ビル・ヘイニーは、リチャードソン・ヒッチンズのことを非常に長い間知っている。だが今回、より間近でその実力を見極めたいと思っていた。
先週末、ニューヨーク・シティのマディソン・スクエア・ガーデン・シアターで行われたヒッチンズ対ジョージ・カンボソス戦で、ヘイニーはリングサイドの席を確保し、
その一戦をじっくりと見届けた。
リチャードソン・ヒッチンズ(20勝無敗、8KO)がロープをくぐってリングに入ると、ビル・ヘイニーは鋭い視線を彼に突き刺した。140ポンド級王者であるヒッチンズが、これまで息子
デヴィン・ヘイニーに対して浴びせてきたありとあらゆる侮辱の言葉を耳にしてきたビルは、その実力が本当に本人の言う通りかをこの目で確かめたかったのだ。また同時に、カンボソスにどれだけの力が残っているのかも見極めようとしていた。
息子デヴィンがカンボソスと合計24ラウンドを戦ったのを見届けたビル・ヘイニーは、常に元統一王者であるカンボソスに対して敬意を抱いていた。しかし、その敬意がヒッチンズに向けられることはなかった。たとえ彼がリング上でカンボソスを支配する内容を見せたとしても、ビルの目にはそれは別の話だった。
この夜のヒッチンズはすべてが噛み合っていた。目を閉じてパンチを打っても当たるんじゃないかというほどの出来だった。第8ラウンド、カンボソスが膝をつき「ノー・マス(もう無理だ)」と叫んだ瞬間、ビル・ヘイニーは荷物をまとめ、付き添いたちとともに静かに会場を後にした。
後にビル・ヘイニー会場を早々に出たが、ヒッチンズのパフォーマンスについて辛辣な意見を述べることは忘れなかった。彼の目には、ヒッチンズの試合ぶりは決して称賛に値するものではなかったようだ。
「リチャードソン・ヒッチンズはデヴィン・ヘイニーじゃない」とビル・ヘイニーは
『ザ・リング・マガジン』に語った。「あいつは間違いなくデヴィン・ヘイニーじゃない。かなり多くパンチをもらってたからな。」
デヴィン・ヘイニーがカンボソスと戦った2試合では、ほとんど傷一つ負わなかった。しかし、試合を決定的に締めくくることはできなかった。一方、試合運びや“駆け引き”の面では、ヒッチンズにやや分があるかもしれない。
それでもビル・ヘイニーは、「みんな少し落ち着くべきだ」と語っている。ニューヨーク・マンハッタンのホテルのスイートルームでくつろぎながら、窓の外からは歓声や歌声が聞こえてくる。ボクシング界は、ヒッチンズのパフォーマンスを称賛しており、中には「次なるスター」とまで評価する声も上がっている。
ビル・ヘイニーの視点からすれば、そうした称賛の声はどれも現実とかけ離れている。彼は常に事実と現実に基づいて物事を見たいタイプであり、今回の試合についても、ヒッチンズは「やるべきことをやっただけ」に過ぎないと考えている。それ以上でも以下でもない。
「やるべきことをやった、それだけさ。」