リヤドは
ニック・ボールにとって幸運の狩場となっている。
昨年3月、リバプール出身のボールはサウジアラビアへ飛び、メキシコの
レイ・バルガスにWBCフェザー級王座へ挑戦した。物議を醸すドローに終わったものの、そのパフォーマンスは彼の人生の流れを変えた。そして3カ月後、再びリヤドに戻り、当時無敗の新王者
レイモンド・フォードからWBA王座をもぎ取った。
今週末、ボール(22勝0敗1分、13KO)は、オーストラリアの
サム・グッドマン(20勝0敗、8KO)を相手に、サウジアラビアの首都で3度目の防衛戦に臨む。
ボール対グッドマン戦は、Eスポーツ・ワールドカップ・ファイトウィークの一環として行われ、
DAZNのペイ・パー・ビューで独占配信される。
Ring同級3位のフェザー級ボクサーであるボールは、できるだけ目立たない場所で過ごすことを好むが、サウジでのファイトウィークでは、ボクシング界が用意できる最も強烈なスポットライトの下で5日間を過ごすことになる。
28歳のボールは、この18カ月で自らの人生が変わったことを心から喜び、サウジでの試合に伴う独特の要求にも慣れてきた。
記者会見で場を仕切ったり、終わりのないメディア対応で入念に用意した気の利いた言葉を並べ立てたりすることは決してないが、大会週のイベントには積極的に身を投じ、その後は静かな生活へと戻ることを楽しんでいる。
「そう、それが付き物だし、自分で契約してやっていることだからな」とボールは「ザ・リング・マガジン」に語った。
「ファイトウィークやそのほかのことも良いし、プロモーションのやり方も良い。次のレベルってやつだし、報酬も良くなる。だから気に入っているよ。」
「命を懸けているのは俺たちなんだから、その見返りを得るべきだ」
この1年で、P4Pスターで4団体統一ジュニアフェザー級王者の
井上尚弥を、いずれボールが126ポンド級に迎え撃つのではないかという憶測が高まっている。
Ring王者の井上は、
12月にリヤド・シーズンでの初登場を予定しており、ボールの射程圏内にしっかりと入ってきた。
プロ8年目のボールは、以前から井上に関する質問に答えてきており、間近に迫ったグッドマン戦と同じくらい、日本のスーパースターとの対戦についても聞かれることになるのは重々承知している。
ボールは本来、このレベルに到達するはずの選手ではなかった。プロデビューはナイトクラブで行い、グリーンバンク・スポーツ・アカデミーのような会場でキャリアを積み上げてきた。世界タイトル戦の舞台に辿り着くまでに、ほぼ7年を要した。もし近道を試みたり、将来を夢見たりしていたら、道を踏み外していた可能性は十分にあった。
その姿勢は今や彼の中に深く根付いている。ボールは現代ボクシングのプロモーションの仕組みを理解してはいるが、井上の話題によって目の前の課題から気を逸らされるつもりはない。
「良いプロモーションだとは思うけど、もうあいつの名前を聞くのはうんざりだし、向こうも俺の名前を聞くのは多分うんざりしてるだろうな」とボールは笑いながら言った。「でも、やらなきゃならないことだろ。」
「集中していなければ気を散らすことになるかもしれないが、俺は違う。この次の相手に勝たなければあの試合は実現しないって分かっているし、ボクシングは一発で終わるスポーツだ。この相手に当てられる可能性だってあるから、今は完全に彼に集中している。そうでなければ次の試合なんて起こらないだろ。」
だから俺はメンタルが強い。そういう考え方ができるからこそ、この話題について話しながらも集中を保てるし、気にすることもないんだ」