オレクサンドル・ウシク、マイク・タイソン、ジョージ・フォアマン、タイソン・フューリー、そしてもちろん
ダニエル・デュボア――誰が相手であろうと、
フィリップ・フルゴビッチは自分が負けることなどないと思っていた。
2024年6月1日、彼がリングに向かって歩いていくとき、デュボアが待つ中でフルゴビッチは満面の笑みを浮かべていた。しかし数ラウンド後、その笑顔は恐怖と絶望の表情へと変わる。
サウジアラビア・リヤドのキングダム・アリーナでは、観客が大歓声を上げる中、デュボアがフルゴビッチに何度も何度もパンチを浴びせた。第8ラウンドには、フルゴビッチの目には血が流れ込み、口は大きく開いたまま、必死に呼吸をしていた。
精神的にも肉体的にもすでに打ちのめされていたフルゴビッチに対し、リングサイドのドクターがレフェリーのジョン・レイサムに試合を止めるよう進言し、勝負は終わった。それからすでに約1年が経つが、フルゴビッチはいまだに何が起きたのか信じられないでいる。
33歳の彼は、自分に要求できる立場がないことを理解しているが、それでも何よりも望んでいるのは再戦の機会だ。
「願わくば、もう一度あの試合をやって勝ちたい」とフルゴビッチは『
ザ・リング』誌に語る。「今、一番望んでいるのはあの再戦なんだ。リマッチが欲しい。あいつには勝てると思ってる。」
ボクシングにおいて勢いというのは不思議なものだ。ある瞬間には味方で、次の瞬間には消えてしまう。
ダニエル・デュボアは世界の頂点に立ったかと思えば、わずか数週間前、ウェンブリー・スタジアムでウシクに敗れIBF王座を失った。一方、フルゴビッチは今まさに勢いに乗っている。
今年初戦となった4月5日のジョー・ジョイス戦では、マンチェスターのCo-opライブ・アリーナで判定勝利を挙げ、戦績を18勝1敗(14KO)とした。デュボアとの再戦に近づくためには、次の試合でも勝利し、連勝を重ねる必要がある。
もちろん、注目はアデレイに集まっているが、フルゴビッチは最近、ふと過去に思いを巡らせていた。
デュボアに完敗した――それは認めざるを得ない。だが、あの時の自分は本当にベストの状態だったのか?
「試合前には本当にいろいろ悪いことが起きたんだ」とフルゴビッチは語る。「スパーリングの最後の数週間はケガをしていたし、試合前には病気にもなった。それは試合を見れば分かると思う。6ラウンド以降は体力がまったく残っていなかった。体調のせいだったし、正直なところ彼を甘く見ていた。簡単に倒せると思ってたんだ。」