ノックアウトアーティストである
井上尚弥にとって、リングに上がるたびに同じ光景が繰り返されるかのように映る。
しかし、直近5試合はいずれも勝利とはいえ、4団体統一ジュニアフェザー級王者であり、常にパウンド・フォー・パウンドの頂点に君臨する井上にとって、その内容は一様ではない。
井上は、ルイス・ネリ戦とラモン・カルデナス戦で、序盤に鋭いカウンターを被弾し、まさかのダウンを2度喫するが、いずれも巻き返してストップ勝ちを収める。採点上で失うラウンドも、ここ数年と比べて増え、
9月に行われたムロジョン・アフマダリエフ戦では、13年のキャリアでわずか4度目となる試合終了のゴングを聞く。土曜日、井上(31勝0敗、27KO)は、サウジアラビアで開催される
DAZN PPV「The Ring V:Night of the Samurai」のメインイベントで、デビッド・ピカソを相手に122ポンド級王座の防衛戦に臨む。
井上は、容赦ない本来のスタイルへの回帰を約束する。
「本当にトップクラスの試合を見せるつもりだ」と井上は、DAZNの「On The Ground」シリーズで語る。
「今回は圧倒する。自分の強さをはっきりと示す。前回の試合では、判定勝ちを狙う戦略をプランの一部として組み立てる。今回は、本当にパワーの差を見せることがテーマで、とにかく自分の強さを示したい。ピカソに対して、どうボクシングするかを自分の中で慎重に選び取ることになるが、それはうまくやれると思う。
一つ言えるのは、身長差が約3インチあるということだ。もちろん25歳という若さや勢いもある。ピカソのモチベーションは、他の相手と戦う時とは違う。すべてを奪いに来るつもりで出てくる。だから、これまでの相手と比べても1.5倍、あるいは倍くらいの強さで向かってくる。その点を一番警戒する」
ピカソ(32勝0敗1分、17KO)は、世界タイトル初挑戦となる、まだ経験の浅い未知数の多いメキシコ人挑戦者である。
7月には亀田京之介を相手に、精彩を欠く内容ながらマジョリティ判定勝ちを収める。ピカソのキャリアで最も評価の高い勝利は、昨年、井上の元スパーリングパートナーであり、タイトル挑戦経験者でもあるアザト・ホヴァニシャンを下した一戦である。
井上の父でありトレーナーでもある真吾は、春に控える
中谷潤人との対決を確実なものにするため、ピカソ攻略に向けたゲームプランをどのように描いているかを明かす。
「すべては集中力だ」と真吾は語る。「尚弥が完全に集中していれば、その場で瞬時の判断をより速く下すことができる。少しでも気を抜くことは許されない。いまの尚弥には、以前よりもその集中力を持続できる感覚があると感じる。
戦術的には、距離を保つことを意識させたい。動きを止めて前に出て攻め続けると、ピカソは非常に好戦的なファイターなので、相手の土俵に踏み込んでしまい、打ち返されるだけになる。だからこそ、距離を取ることを常に求める。
打っては動き、相手のパンチをかわしながら当てる。それを繰り返し、少しずつ削り、ダメージを与える。基礎をしっかり保ちながら、段階的にピカソを崩していくイメージだ。ただし、最初からノックアウトを狙いにいくと、尚弥は力んでしまい、本来の自然な動きができなくなる。だから冷静さを保ち、一発一発を大切にする。その積み重ねで崩していく」
Manouk Akopyanは『ザ・リング』の主任ライターであり、Xとインスタグラムでは@ManoukAkopyanで発信する。