フリオ・セサール・チャベス・ジュニアにとって、
ジェイク・ポールとの対戦はキャリアの岐路となる一戦だ。かつての栄光に陰りが差した二世ボクサーは、大胆不敵なコンテンツクリエイターからKOアーティストへと変貌を遂げたポールを倒すことで、自身の「消えかけた炎」を再び燃え上がらせると誓っている。
「この試合に勝って、いいパフォーマンスを見せて、次のチャンスを待つつもりだ。多くの扉が開かれるだろう」と、DAZNのPPVイベントを前にしたメディア公開練習でチャベスは語った。
「今のキャリアの状況で考えれば、彼こそが自分にとって勝てる可能性があり、再びボクシング界で良いポジションに立つための最高の相手だ。この先数年、良い試合を実現するための第一歩になる。これ以上に自分にふさわしいチャンスなんて他にあるか?」
39歳となったチャベスが今なおリングに立てるのは、“チャベス”という名前にいまだ商業価値があるからに他ならない。
全盛期の最後の輝きは、2012年にアンディ・リーをノックアウトで破った試合だった。当時は無敗のミドル級王者で、将来を約束された存在だった。
しかしその後、キャリアは失速。トレーニングへの不真面目さ、減量の失敗、試合中の棄権などが信用を損ねた。さらに2024年1月には銃器不法所持で3件の重罪容疑をかけられ、逮捕された末に治療プログラムに入所する事態にも発展している。
チャベスは直近14試合で8勝6敗と振るわない成績だが、セルヒオ・マルティネス、
サウル・アルバレス、
ダニエル・ジェイコブスといった強豪との敗戦でも高額の報酬を得てきた。昨年7月には、MMAファイターでボクシングでは初心者のユライア・ホールに6回判定勝ちを収めている。
「体調はとても良く、日々コンディションが上がっているのを実感している」とチャベスは語った。「今回のキャンプは素晴らしかった。スパーリングもたくさんこなして、フィジカルも万全だ……勝利を掴むために、最高のチャベスを見せるつもりだ」
一方のポールは、チャベスを完膚なきまでに叩きのめし、
試合を投げさせると豪語している。「ジェイクは自分を過大評価している。オレには彼の中にスキルなんて何も見えない。3〜4ラウンドはボクシングできても、そこからは本物の技術が問われる」とチャベスは語った。「彼は若くて、強くて、自信にあふれているとは思う。でも、まだ本当に効くパンチを受けたことがない。勝負の鍵は戦略とコンディションだ」
チャベスとポールには共通の対戦相手がいる。UFCのレジェンド、アンデウソン・シウバだ。ブラジルのMMAスターであるシウバは、2021年にチャベスに8回スプリット判定勝ちを収めた。一方ポールは、2022年にシウバからダウンを奪い、8回ユナニマス判定で勝利している。
チャベスは、ポールのこれまでの「ベスト勝利」はSNS上の話だと皮肉り、今回の10回戦で9ラウンドKO勝ちを予告した。
「彼には何一つ印象的なものがない」とチャベス。「ヤツの顔面をぶっ壊したい。プレッシャーをかけて、ボディを攻めて、後半に勝負を決めるつもりだ」
Manouk Akopyan はザ・リング・マガジンの主任ライター。XおよびInstagramでは @ManoukAkopyan をフォロー。