ウクライナの
スター、ヴァシリー・ロマチェンコは、昨年5月の
ジョージ・カンボソス・ジュニア戦でこれまでと変わらぬ精彩を放ち、ファンたちは「次は誰と戦うのか」と期待を膨らませた。
しかし、まさかその試合が彼のラストファイトになるとは誰も想像していなかった。
ロマチェンコがカンボソスを破り、再び世界タイトルを手にした後に
引退を決意した理由──それは、2023年5月のデビン・ヘイニー戦での論議を呼んだ敗北の後に訪れた“モチベーションの喪失”だった。
ロマチェンコ(18勝3敗12KO)本人をはじめ、多くの人々は「勝利に値する内容だった」と感じていたが、ジャッジの判定は異なった。ヘイニーに3-0の判定が与えられ、彼が4団体統一王座を防衛した。
その1年後、ロマチェンコはジョージ・カンボソスJr.を11回TKOで下し、IBF王座を獲得したが──心はもうそこになかった。ヘイニー(32勝0敗15KO、1無効試合)に敗れたことで、この未来の殿堂入りボクサーの情熱は完全にしぼんでしまったのだ。その喪失感はあまりにも大きく、引退を決断するのはむしろ自然な流れだった。
「難しい決断ではなかった。なぜなら、モチベーションを失ったからだ」とロマチェンコは『Fight News』のYouTubeチャンネルで語っている。
「モチベーションを失ったんだ。俺の目標は、4団体統一世界王者になることだった。ヘイニーに負けたとき、それが最後のチャンスだった。」
37歳となったロマチェンコには、その後も魅力的な選択肢がいくつもあった。たとえば、ジャーボンテ・デービスやシャクール・スティーブンソンは巨額のファイトマネーを提示し、彼をリングに呼び戻そうと試みた。
だが、彼の決意はすでに固まっていた。カンボソス戦こそが“引退試合”──スワンソング(白鳥の歌)だったのだ。そして、彼は次の人生の段階へと進む時が来たと感じていた。
それから約1年半が経った今、ロマチェンコは「もう過去のチャンスを語る意味はない」と言う。決断は下した。そして、もう振り返ることもない。
「それについて話すことに意味はない」とロマチェンコは言う。
「俺はもう一つベルトを取った。これでボクシングは終わりだ。」