直近の試合では、
井上尚弥が
ムロジョン・アフマダリエフをノックアウトできたかもしれないと感じる場面もあった。
しかし井上は、その本能を抑え、より慎重な戦い方を選択する。
9月14日、ウズベキスタン出身のサウスポーを相手に、判定で危なげなく勝利する。過度な攻撃性こそが、スーパーバンタム級4団体統一王者である井上が、
ルイス・ネリ戦や
ラモン・カルデナス戦でダウンを喫した要因であったと、本人は確信している。
日本のスーパースターである井上は、自分が落ち着いてアウトボクシングできると分かっていた技巧派アフマダリエフを相手に、同じ戦術的ミスを繰り返したくなかった。
「もちろん、抑えることへのためらいはあった」と井上は『ザ・リング』の杉浦大輔に語る。「だが、それが今の自分の弱点であることも理解している。対戦相手の陣営もそこを研究していて、私が観客を楽しませたいという気持ちから時に攻撃的になり、その瞬間が隙になると考えている。だから、毎試合必ずしもファンを楽しませることを最優先にする必要はないのではないか、と考えるようになる。」
井上(31勝無敗、27KO)は、
土曜夜にサウジアラビア・リヤドでメキシコのアラン・ピカソと対戦予定で、ボクシング界屈指のエキサイティングな存在である。4階級制覇王者の井上は、3カ月前に日本・名古屋のIGアリーナでアフマダリエフを118-110、118-110、117-111の判定で下すまで、11連続KO勝利を収めていた。
アフマダリエフ(14勝2敗、11KO)は、2019年11月のノニト・ドネア以来、井上を判定まで持ち込んだ初の選手となる。『ザ・リング』のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで3位に位置する井上が、より守備を意識した戦いを続けるのであれば、12ラウンドを戦い抜く試合は今後さらに増える可能性がある。
「誤解のないように言っておくと、本当のチャンピオン級の相手と戦う時、最初から無理にノックアウトを狙おうとは考えていない」と井上は語る。「自然にチャンスが来れば取りにいく。もちろん、倒さなければならない試合や、判定に持ち込むべきではない試合もある。だが、スーパーバンタム級に上げて以降の
[スティーブン]フルトン、
マーロン・タパレス、ネリ、アフマダリエフ戦では、最初からストップを強引に狙うつもりはなかった。アフマダリエフ戦で特別だったのは、倒しにいける場面が見えたにもかかわらず、自分を抑えたことだ。それはキャリアで初めてのことだった。」
ファンデュエルは、WBC2位の挑戦者ピカソ(32勝無敗1分、17KO)に対し、井上を45対1という圧倒的な本命に挙げている。両者による12回戦、122ポンド契約の一戦は、井上が持つリング誌、IBF、WBA、WBC、WBOの各王座を懸け、「ザ・リングV:ナイト・オブ・ザ・サムライ」と銘打たれた興行のメインとして、モハメド・アブド・アリーナで行われる。
Keith Idec は『ザ・リング』のシニア・ライター兼コラムニストで、Xでは@idecboxingで連絡を取ることができる。