過去2年間で、
マキシ・ヒューズはまるで世界ツアーのような日々を送ってきた。
絶好調の戦績が
マキシ・ヒューズをライト級の世界レベルへと押し上げ、大西洋を越えるきっかけとなった。彼はオクラホマで元統一王者かつ『ザ・リング』誌認定王者の
ジョージ・カンボソスと対戦し、その後ネバダ州ラスベガスに渡り、無敗のメキシコ人コンテンダー、ウィリアム・ゼペダと拳を交えた。昨年12月には南フランスのモナコ公国に遠征し、美しいその地で
ゲイリー・カリーを破っている。
今週末、35歳のマキシ・ヒューズは念願の地元開催を迎える。金曜の夜、ヒューズ(28勝7敗2分、6KO)は、自身が育った村から車で10分足らずの場所にあるドンカスターのエコパワー・スタジアムで、
アーチー・シャープ(25勝1敗、9KO)と対戦する。
「ああ、最高だよ。このスタジアムには親しみもあるしね」とヒューズは『ザ・リング』誌に語った。
「メディア関連で何度も足を運んでるし、普段使ってるランニングコースも敷地内にあるから特別な場所なんだ。世界中を転戦してきたけど、やっぱり地元でやれるのは嬉しいよ。
実は、昔このスタジアムで働いてたこともあるんだ。叔父がやってる地元ドンカスターの会社で、塗装の仕事をしててね。今から12年くらい前、スタジアム周辺のブリーズブロックの壁を全部塗装するって仕事があって、俺が任されたんだ。
だから、このスタジアムをキレイに見せるために実際に塗装作業をしてたんだよ。」
ヒューズは今回、重要な勝利を経て地元に帰ってくる。
2023年7月、彼はジョージ・カンボソスを相手に好パフォーマンスを見せたが、僅差の判定でIBO王座を失うという不運に見舞われた。一方、翌年3月にゼペダに第4ラウンドTKOで敗れた試合は、まったく別の意味で厳しいものだった。ビザの大問題により準備が完全に狂い、一方的な展開で4ラウンドで終わってしまったのである。
ヒューズは、12月14日にモンテカルロで行われたマッチルーム興行にアウェーの立場で出場し、危険な相手であるゲイリー・カリーを圧倒。3人のジャッジ全員が100-90をつけた完封の10回判定勝ちで、復調を印象づけた。
しかし本人にとっては、外から見えるほど順調な内容ではなかったという。
「多くの人が“見事な復帰戦だった”って言ってくれるけど、俺にとっては違ったんだ」とヒューズは語る。
「準備は本当に最悪だった。経験としては良かったけど、胸と耳に感染症を抱えてたんだ。問題は、もし試合をキャンセルしたら次のチャンスがもう来ないかもしれないってことだった。だから“まだ引き出しはあるし、カリーには勝てるはずだ”って腹をくくった。
ショーン(・オヘイガン/トレーナー)は、他の選手のためにもジムに来るなって言ったから、自分ひとりでガレージで練習したよ。そこにサンドバッグがあって、トレーニングできるスペースもあるから、ひたすら自分を追い込んだ。
ずっと“これが治らなかったら、出場を諦めるしかないな”って思ってたよ。
結局3~4週間ぐらいの準備しかできなかった。決して良い状態じゃなかったけど、やりきった。食事管理も怠らず、自分を甘やかさなかった。
“俺なら大丈夫”って自分に言い聞かせ続けて、結果的に勝った。それが60%の状態のマキシだったんだ。」
ヒューズは、地元凱旋だからといって、楽な相手を選んだわけではない。
アーチー・シャープはキャリアを通じてスーパーフェザー級で戦ってきたが、昨年、現欧州王者ライアン・ガーナー(17勝0敗、8KO)に判定で敗れて無敗記録が途絶えたことをきっかけに、135ポンドのライト級へ階級を上げる決断を下した。シャープは長年にわたりWBO世界ランキングの上位に名を連ねてきた選手であり、30歳となった今、5ポンドの増量が有利に働くと見られている。
シャープは、ヒューズが自身のキャリアで最も手強い相手になることを理解している。しかし同時に、世界ランカーのヨークシャー出身の
ヒューズは、シャープが長年待ち望んでいたような試練でもある。一方のヒューズは、シャープの心境を正確に理解しており、試合開始のゴングが近づくにつれて彼がどのように対応するのかに注目している。
「正直に言えば、彼(シャープ)は4番手の候補だった。他の名前は言わないけど、公になっていたのは
ジョシュ・パドリーだ。実は彼がシャクール・スティーブンソン戦を決める前に、俺たちは交渉を始めていたんだ」とヒューズは語った。
「チケットを売るには国内の相手が必要だと感じたんだ。だからそうした。世界的な名前やヨーロッパの選手も検討したけど、売り込むのが難しくてね。そこでUKのランキングを下から見ていって、アーチー・シャープが試合を探してるって情報を得て、オファーを出した。彼にとってはライト級初戦だから、すぐに飛びついてきたよ。
俺自身も、アンダードッグとしてキャリア最大の夜を迎えたことがある。実際に何度かあるけど、中でもヘディングリー・スタジアムでのジョバンニ・ストラフォン戦(判定勝ち12回)は大きなチャンスだったし、自分の最高のパフォーマンスを引き出してくれた。
それがアーチーにも起きるかは、まだ分からない。そうなるかもしれないし、逆にプレッシャーに押し潰されるかもしれない。こういった試合や経験が彼にはないから、まだ分からないことが多い。でも、様子を見ていこう。
俺は彼のベストな状態を想定して準備している。」
もしヒューズがシャープを乗り越えれば、次は再び主要世界タイトル挑戦に照準を合わせ、キャリアの集大成を目指すことになる。
WBC、WBA、IBFはいずれもマキシ・ヒューズを各団体のライト級トップ15にランクしており、今週金曜の試合の勝者はWBCシルバー王座を手にすることになる。
ただ呼ばれるのを待つのではなく、ヒューズは自ら道を切り開く覚悟を持っている。
「このベルトをめぐってプロモーターにしつこく言い続けた理由は、
ダルトン・スミスがこの王座を獲って防衛して、今では指名挑戦者になってるからだ。そのルートを俺も狙ってる」と彼は語る。
「パドリーみたいに人生を変えるようなチャンスがもらえないなら、自分で手に入れるしかない。指名挑戦者になって、無視できない存在になるんだ。」