アルベルト・プエジョが自身の王座統治に正当性を持たせようとし、
スブリエル・マティアスが2度目の世界王座獲得を狙う──両者の強い動機が、この夜もっとも熾烈な一戦を生み出すかもしれない。
プエジョ(24勝0敗10KO)は、7月13日土曜、ニューヨーク・クイーンズの
ルイ・アームストロング・スタジアムで開催される「Ring III」にて、WBC世界スーパーライト級タイトルの2度目の防衛戦でマティアスと激突する。ドミニカ共和国出身のスリックなサウスポーであるプエジョは、ここ2試合を連続スプリット判定で制しており、直近は3月1日のサンドール・マルティン戦だった。同じ夜、マティアス(22勝2敗22KO)は母国プエルトリコで、
ガブリエル・ゴジャス・バレンズエラを8回TKOで沈めている。
スタイルの異なる両者による対決。その鍵を握るポイントを整理する。
プエジョ
マティアスを回転させ続けろ
マティアスが足を固め、前へ前へと出てくる展開になれば、その手数と強打は相手にとって悪夢だ。
だが、足が止まらず動き続けなければならない状況に追い込まれれば、マティアスのパフォーマンスは著しく落ちる。
プエジョの持ち味であるムーブメントが、この試合でも不可欠となる。角度をつけながら絶えず動き、マティアスを追わせ続けることで、彼の攻撃を制限し、代名詞ともいえる連打を封じ込めなければならない。
30歳のプエジョがマティアスを回転させ続けることができれば、カウンターのビッグショットを狙う展開が作れ、試合を序盤から自分のペースに引き込むことができる。マティアスを常に追う側に回らせることが肝だ。
序盤はペース配分を重視
マティアスがスロースターターであることは周知の事実だ。
プエジョは序盤に自らのリズムを作る必要があるが、無理に攻めすぎてはいけない。序盤ラウンドを無理なく“貯金”する意識が求められる。
試合が進めば、いずれマティアスの猛攻が始まる。もしプエジョが序盤からエンジン全開で飛ばしてしまえば、終盤でガス欠に陥るリスクがある。競った展開で終盤に勝負をかけるためにも、序盤のペース管理がカギとなる。
動きと前進のバランスを取れ
マティアスをアウトボクシングで攻略するためのモデルは、すでに存在する。
2024年6月15日、サウスポーの
リアム・パロがマティアスに明確な判定勝ち(3-0)を収め、IBF王座を奪取した。パロは常に動きながらも、要所ではしっかり踏みとどまり、マティアスの前進を押し返すことでその勢いを封じた。
プエジョも、同様の戦略を実践する必要がある。1ラウンドにつき数回でもマティアスを押し返すことで、プエルトリコの圧力型ファイターを減速させ、自分のペースで試合を運ぶ助けとなるだろう。
マティアス
リングをカットせよ
2度目の世界王座奪還のカギは、マティアスのフットワークと、自分の間合いで打ち込めるポジショニングにかかっている。
33歳のマティアスが、ただプエジョを追いかけ回すだけでは、彼の持ち味であるプレッシャーと手数は十分に発揮されない。仮に動きながらパンチを出したとしても、それがプエジョの動きを止めるとは限らない。
マティアスは、プエジョの進行方向を予測し、そのルートをカットする必要がある。そうすることで、プエジョを常に打ち合いに引き込み、試合後半の主導権を握る可能性が格段に上がる。
ボディを序盤から叩け
サンドール・マルティンがプエジョに善戦した理由として多く挙げられるのが、ボディへの集中的な攻撃だった。マルティンが放った162発の有効打のうち、実に86発がボディブローだった。
もちろんプエジョは、今回ボディに対する防御を強化してくるだろう。しかしマティアスは、それでも下を試さなければならない。もし序盤からボディに打ち込んで効果が出れば、プエジョの動きは確実に鈍る。
試合が進むほどにギアを上げていくマティアスにとって、ボディ攻撃は2度目の世界王者に返り咲くための布石となる。
スタートダッシュを決めろ
マティアスはリアム・パロ戦でスロースタートに終始し、ギアを上げた時には既に勝負が傾いていた。
プエジョ戦では、同じ過ちを繰り返す余裕はない。立ち上がりが遅れれば、勝利の可能性は極めて低くなる。
序盤のラウンドをいくつか奪うか、少なくともボディにしっかりと打ち込んで、プエジョの脚を止める必要がある。これができれば、2度目の世界王座奪還は現実味を帯びてくるだろう。