【マンチェスター(イングランド)】――フィリップ・フルゴビッチは、ある新たな目標に向けて、自身のキャリアを前進させてくれる相手であれば誰とでも戦うつもりだ。その目標とは、新トレーナーであるエイベル・サンチェスにとって初のヘビー級世界王者となることだ。
もしモーゼス・イタウマ(11勝0敗、9KO)がその過程で立ちはだかるなら、クロアチア出身のフルゴビッチは、20歳の新星が本当に噂通りの実力を持っているのかを確かめる気でいる。
『The Ring』誌が選ぶ「2024年度プロスペクト・オブ・ザ・イヤー(最優秀新人賞)」を受賞したイタウマは、今月初めにマンチェスターのCo-Opライブ・アリーナで行われたフルゴビッチ対ジョー・ジョイス戦をリングサイドで観戦していた多くの国内ヘビー級選手の1人だった。なお、この試合には、フルゴビッチのジムメイトであるファビオ・ワードリーの6月7日の対戦相手ジャレル・ミラーの姿もあった。
モーゼス・イタウマがデムジー・マクキーン(22勝2敗、14KO)をわずか2分足らずで豪快に仕留めてから、すでに4カ月が経過した。マクキーンは、2023年8月に行われたIBFタイトル挑戦者決定戦でフィリップ・フルゴビッチと対戦し、最終ラウンドまで粘りを見せた相手である。
そのフルゴビッチは、マクキーン戦から約10カ月後に再びリングに登場。序盤こそ積極的に攻めたものの、徐々に体力を失い、最終的にはリヤドで行われた一戦でダニエル・デュボアに圧倒されて敗北を喫した。その後、デュボアはIBFの正式な世界王者に昇格し、この夜の会場にも観戦者として姿を見せていた。
イタウマにとってマクキーンとの試合は、実力を測るうえでも理にかなったマッチメイクだった。しかし、次のステップでその“間”をどう埋めるかは難題だ――と、ジョセフ・パーカーのトレーナーであるアンディ・リーも、
先月『ザ・リング・マガジン』とのインタビューで同様の見解を示している。フルゴビッチ(18勝1敗、14KO)は、アマチュア時代に欧州選手権と世界選手権を制した実績を持つモーゼス・イタウマについて、その才能を高く評価する一方で、関係者たちに対し「世界レベルへの早すぎる飛躍は避けるべきだ」と率直に警告を発した。
「ボクシングでは、スキルだけじゃなく“ハート”や“打たれ強さ”も重要だ。彼はこれまで素晴らしい戦績を残してきたけど、そうだな…やろうじゃないか。でも見てみろよ、ジャレッド・アンダーソンだってそうだった。彼も最初は良く見えた、でも最後は違った。俺は喜んでその試合を受けるけど、彼はまだ若いし、慎重にマッチメイクしてやる必要がある。無理にタフな試合に放り込むべきじゃない。彼に“戦士の心”があるかどうか、そこを見てみようじゃないか。」
ジャレッド・アンダーソン(18勝1敗、15KO)は長らく“アメリカの次なるヘビー級スター”として期待されてきたが、昨年8月にマルティン・バコレに5回KO負けを喫してから、その評価には疑問符がついている。
イタウマはアンダーソンよりも5歳若く、かつては“史上最年少ヘビー級世界王者”を目指していたが、その夢は慎重なマッチメイクの中で徐々に現実的な目標へと軌道修正されつつある。
サンチェスは名指しこそ避けたものの、『ザ・リング・マガジン』の取材でイタウマに対するフルゴビッチの主張を支持するような発言をしている。
「タイトル挑戦者決定戦にふさわしい者たち? 俺は誰が相手でも構わない。ただ、若手の何人かは、その機会だけじゃなく、“ジョー(ジョイス)、ディリアン・ホワイト、デレク・チソラ、そしてフィリップ(フルゴビッチ)”のような“戦士の資格”も、自らの力で勝ち取らなければならない。彼らはすでにそれを証明してきたが、他の若手にはまだその道のりが残されているんだ。」
一方、モーゼス・イタウマのプロモーターであるフランク・ウォーレンは、リヤドでの快勝――オレクサンドル・ウシク対タイソン・フューリー第2戦のアンダーカードで披露した圧巻のパフォーマンス――の直後に、その勢いを活かせなかったことに対して不満を口にしている。
とはいえ、ウォーレンは今後数カ月でイタウマが再び精力的に活動を再開すると予想しており、まずは5月24日、スコットランド・グラスゴーで行われるマイク・バログン戦から本格的な再始動を図る予定だ。
その後、フランク・ウォーレンは『ザ・リング・マガジン』に対し次のように語った。
「モーゼスは大丈夫さ。少しの間リングを離れてしまったのは残念だったし、本当はこの勢いを失いたくなかった。でもまあ、とにかくグラスゴーで試合に出る予定だし、そこを無事に乗り切れば、6月末か7月頃にもう1試合――それがモーゼスの次のステップになるだろうね。」