有望な若手ファイターにとって、新たなプロの世界の興奮に飲み込まれてしまうのは、決して難しいことではない。
何年も同じアマチュアジムで地道に汗を流してきた彼らが、気づけばテレビで見ていたような人物たちに囲まれ、称賛の言葉を浴びる日々が始まるのだから。
2022年のコモンウェルスゲームズ銀メダリスト、
テイラー・ベヴァンは、昨年11月にプロデビューを果たして以来、冷静かつ着実に5連続ストップ勝ちを積み重ねている。
最新の試合で
ズデンコ・ブレを3ラウンドでストップした数日後、無敗のスーパーミドル級ボクサーであるベヴァンは、
「ザ・リング・マガジン」に対し、自身が浮かれた雰囲気に飲まれるつもりはないと語った。
「最近意識してやろうとしてるのは、歩みながらちゃんと振り返ること。キャリアの終わりになって、“あっという間だったな”って感じたくないからさ」と、ベヴァンはカフェでくつろぎながら語った。
「その時その時の勢いに飲まれるのって、すごく簡単なんだよね。今週みたいにオフの期間があっても、“今は調子いいな”って思って、すぐに次のキャンプに戻っていくだけになりがち。でも、振り返る時間ってすごく大事だと思う。そうすることでキャリアも前に進むし、すべてを当たり前だとは思わなくなるから」
「今この瞬間をしっかり受け止めて、感謝することが大切だと思ってるんだ」
これまでのところ、ベヴァン(5勝0敗, 5KO)は静かに自分の仕事をこなし、近年の成功したアマチュア出身ボクサーにありがちな誇張された評価とは無縁のまま、プロの舞台で歩みを進めている。
24歳のウェールズ出身ボクサーであるベヴァンは、将来の複数階級制覇王者といった早すぎる称賛を受けることもなく、記者会見での大げさなパフォーマンスや作られた因縁もない。
その必要がなかったのだ。ベヴァンのボクシングそのものが、雄弁にすべてを物語っている。
ベヴァンにとって“本物であること”は重要だ。いまの時代が、実力よりも注目を集める行動やSNSでの影響力に報いる傾向にあることを理解しつつも、彼はあくまで自分のボクシングで一番の存在感を示したいと考えている。
「結局はバランスなんだよね。俺は注目を集めたくてやってるタイプじゃない。でも一方で、プロボクシングは“見せ物”としてのビジネスでもあるからさ」と彼は語った。
「派手なキャラクターのやつらが脚光を浴びるのは確かだよね。ボクシングの実力があるわけじゃない、いわゆるYouTuberたちでさえ、キャラが立ってるってだけで注目を集めて大金を稼いでる。でも俺は、リングの中で名前を売っていけると思ってる」
「俺は、あまり派手じゃないボクサーのファンなんだ」
「
ドミトリー・ビボルの在り方が好きだな。すごくプロフェッショナルなんだ。それに、
オレクサンドル・ウシクみたいな存在もそうだよね。彼は確かに大きなキャラクターだけど、リングの中でそれを裏付ける実力があるからこそ成立してるんだ」
「結局、ボクシングが第一なんだよね」
ベヴァンが今のペースで成長を続ければ、注目を避けることは不可能になるだろう。
現在の英国ボクシング界は難しい時期を迎えている。競技を新たな高みへと導いたベテランたちがキャリアの終盤に差しかかる一方で、その後を担う若い世代は、まだその穴を埋める準備が整っていないのが現状だ。
ボクシングファンが好むのはノックアウトと興奮だ。もしベヴァンが今後もハイライト映像を増やしていけば、早い段階でステップアップの道が開けることが期待される。
だが、ベヴァンは称賛の言葉に浮かれたり、気を取られたりするタイプではない。
「先週の試合(ブレ戦)だって、正直満足してないんだ」と彼は語った。
「みんなはすごく褒めてくれるけど、俺自身はいつも“完璧”を求めてる。でも、その完璧っていうのは決して手に入らないんだ」
「時には、それがネガティブな態度に見えるかもしれないけど、俺はそういう性格なんだよ。完璧を目指して、できる限り近づく努力をしなきゃいけない。でも俺は、いつもどこか納得いかないままなんだ」
「好きなことを仕事にすれば、一生働くことはない」とよく言われる。完璧を追い求める日々の合間で、ベヴァンはプロボクサーとしての道のりそのものを楽しみ、自分が与えられた舞台に感謝することを忘れずにいる。
「本当に楽しいよ」と彼は語った。「アマチュアの時とは少し違って、年中ずっと試合に備えていなきゃいけない感じじゃないし、トレーニングにもより明確な構成ができるようになった。いまはちゃんとしたトレーニングキャンプがあるんだ」
「ここまで順調に来ているのは、本当に運が良かったと思ってる。マッチルームと契約できたおかげで、しっかりした体制が整ってるし、自分をプロモートしてくれるチームもいるんだ」
「自分が想像していた通りって言えるかもしれないけど、プロとしての生活は人それぞれ違うからね。小さな興行で試合をしているか、それとも俺みたいに運よく大きな舞台で戦えているかで大きく変わる。ここまでしてくれたマッチルームとチームには、本当に感謝してもしきれないよ」