モーゼス・イタウマのDMを十分にさかのぼれば、
ディリアン・ホワイトにスパーリングの可否を尋ねるメッセージが見つかる。それは一度も読まれることはなかった。
ジャマイカ出身の強打者と拳を交える機会は、イタウマにとって“原点回帰”ともいえる瞬間となっただろう。なぜなら、ホワイトが
アンソニー・ジョシュアと戦った試合こそ、10歳のイタウマがボクシングに興味を持つきっかけだったからだ。
「面白い話だけど」とイタウマは言う。「あの試合、ジョシュア対ホワイトは、俺が初めて“両方の選手を知っている状態”で観た試合だったんだ。
テレビで見ていて、ある種のリスペクトを感じた。ホワイトはKO負けしたけれど、素晴らしい内容を見せた。二人とも俺の尊敬を勝ち取ったし、当時10歳だった俺が何の価値があるんだって話だけど、彼らのやったことは尊敬できた。
だから、自分のスポーツを選ぶときに、尊敬されるようなことをやりたいと思った。ボクシングはそういうものだと思う。
ジョシュア対ホワイトは2015年、もうすぐ10年前のことだ。そのとき俺は10歳で、今はホワイトと戦おうとしている。わかる? まさに夢を生きているんだ」
その瞬間は土曜日、リヤドのANBアリーナで訪れる。これは
イタウマのキャリア初のメインイベントとなる試合だ。勝てば次戦で世界タイトル挑戦の可能性もある。スパーリングの機会はなかったが、今度は本物の試合でホワイトと拳を交える。
「人々は分かっていないけど、ディリアン・ホワイトと戦うことは大きな意味がある」とイタウマは続ける。「俺は20歳でディリアン・ホワイトと戦うんだぞ。これは大きなことだし、あまり評価されていないけど、別に拍手が欲しいわけじゃない。
非現実的な感じはしない。俺の練習を見ればわかるが、この世界でやるべきことは十分にやってきた。自分でこの位置にたどり着いたと思っているから、まだ不思議な気分ではない。
ただ、ちょっと変な感じはある。今回が、自分がインスタでフォローしている相手と戦う初めての試合だからだ。フォローを外そうかと思ったけど、それは子供じみている。ホワイトを尊敬しているし、何の問題もない。ただ、これから殴り合う相手の投稿を見るのは変な気分だ」
木曜日、リヤドで行われた
最終記者会見で二人は初めて同じステージに立った。互いに敬意を示したが、初めてのフェイスオフ撮影では言葉を交わした。
ホワイトはイタウマに「タフガイのふりはやめろ。それはお前じゃない」と忠告。20歳のイタウマを“年の功”で制そうとする発言に聞こえた。ホワイトは17歳年上で、息子はイタウマより年上。さらに、イタウマが10歳だった頃には、ジョシュアと英国ヘビー級王座を懸けて戦っていた。
事実、イタウマは史上2番目に若いヘビー級世界王者になれる年齢だ。来年10月までにタイトルを獲得すれば、
マイク・タイソンとフロイド・パターソンの間に名を連ねることになる。それは十分に現実的な目標だ。
「史上最年少のヘビー級世界王者のリストを見た」とイタウマは続ける。「
マイク・タイソン、フロイド・パターソン、モハメド・アリ、ジョージ・フォアマン… 俺は世界ヘビー級王者になれると信じているし、その偉大な名前たちと肩を並べられると思っている。でもまずはディリアン・ホワイトだ」
この試合が発表されて以来、イタウマの主な関心はホワイトに向けられてきたが、
オレクサンドル・ウシクを倒せる唯一の存在かもしれないという声も耳にしている。
「今年世界ヘビー級王者になれるか?」という質問には「ノーコメント」と短く答えたが、ウシクについて聞かれると、12勝(10KO)無敗のコンテンダーは慎重に評価した。
「彼には敬意を表する。素晴らしいファイターで、おそらく長い間で最高のヘビー級だ。でも、彼を“憧れ”とは思わない。どのボクサーも神格化したくないんだ。そうやって高みに置いてしまうと、少し舞い上がってしまうかもしれないから」
俺は今、20歳でディリアン・ホワイトと戦う立場にいる。10歳の頃に見ていた相手と今はリングで向き合うんだ。そんな感傷に浸っている時間はない。集中して自分の仕事をやらなきゃいけない。ウシクには大いに敬意を持っているけど、彼は彼のキャリアを歩んできた。今は俺のキャリアだ。
そういうことはあまり気にしていない。もしいつか実現するなら実現するし、そうでなければそういうことだ。将来的には統一ヘビー級王者になると信じている。人は俺が準備できていると言うかもしれないし、まだだと言うかもしれない。
自分の力は分かっている。あとはそれを世界に示すだけだ」
イタウマ対ホワイトは、Esports World Cupファイトウィークのメインイベントとして行われる。この試合は
DAZNペイパービューで視聴可能だ。