サム・ノークスは、世界の舞台で自身の存在を知らしめるチャンスをじっと待ち続けてきた。
11月22日、無敗のハードパンチャーである英国・欧州ライト級王者のノークスは、評価の高いアメリカの若手
アブドラ・メイソン(19勝0敗、17KO)と空位のWBO世界ライト級(135ポンド)王座をかけて対戦するため、リヤドのリングに上がる。この試合で主役の座を奪い取ることを狙っている。
この注目度の高い一戦は、話題の興行『Ring IV』の中でも目玉カードのひとつとして位置づけられている。
同興行では、
デビッド・ベナビデスがWBC世界ライトヘビー級王座をアンソニー・ヤード相手に防衛戦を行い、ブライアン・ノーマン・ジュニアはWBO世界ウェルター級王座をかけてデヴィン・ヘイニーと対戦する。また、現在のRingおよびWBC世界スーパーフライ級王者ジェシー・ロドリゲスは、フェルナンド・マルティネスとの一戦が予定されている。
ノークスとメイソンは、ボクシング界のビッグネームたちと同じ興行に名を連ねることになるが、両者のスタイルを考えれば、勝者がサウジアラビアから新たなスターとして脚光を浴びる可能性は極めて高い。
ノークス(17勝0敗、15KO)は、大物たちと肩を並べることに気後れするようなタイプではないが、木曜日に行われた豪華メンバーが集結した記者会見の場は、ケント出身の陽気な27歳にとって、知名度とステータスの両面で確実にステップアップとなる瞬間だった。
「いやあ、ほんとに…信じられないような光景だよ」とノークスは、
『ザ・リング・マガジン』に語った。場所は、にぎわうタイムズスクエアのハードロック・カフェだった。
「いままさに記者会見の準備を始めるところだけど、当然ながらデヴィン・ヘイニーや他のスター選手たちも周りにいて、すごいことになってるよ。これは本当に大きな舞台だし、最高の自分を引き出してくれるはずだから、すごくワクワクしてるんだ。」
「この試合に関しては、これまでの試合よりもプレッシャーを感じてないよ。『これはビッグファイトだし、オレはアンダードッグ扱いされてる。だったら、自分の仕事をやるだけさ』っていう気持ちなんだ。」
ノークスは今年に入り、ハイレベルな舞台での経験を積んでいる。
1月には思いがけないチャンスが訪れた。WBC世界ライト級王者
シャクール・スティーブンソンがロンドン滞在中に急きょスパーリング相手を探しており、ノークスに声がかかったのだ。
スティーブンソンが『ザ・リング・マガジン』の第1回ガラ・アワード授賞式に出席していた一方で、ノークスはちょうど中華料理を食べ始めたところだった。そんなとき、トレーナーのアル・スミスから電話が入り、「明日の夜はジムにマウスピースを持って来い」と告げられた。
「たしかあのガラ・ディナーのときに、スカイ・ニコルソンがシャクールと話してて、“うちのジムにライト級の選手いるけど、スパーリングする?”って感じで声かけたんだと思うよ」とノークスは語る。
「オレは“ありがとな、スカイ。本当に感謝してるよ”って感じだったよ。『リング』のガラは金曜か土曜にあって、で、日曜になったらアルが“明日スパーリングな”って言ってきて、“ああ、分かった。で、誰とやるんだ?”って返したんだ。」
「シャクール・スティーブンソンだよ。」
ジムで何が起きたかは“ジムの中のこと”として伏せられているが、両者ともに短時間ながらも密度の濃いスパーリングから多くを得たことを明かしている。
先週、両者は再び顔を合わせることとなったが、それぞれがまったく異なる目的を持っていた。
ボクシング界の報道陣がビッグイベントのためにニューヨークに集結するこのタイミングで、ノークスがアトランティックを越えて渡米し、メイソンとの対戦を正式発表するのは理にかなっていた。
土曜の夜、ノークスはクイーンズのルイ・アームストロング・アリーナで行われた雰囲気満点の『Ring III』興行をリングサイドで観戦。シャクール・スティーブンソンが、攻撃的で無敗だったメキシコの強豪ウィリアム・セペダの猛攻を退け、見事なパフォーマンスを披露する姿を目の当たりにした。
ノークスは現ライト級トップの一人であるシャクール・スティーブンソンとわずか数ラウンドを共有したにすぎないが、ボクシング界の真のパウンド・フォー・パウンド・スーパースターと拳を交えた経験は、やがて自分の名前にも大きな価値が宿ると信じさせてくれた。
「よかったよ。いいラウンドだった。正直、月曜の夜にやるようなことじゃないけど、終わったあとはテンション上がってたね」とノークスは語る。
「もちろん、彼からもいろいろとポジティブな言葉をもらえたし、本当にいい経験だったよ。」
「テレビで彼らを見てると、会ったこともないから“うわ、ヤバいな”って思うんだよ。みんなめちゃくちゃ大きく見える。でも実際に会ってみると、だいたい自分と同じくらいのサイズなんだ。それで差がどれくらいか見えてくる。もちろん、あの男(シャクール)はとんでもない才能の持ち主だし、それは否定しないよ。でも、その差は思ってたほど大きくない。だから、“自分もこのレベルの連中と渡り合える”って実感できたのは大きいね。」