ニュージャージー州ニューアーク発 —
ロレンツォ・シンプソンは、昨年の夏にボクシングから身を引こうと考えていた。
かつては「ボルティモアの次なるジャーボンタ・デービス」として期待された有望株だったシンプソンは、6月28日にプロキャリア2度目の敗北を喫した。ライコ・サンタナにスプリット判定で敗れたその試合は予想外の結果であり、リング外で抱えていた問題も重なって、「トラック」の愛称を持つこの才能あるファイターは、「この競技は心の痛みと苛立ちに見合わない」と感じるようになった。
長年のトレーナーであり父親代わりでもあるカルビン・フォードや、兄のように慕うスーパースターの
デービスとの関係にも亀裂が入り、シンプソンは孤立感を深めた。彼にとって身近な人々の存在は不可欠だった。というのも、祖父母のロレンツォとマーゴ・シンプソンが2020年に亡くなり、同年には叔父のジョシュア・キャロルがボルティモアで殺害されていたからだ。
4敗を喫していたサンタナや5敗していたウラジミール・ヘルナンデスに敗れたことも、シンプソンを落胆させた。彼はすでに7桁のファイトマネーを得る立場にいるはずだと考えていたからだ。
「もう完全に終わったと思った」とシンプソンは
ザ・リング・マガジンに語った。「ボクシングを愛してなかった。ただ金のためにやってた。時間を無駄にしてるだけだった。本当に終わったと思ってた。」
しかし最終的に、フォードは友人の
ヴィト・ミエルニッキがいるテキサス州スタッフォードに行くようシンプソンを励ました。そこでは、経験豊富で評価の高いトレーナー、ロニー・シールズのもとでトレーニングを行っている。シールズのジムで世界ランカーや王者たちと時間を共にし、シールズとボクシングや人生について語り合う中で、シンプソンは再びキャリアを続ける意欲を取り戻した。
25歳のミドル級ボクサーであるシンプソンは、2月1日に試合を行い、ニュージャージー州ニューアークのプルデンシャル・センターで、格下のトレボン・スミスを初回終了時にストップした。この試合は急遽決まったため、実際にはクルーザー級で行われた。
彼が本格的な再起のきっかけにしたいと願う試合は、土曜夜に同じくプルデンシャル・センターで予定されている。シンプソン(15勝2敗、9KO)は、ニューヨーク出身の
ジャヒ・タッカー(14勝1敗1分、6KO)と対戦する。試合は160ポンド契約の10回戦で、
ヴィト・ミエルニッキ対カミル・ガルジェリク戦のアンダーカードとして行われ、ESPN+で午後5時30分(米東部時間)から配信される予定だ。
「みんなが自分に期待しているようなパフォーマンスを見せたい」とシンプソンは語った。「誰がうまいかなんて、みんな分かってる。でも俺は人生と向き合ってたんだ。言い訳はしない。人生と向き合いながらバランスを取るのは簡単じゃない。でも今回はちゃんと戦う。愛を感じてるし、これが自分のやりたいことなんだ。気分はいいし、キャンプも順調だった。だから自分の基準に見合ったパフォーマンスができるはずだ。」
スキルとパワーを兼ね備えたサウスポーのシンプソンは、今もなおアマチュア時代に示したポテンシャルを発揮するには十分若いと感じている。
2つの敗戦を経て、彼はより成熟した。そしてようやく、30~40ポンドもの減量をキャンプ中に行うのは無理があるという現実を自覚するようになった。
シンプソンのマネージャーを務めるヴィト・ミエルニッキ・シニアの息子、ヴィト・ミエルニッキ(20勝1敗1分、12KO)は、タッカー戦がシンプソンのキャリアを立て直すきっかけになることを願っている。昨年夏まで、多くのボクシング関係者はまったく異なるキャリアを想像していたからだ。
「俺はずっと才能ある選手たちの中で育ってきたけど、ジムでのあいつのスパーを見たら、みんなスーパースターだって思うよ」とミエルニッキ・ジュニアは語った。「スーパースターになる素質は全部ある。…すべてを持ってる選手だ。アマチュア時代は無敵だった。たぶん10年間くらい負けなかったんじゃないかな。まさにそういう選手だった。
それだけに、今のキャリアの歩みを見るのはつらい。あいつの本当の力を知ってるからこそね。だから、今回は世界にその実力を見せつけてくれると期待してる。世間の注目を再び“トラック”に引き戻す、そんな試合になると思う。」
タッカー戦後もジムに残り、できる限りアクティブに活動を続けていくつもりだというシンプソンは、2026年後半までに有力なコンテンダーとして認められる道に乗るためにも、タッカーに勝つことを目指している。タッカーは昨年6月以降4連勝中の相手だ。
「また愛を取り戻したんだ」とシンプソンは語った。「カルビンとも話すようになったし、“タンク”とも連絡を取ってる。家族とも、もっと自分の活動に関わってほしいって話してる。要するに大人になってきたんだ。6歳からこの世界にいる。俺が本当に知ってるのはこれだけ。でも、やるなら徹底的にやるし、やらないなら完全に終わらせて、他に何をするかを見つけなきゃならない。」
Keith Idecは『ザ・リング・マガジン』の上級ライター兼コラムニスト。X(旧Twitter)では @idecboxing で連絡可能。