ラスベガス――ラモン・カルデナスは、わずか2年前までUber、Lyft、DoorDashのドライバー業で何とか生計を立てていた。
当時、ボクシングのキャリアでの最高報酬は1万7000ドルに過ぎず、副業を続けるしかなかった。
しかし直近4試合で、カルデナスは新マネージャーのマイケル・ミラー(ノニト・ドネア、ティモシー・ブラッドリー・ジュニア、ケリー・パブリックのキャリアを手掛けた)のもと、対戦相手を圧倒してランクを駆け上がり、収入も改善した。
もはやタクシー業は必要ない。29歳、テキサス州サンアントニオ出身のカルデナスは、いまや右拳一本で勝負をかけている。
WBAスーパーバンタム級1位のカルデナスは、日曜、T-モバイル・アリーナで行われる
トップランク興行のESPN中継メインイベントで4団体統一ジュニアフェザー級王者・井上尚弥と対戦する人生最大のチャンスを迎える。
カルデナスは、「モンスター」と対峙することの重みを十分理解している。
「36分間完璧でいなきゃいけない。それが彼を倒す方法だ」とカルデナスは『ザ・リング・マガジン』に語った。「どうやって勝つかはわからない。でも勝つことだけはわかっている。失うものは何もない、得るものばかりだ。負けに行くわけじゃない。全力で勝ちに行くし、勝つつもりで臨む。ファンの記憶に残る試合を届けたい。」
一方の井上は、カルデナスを通過点と見なしてすでに次のプランを描いている。週内には、9月14日に東京でムロジョン・アフマダリエフと対戦予定であることが明かされ、12月にはリヤド・シーズン興行でニック・ボール戦、その後には中谷潤人戦の計画もある。
「彼が俺を軽視しているとは思わない。俺が証明したいものを持ってリングに上がるとわかっているからだ」とカルデナスは語った。「彼はこの試合を真剣に受け止めていると思う。
勝てばキャリアは一変し、フードチェーンの頂点に立てる。夢だった世界王者になるということだ。そうなれば、皆が俺と戦いたがるだろう。」
カルデナスは、アンディ・ルイス・ジュニアがアンソニー・ジョシュアを破ったように、ブルーノ・スラチェがハイメ・ムンギアに勝ったような番狂わせを狙っている。井上は昨年、ルイス・ネリ戦でキャリア初のダウンを喫し、脆さを見せたが、結局は過去10戦同様、ネリをKOした。
「そうだな、もちろん隙は見える」とカルデナスは言う。「どんな選手にも見つけられる隙はある。フロイド・メイウェザー・ジュニアだって史上最高だが、隙はあった。俺たちは、そこを突けるよう準備してきた。
パワーへの備えは難しいが、彼が俺をKOしようと最初から全力で来るのはわかっている。それに対抗できる作戦を立てて、彼のそれを封じ込めるような戦術を練らなきゃいけない。
これまでやってきたことを続けつつ、強度を上げ、これまでやったことのないことにも取り組み、改良を重ねる。壊れてないなら修理するなだが、彼専用のプランを加えて、彼に対してのみ有効な作戦に仕上げる必要がある。調整は順調だ。」
4階級制覇の井上が世界レベルの相手と戦ってきたのに対し、ジョエル・ディアスが指導するカルデナスはそうではない。しかし、今年2月、無敗のブライアン・アコスタに10回戦の判定勝ちを収め、自信をつけている。
「ボクシングは人気投票じゃない。勝ち星、ランキング、倒してきた相手が全てだ」とカルデナス。「与えられたチャンスをものにしてきた。WBA1位にいるのは理由がある。人気や好感度で選ばれたわけじゃない。実力でこの舞台を手に入れたんだ。
俺はカメラや批評家に一喜一憂するタイプじゃない。この競技で生計を立てられていることに感謝しているし、ただの戦う者だ。スイッチを入れればどこだってリングになる。世界のどこに置かれても戦うだけだ。試合の大きさに飲まれるつもりはない。それが俺のメンタリティだ。」
知名度が低いカルデナスは、TJ・ドヘニー、キム・イェジュンをネリ戦のKO勝利から12か月後に連破した井上が迎える、3人目の格下対戦相手となる。
井上は当初、アラン・ピカソ・ロメロと対戦予定だったが、急きょカルデナス戦にシフトした。
「彼といつか戦うとは思ってたけど、来年だと思ってた」とカルデナス。「マネージャーから電話が来たとき、『やるぞ』って即答したよ。すべてが一気に進んで、今このチャンスがある。あとは活かすだけだ。勝てば人生は永遠に変わる。」
Manouk Akopyanは『ザ・リング・マガジン』の主任ライターである。X(旧Twitter)およびInstagramでは@ManoukAkopyanで連絡可能。