年を取るのは誰にとっても嬉しいことではないが、ボクシングの世界には上手に年を重ねる方法がある。
アンソニー・ディレルは、その術を身につけた数少ない一人だ。30代半ばでWBC世界スーパーミドル級王座を保持し、チャンピオンとして活躍。晩年の30代に入り、王座戦線からは外れたものの、有力なコンテンダーとしての地位は保ち続けていた。
2022年10月に
カレブ・プラントに衝撃的なノックアウト負けを喫した後、ディレル(34勝3敗2分、25KO)は姿を消した。長い間、誰の目にも耳にも触れることがなかった。
完全に引退を表明したわけではなかったが、そのままキャリアを終える可能性も十分にあった。だが、しばらくの充電期間を経て、ディレルはまだ現役を退くつもりがないことに気づいた。
「もう一度戻る準備ができたと思う」と、ディレルは記者ショーン・ジッテルに語った。「長年ボクシングをやってきて、少し休みが必要だった。休養を取って、今は戻る準備ができている。」
ディレルは10月で41歳になる。また、スーパーミドル級は油断すれば命取りになるような危険な猛者がひしめく階級でもある。
ビッグネームという点では、168ポンド級には実力者がひしめいている。
ジャーマル・チャーロは最近の試合でまだ十分な力を残していることを示し、
ディエゴ・パチェコは若くて飢えたライオンのような存在だ。
クリスチャン・ムビリには証明すべきものがあり、ホセ・アルマンド・レセンディスは新たに頭角を現した。そしてもちろん、カネロ・アルバレスはいまだこの階級の“4団体統一王者”として君臨している。
この競技に20年関わってきたということは、2つの意味を持つ。ひとつは、ディレルが“ベテランの域”に達しているということ。もうひとつは、それだけの経験を積んできたということだ。40歳の彼はこれまでのキャリアでタイトルを獲得し、相手をノックアウトし、トップクラスの選手たちを翻弄してきた。
もちろん、何度か敗北も経験している。だが、思うようにいかなかった時も、彼は落ち込むことなく、その経験を糧にしてきた。
「負けたら、それで終わりじゃない」とディレルは続けた。「勝者と敗者はどんな世界にも存在する。負けたら、次はもっと強くなって戻ってきて、勝てばいいんだ。」