってきたから。」
「すべてのプレッシャーがのしかかるああいう特別な夜に、ついにやり遂げられたことが本当に大きい。試合前はボクシング関係者の誰一人として俺にチャンスがあるとは思っていなかったし、試合週を通してずっと“スミスの経験値が違いすぎる”って、みんな俺の負けを予想してた。そんな連中を全員見返せたっていうのは、最高の気分だったよ。」
近年のボクシングは、リングの中で過ごす1時間だけでは語れない、はるかに多くの要素を含んでいる。
すべてのボクサーが、できる限り大きな舞台で戦いたいと願っているが、その一方で、一週間にわたってメディアの注目を浴び続けることに抵抗を感じる選手も少なくない。
選手たちは最高のコンディションに仕上げ、対戦相手を模したスパーリングパートナーを揃えることはできる。しかし、大舞台での試合週にかかるプレッシャーや注目、そして何千人もの観衆が見守る野外スタジアムの空気の中で自分がどう振る舞えるかを、事前に知ることは不可能だ。
マッケンナは、そのすべてを冷静に受け止めていた。
「正直言って、最高の気分だったよ」と彼は語った。「インタビューも山ほどあったし、試合週は本当に、ものすごく忙しかった。今まで経験してきたどの試合週ともまったく違う雰囲気だったけど、俺はまったく動じなかったよ。毎日何かしらのイベントがあって、グランドアライバル、メディアデー、それに30件近くのインタビューをこなしたけど、全然平気だった。そしてついに迎えた試合当日――あの大観衆の前でスタジアムに歩いて入場した瞬間は、まさに特別だった。」
「すべてをしっかりと受け止めながらも、集中力を切らすことなく、まるで自分のホームのように感じていたよ。本当に素晴らしいチャンスだったけど、ああいう場の空気を全身で味わうこともすごく大事なんだ。あれはお金じゃ買えない経験だし、実際にやってみないと誰にも味わえない感覚なんだよ。」
「俺はああいう場面でも、ショックを受けて固まるようなタイプじゃないんだ。そうなる人もいるけど、みんな違うからね。むしろ俺は、プレッシャーの中の方が力を発揮できるタイプかもしれない。でも、中にはそれを受け止めきれない選手もいる。それが現実だし、正直言って、周りの人間はみんな俺もそうなると思ってたんだ。」
「この25歳の若造に、ああいう大舞台で、本当に大事な場面で、何万人もの観衆の前でやれるだけの力があるのか?経験豊富な選手たちと比べてどうなんだ?――そう思われてたけど、俺は間違いなく、それができるってことを証明したよ。」
試合前、マッケンナは
「ザ・リング・マガジン」に対し、今回リアム・スミスとの対戦を選んだ決断の背景について語った。本来であれば、WBO・IBF統一世界ミドル級王者ジャニベック・アリムハヌリ(17勝無敗12KO)との対戦のためにカザフスタンへ向かう可能性もあったが、それを選ばなかった理由があった。
今後しばらくは世界タイトル戦線で存在感を発揮し続けられるという自信を持つマッケンナは、アリムハヌリの凱旋試合の“引き立て役”としてアスタナに遠征するよりも、世界レベルの実力者として知られるスミスを相手に自身の正当性を証明することのほうが、将来的に自分のキャリアにとって大きな意味を持つと判断した。
これ以上ないほど理想的な結果となった。未知数で知名度も限られた挑戦者として、今後の世界タイトル戦交渉においてあらゆる要求をのまなければならない立場になるのではなく、今やマッケンナの名前は以前とは比べものにならないほど重みを持つようになった。
「試合前に君に話したことは、すべて現実になったよ。この試合は、多くの人が注目している中で、あの大舞台で行われたからこそ、挑む価値がある試合だったんだ」と彼は語った。
「満員のスタジアムで試合ができるチャンスなんて、そうそうあるものじゃない。でも今回の試合が、自分のキャリアにどれだけ大きな影響を与えたかを見てほしい。今や世界中の誰もが俺の名前を知っているし、それだけにジャニベックや他の世界王者たちとの対戦も、さらに大きな意味を持つものになったんだ。」
「試合週を通してずっと、“主役をかっさらいたい”って言ってたんだ。ただ勝つだけじゃなく、いい内容で勝ちたいって、いろんな人に話してた。そして何より大事だったのは、しっかりとしたインパクトを残して、世間から本物として認められることだったと思う。」
「調子がいい時は、その流れに乗って突き進まないとな。今は勢いがあるし、何が来ても準備はできてる。俺のことは分かってるだろ?いつもコンディションをしっかり維持してるし、世界タイトルに挑戦できるなら、ぜひチャンスが欲しい。もしそれが無理なら、次はクリス・ユーバンク・ジュニアだ。」
土曜夜の興行は、家族の絆と名を馳せた父親たちにまつわる数々のドラマに満ちていた。
クリス・ユーバンク・シニアは、リングに登場して息子と肩を並べ、劇的な場面を演出。一方、ナイジェル・ベンは
メインイベントに向けた準備期間を通して、息子コナーの傍らに常に寄り添っていた。
マッケンナの父でありトレーナーでもあるファーガルは、派手さはないが、息子がその実力を世界に示した姿に対して、誰にも負けないほどの誇りを感じていた。彼にとっては、それが長年信じてきた息子の姿そのものだった。
「いや、父さんは本当に大喜びだったよ」とマッケンナは語った。「俺も、兄のスティーブンも、父さんも、もう一人の兄のギャリーも、みんなこの結果を想定してた。こうなるって信じてたし、実際リングに上がったら、すべてが計画通りに進んでるって感覚だった。」