ショーン・ヘムフィルは、
カラム・シンプソンと
マーク・ジェファーズの間で繰り広げられていた“イギリス国内のスーパーミドル級ドラマ”の脇役としてイングランドにやって来た。しかしこのアメリカ人は、無敗だったジェファーズを相手に壮絶な10ラウンドのマジョリティ判定勝利を挙げ、イギリス人同士による夢の対決という希望を打ち砕いた。
過去18か月にわたり、マーク・ジェファーズ(20勝1敗、7KO)は、元欧州王者ケビン・ルル・サジョや世界ランク入りしているキューバ人のオスレイス・イグレシアスといった強豪とのハイプロファイルな試合を受け入れてきたが、いずれも実現には至らなかった。
試合から遠ざかることを嫌った27歳のジェファーズは、自身を大舞台に押し上げるためにも、ニューオーリンズ出身のショーン・ヘンプヒル(19勝2敗、11KO)との対戦を即決で受け入れた。
昨年5月、ヘンプヒル(166ポンド)は元IBF王者ウィリアム・スカルに8ラウンド判定で敗れているが、今回が初の米国外での試合にもかかわらず、冷え込むヨークシャーの夜でも落ち着いた様子を見せた。序盤は動き回りながらボクシングを展開。ジェファーズ(166ポンド)が距離を詰めていく中でも的確にパンチを当て、苦しい展開ながら試合の流れを掴もうとした。
ジェファーズは冷静に構え、常にパンチの届く距離を保ちながらガードを固めた。第3ラウンドには先制の右アッパーで好機を作ったが、ヘンプヒルも鋭いカウンターを返し、ジェファーズは依然として慎重な展開を強いられた。
第4ラウンド、ジェファーズが狙っていた打ち合いが実現。しかし、頭部高めに当たったヘンプヒルの右が効いたか、続けて連打を浴びせられた。ジェファーズはダメージを見せなかったが、応戦するもベルまでの間に劣勢を強いられた。
第5ラウンドは見応えのある接近戦が展開された。ジェファーズはアゴを引き、体を密着させるように前進して自分の得意な距離での打ち合いに持ち込んだ。勢いづいたジェファーズに触発されたヘンプヒルも応じて、その場に踏みとどまり、打ち合いに応じた。
ジェファーズの一撃一撃に対し、ヘンプヒルはリラックスした表情のまま、素早く正確なコンビネーションで応戦。イギリス人のパンチにも慣れてきた様子だった。
第8ラウンドには両者とも足を止め、激しい打ち合いを展開。ジェファーズが一方的に押す場面もあれば、次の瞬間にはヘンプヒルが優勢に転じるといった攻防が続いた。
今週初めの
インタビューでジェファーズは『ザ・リング・マガジン』誌に対し、「肉体的に厳しい試合の中での精神的な戦いこそ自分の真価が問われる場面だ」と語っていた。ヘンプヒルが足を止めたことを見て前進を強めたジェファーズは、9ラウンドを取った可能性があったが、10ラウンドでは逆にヘンプヒルが猛攻を仕掛け、終盤には一連のクリーンヒットでジェファーズをグラつかせた。
リングサイドの誰もが勝者を確信できず、判定は割れた。
サルバドール・サルバは95-95のドローと採点したが、ミシェル・マクシュタ(97-93)、ハワード・フォスター(96-94)はともにヘンプヒルを支持し、ヘンプヒルの勝利が宣告された。
リース・エドワーズ、トーマス・エソンバを判定で下す
フェザー級で行われた一戦では、リース・エドワーズ(17勝1敗、4KO)がトーマス・エソンバ(14勝10敗1分、4KO)を相手に8ラウンド戦を制した。しかし、25歳のウェールズ人にとっては、内容に満足できるものではなかった。
昨年12月、エドワーズはわずか数日前のオファーでリヤドにて高評価のピーター・マクグレイルとの試合を受け、接戦の末に敗れ、無敗記録は途絶えたものの、そのパフォーマンスは多くの尊敬を集めた。
今回はエドワーズ(125ポンド)の方が、直前で対戦相手の変更に対応しなければならない立場となった。当初予定されていたライオン・ウッドストックが試合を辞退したため、元欧州バンタム級王者のトーマス・エソンバが代役として出場することになった。
エソンバ(124ポンド)は経験豊富で老獪なベテランである一方、年齢は37歳と高く、体格的にも明らかに劣っていた。だが彼は巧みに身体を小さく見せ、エドワーズに先に仕掛けさせた上で、サウスポーの左手で鋭いカウンターを狙うという老練な戦法で対抗した。
エドワーズは距離を詰めるのに非常に苦戦し、パンチも次々と空を切って当たらなかった。その中で、エソンバの陣営――マネージャーであり元IBF世界フライ級王者のサニー・エドワーズを含むチーム――は、試合の流れを見て次第に勝利の可能性に手応えを感じ始めていた。
エドワーズはプレッシャーをかけ続けたが、第7ラウンド終盤に一時的に手応えのある攻勢を見せた以外は、ほとんどの場面で「中間距離の空白地帯」にとどまり、エソンバの手数は減ったものの、視覚的に印象的なパンチを時折決めていた。
試合は接戦に感じられたが、レフェリーを務めたダレン・サージンソンはエドワーズの圧力を高く評価し、スコアは79-74でエドワーズの勝利と裁定された。
サム・ヒッキー、ハーレー・ホジェッツに完勝
スコットランドのミドル級サム・ヒッキー(3勝0敗、1KO)は、6ラウンドを通してハーレー・ホジェッツ(4勝2敗)を圧倒し、無傷の戦績を維持した。
2022年コモンウェルスゲームズ金メダリストのヒッキーは、落ち着いたコントロールの効いたボクシングを得意とし、試合開始のゴングからホジェッツ(159ポンド)を追い詰め、ポーツマス出身の相手がロープを背にした瞬間を狙って着実に打ち込んだ。
ホジェッツはヒッキーのテクニックに対応できず、絶えず動きながら距離を保ち、接近戦ではクリンチで対応。番狂わせのチャンスは潰えたが、最低限のダメージで逃げ切った。
ヒッキーは終始試合を支配したが、ホジェッツがフェイントに反応せず、無理なリスクも取らなかったため、決定打を見つけるのには苦戦した。
結果は当然の内容で、全ラウンドを取ったヒッキーが60-54の判定勝ちを収めた。
エリス・プライス、ジェイク・プライスをストップ
有望なリーズ出身のライト級選手、エリス・プライス(3勝0敗、2KO)は、テレビ放送のないアンダーカードの締めくくりに登場し、ジェイク・プライス(1勝4敗1分)を6ラウンド中第5ラウンドでストップ。成長する観客を前に、印象的な勝利を収めた。
ヨークシャー出身のプライスは、背が高く手足の長い相手に対し、コンパクトなパンチを序盤から効果的に当てて主導権を握り、ジャブで様子を見ようとした相手を罰するかのように攻撃を浴びせ、右目上をカットさせた。
プライスはポケット内での攻防を得意とする才能あるボクサーだが、時折試合が雑になり、展開が乱れる場面もあった。第5ラウンドにようやく突破口を見出し、連打を浴びせ続けた末に、レフェリーのマイケル・アレクサンダーが1分26秒で試合をストップした。
フランキー・ストリンガー、ケイン・ベイカーを突破
リバプール出身のフランキー・ストリンガー(10勝0敗、1KO)は、キャリア最高の勝利を記録したが、24歳のライト級ボクサーは、バーミンガム出身のケイン・ベイカー(19勝13敗2分、1KO)を相手に8ラウンド戦で苦戦を強いられた。
両者とも136ポンドでの計量。ベイカーは通常、試合のペースを握るタイプだが、ストリンガーのスピードと精度の高さに苦しみ、開始早々から右のパンチを何度も浴びた。
第2ラウンドもストリンガーがロープ際に押し込む展開だったが、ベイカーのカウンター右が決まり、ストリンガーの足元がぐらつく場面もあった。勢いづいたベイカーは持ち前のアグレッシブさを発揮したが、ラウンド終盤にストリンガーの左フックがヒットし、ベイカーは後退を余儀なくされた。
第3ラウンドにはストリンガーの右が再び冴え、主導権を取り戻した。ベイカーも殻に閉じこもることなく応戦し続けたが、打ち合いの中で次第に分が悪くなっていった。
ストリンガーは79-74の判定を受けて当然の勝利を手にしたが、その勝利は容易ではなく、右目の周囲に痣を残すほどの激戦となった。
マウロ・シルバ、オミール・ロドリゲスを圧倒
マウロ・シルバ(9勝0敗、4KO)は、パナマのオミール・ロドリゲス(15勝28敗1分、6KO)を相手に、一方的な展開でストップ勝ちを収めた。
マンチェスター出身の22歳で自信に満ちたミドル級ボクサー、マウロ・シルバは、自身が大舞台にこそふさわしい存在だと信じており、その信念のもと試合開始からロドリゲス(158ポンド)に猛然と襲いかかった。
ロドリゲスは攻撃らしい攻撃をほとんど見せることができず、一方のシウバ(161ポンド)は決定的な一撃こそなかったものの、的確なパンチを容赦なく打ち込み続けた。試合は第4ラウンド1分6秒、パナマ陣営がついにタオルを投入し、ロドリゲスをリタイアさせた。
レッド・ジョンソン、ハーレー・コリソンを圧倒
レッド・ジョンソン(9勝0敗、1KO)は、シェフィールドから短距離を移動して登場し、スーパーミドル級6ラウンド戦でハーレー・コリソン(3勝3敗2分)に判定勝ち。
32歳のコリソン(168ポンド)は、今年初めに高評価を得ているカオイミン・アギャルコ相手に善戦を見せたが、今回も色鮮やかなスタイルのジョンソン(167ポンド)に対し、一部のラウンドで健闘したものの、左のカウンターを何度も浴びて劣勢となった。
第6ラウンドには、ジョンソンのループ気味の左フックが決まり、コリソンは出血しながらダウン。最終的なスコアは59-54でジョンソンが勝利した。