フィラデルフィア生まれ育ちのテビン・ファーマーは、再戦の舞台となったメキシコ・カンクンで“敵地”のリングに登場。ソンブレロをかぶって入場し、地元ウィリアム・セペダ戦ではブーイングで迎えられた。
昨年11月の初戦では、ファーマーがセペダをダウンさせた末にスプリット・ディシジョンで惜敗しており、今回のリマッチでは自信に満ちた姿を見せていた。
しかし、第2ラウンドに左腕を負傷したファーマーは、信念を貫くよりも勇気で戦う展開となり、手数で圧倒するセペダの猛攻に晒されることに。それでも彼はあきらめずに勝機を探り続けたが、最後はセペダがマジョリティ・ディシジョン(多数決判定)で勝利した。
この勝利により、セペダ(33勝0敗、27KO)はWBC暫定ライト級王座を防衛し、2023年から正規王者となっているシャクール・スティーブンソンとの対戦権を手に入れた。この一戦は、DAZNで放送されたゴールデンボーイ・プロモーションズのメインイベントとして行われた。
採点は116-112、115-113でセペダを支持し、もう1人のジャッジは114-114のドロー。
パンチスタッツでは、セペダが974発中344発をヒットさせ、ファーマーは679発中152発を記録。セペダは第12ラウンドを除くすべてのラウンドで有効打数で上回ったが、判定は数字ほど大差にはならなかった。
左腕を負傷して事実上“片腕”で戦うことになったファーマー(33勝8敗1分、8KO)は、激しい攻撃に耐えつつ、要所で鋭い一撃を見せる場面もあったが、セペダの猛ラッシュに対抗しきれなかった。
試合後、セペダはリング上で次のように語った。
「素晴らしいチャレンジだった。今回は前回よりもさらに難しかったよ。彼と22ラウンド戦えたことに感謝したい。タフな相手だと分かっていたし、素晴らしい試合を見せられてうれしい。」
第2ラウンド終盤、セペダは124発のパンチを放ち、そのうち42発(ボディに23発)をヒット。ファーマーはこのラウンドの終了時点で明らかに左腕に違和感を見せ、その後の検査で左手と左肘の負傷と判明した。
『ザ・リング・マガジン』のライト級ランキング5位に位置するセペダは、第3ラウンド以降も高い手数を維持。第4ラウンドにはファーマーが見事なアッパーカットを連打でヒットさせたが、このラウンドの有効打はセペダが33対9と大きく上回った。ファーマーはコーナーで腕を振り、苦しそうに座り込んでいた。
第5ラウンドでは、セペダが118発を放ち、そのうち試合最多の52発を命中。ファーマーも食い下がり、ラウンド終了間際にはまたも鋭いアッパーカットをヒット。
第6ラウンド、元130ポンド王者で『ザ・リング』誌ライト級10位のファーマーは、セペダの鼻に出血を与えたものの、依然として試合を支配していたのはセペダだった。
第7、第8ラウンドもセペダが優勢をキープ。第9ラウンドには疲労が見えるファーマーがダウンするも、レフェリーのマイク・グリフィンはスリップと判断。その後ファーマーは反撃を見せ、強い意志を持ってラウンドを乗り切った。
終盤のチャンピオンシップラウンドでは、ファーマーが見事なパフォーマンスを披露。奇跡を起こそうとする中、第11ラウンドにはグリフィンをノックダウンさせたかのような場面もあったが、これもスリップと判定された。
最後まで打ち合いに応じたセペダは、初戦で果たせなかった“明確な勝利”を手にした。
ファーマーは試合後こう語った。
「手のことについて話す意味はない。彼の手数に対応できなかったり、強打で止められなければ、彼の圧力に飲まれる。終盤の5ラウンドは完全に支配したと思う。最初の7ラウンドはちょっと厳しかった。セペダが勝ったと思っても、俺が勝ったと思っても、どちらにせよすごい試合だったことに変わりはない。」
Manouk Akopyan は『ザ・リング・マガジン』のリードライターである。X(旧Twitter)およびInstagramでは @ManoukAkopyan で連絡を取ることができる。