【BP PULSE LIVE・バーミンガム】――フレイザー・クラークの復帰戦は、1ラウンドもかからず終了。自身も6ヶ月前に悪夢のようなノックアウト負けを喫したが、エベネザー・テテを一撃でねじ伏せた。
タイラー・デニーはエルヴィス・アホルガとの試合で見事な勝利を挙げた一方、アンダーカードではマーク・ジェファーズとトロイ・コールマンがそれぞれ異なる形でストップ勝ち。エリオット・ウェールはルーカス・バリンゴールとの8回戦でキャリア最高の判定勝利を飾った。
全7試合が組まれたこのイベントのメインは、ベン・ウィッテカーとリアム・キャメロンによるライトヘビー級再戦。イギリスではSky Sports、アメリカではTrillerTV+で放送され、最初の3試合はSky Sports BoxingとYouTubeでも配信された。
クラーク、テテを粉砕
英国ヘビー級タイトル挑戦者のフレイザー・クラークが、強烈な2連打でエベネザー・テテをねじ伏せ、復帰戦でまさに狙っていた圧巻のストップ勝利を手にした。昨年10月、リヤドでファビオ・ワードリーに喫した苛烈な敗戦以来のリングだったが、その鬱憤を晴らすような内容となった。
レフェリーのケビン・パーカーが試合を止めたのは1ラウンド1分52秒だったが、実際にはその1分前に、36歳のガーナ人テテが強烈な右を浴びてキャンバスに崩れ落ちた時点で止められていてもおかしくなかった。
デニー、勝利街道に復帰
昨年9月、ハムザ・シェラーズに2回TKOで敗れて以来となるリング復帰で、元イングランド&EBU欧州ミドル級王者のタイラー・デニー(20勝3敗3分、1KO)は、ジャブを軸に巧みに試合を組み立て、エルヴィス・アホルガ(13勝4敗、12KO)に10回97–92で判定勝ちを収めた。
地元の声援を背に受けたデニーは序盤、セコンドから「足を使ってジャブで組み立てろ」と何度も指示される。だが、クリンチのブレイク指示中にクリーンヒットをもらい、困惑した表情を見せた場面もあった。
両者に注意が与えられ、アホルガも2発のコンビネーションを当てる場面を作るが、デニーは手数で上回る。3回にはガーナ人が右をヒットさせたものの、そこから過剰に前がかりになり、ガードが甘くなったところにデニーが終盤4連打をヒットさせ、主導権を握った。
4回、デニーは粘り強くクリーンヒットを重ね、観客のボルテージを上げる。一方、アホルガもボディに2発の強打を決め、観客からは「もっとギアを上げろ!」との声援が飛ぶ。
後半戦に突入しても、デニーのパンチには決定力が乏しく、24歳のアホルガは前進を止めない。挑発気味にダンスを交えながら接近戦を仕掛ける。
アホルガが勢いよく突っ込んできたところに、デニーが完璧なタイミングのカウンター右フックを叩き込む。バランスを崩して倒れたアホルガは「滑っただけだ」と猛抗議するが、レフェリーは無視してカウントを開始。デニーは観客に向かって軽くシミーを披露し、余裕の表情を見せる。
残り2ラウンド、アホルガはロープ際で渾身のボディを決めてデニーをぐらつかせるも、デニーも顔面とボディに鋭い打ち返し。最終ラウンドにはアホルガも見せ場を作ったが、コーナーから「集中を切らすな!」と檄が飛ぶ。試合後、両者は健闘を称え合い、温かい抱擁を交わした。
ウェール、バリンゴールを圧倒しキャリア最高の勝利
ボディ攻撃、的確なパンチセレクション、そしてフットワークが鍵となり、エリオット・ウェール(12勝0敗、7KO)が粘り強いルーカス・バリンゴールに79–74の判定勝ちを収め、キャリアベストとなる勝利で無敗記録を維持した。
初回は慎重な立ち上がりだったが、2回には両者ともにボディにパンチを交換。そして3回にはウェールが明確に主導権を握り、常に手を出し続けて有効打を積み重ねていった。内側の打ち合いでもスピードと反応で勝ったウェールに対し、ポーツマス出身のバリンゴール(18勝3敗、5KO)は接近戦に持ち込もうとするも、27歳のサウスポーは一歩も譲らず。
5回の序盤、クリーンヒットの右を浴びたウェールは苦笑いを浮かべたが、残り30秒には巧みな回転とフットワークで展開を一変させ、連打をまとめるなどリングIQの高さを見せつけた。
「もう一発、行けエリオット!」というコーナーの声が飛ぶ中、6回でも接近戦を楽しんだウェールは、7回でも緩急のある展開を見逃さず、隙間を突いて攻め込む。
8回はやや荒れた展開になったものの、ここまでの蓄積が明らかに差となり、プロ6年目にして最も過酷だった試合を快勝で締めくくった。レフェリーのケビン・パーカーは79–74を提示。
コールマン、壮絶な逆転劇で王座防衛
トロイ・コールマン(14勝3敗1分、6KO)は、第6ラウンドにブラッドリー・ゴールドスミスの猛攻を耐え抜き、終了のゴングと同時にダウンを奪取。その勢いのままに攻め込み、ミッドランズ地域ミドル級タイトル初防衛戦を制した。
昨年9月、無敗だったトム・カウリングとの接戦を制し空位の王座を獲得したコールマンは、今回もまた無敗記録を持つ挑戦者との激突。だが、ゴールドスミス(12勝1敗、8KO)も序盤から躍動し、レフェリーのクリス・ディーンが試合を止めた後は、肩を落として呆然と立ち尽くした。1ラウンド前には、まさに自分がその場面を再現できたかもしれないだけに、その悔しさは計り知れない。
今回が初の10回戦、勝ち越し戦績を持つ相手との対戦もわずか3人目と、経験の差は歴然だった。
コールマンは序盤、ボディへの攻撃を効果的に使い、コーナーではチームが盛り上がる。一方でゴールドスミスも時間の経過とともにジャブを軸に主導権を奪い、動きにも目的意識が見え始める。
中盤、コールマンはやや反応が鈍くなり、ゴールドスミスの連打に押される場面も見られた。しかし打たれても引かず、接近戦で一歩も退かない。第4ラウンドは互いにパンチを交換する激しい展開となり、5回にはコールマンが息を吹き返すも、挑戦者は後方からのカウンターで応戦。
第6ラウンド、両者がビッグショットを打ち合う中、先に手を出したのはコールマン。しかし直後にゴールドスミスが連打を仕掛け、場内は興奮の渦に包まれた。だが、勢いに乗じて一気に畳み掛けようとしたゴールドスミスは、エネルギーを使い果たしてしまい、冷静に様子を見ていたコールマンがラウンド終了のゴングと同時にアッパーカットでダウンを奪う。挑戦者はセコンドに抱えられるようにコーナーへ戻った。
最終7回、コールマンのマウスピースが再び飛んだが、それも流れを止めるには至らず。スタッフォードシャーの王者が意地の防衛に成功した。
ジェファーズ、オープニングで秒殺劇
無敗のスーパーミドル級コンテンダー、マーク・ジェファーズ(20勝0敗、7KO)は、プロキャリアで2度目となる3連続ストップ勝ちを達成。イベントの幕開けで、リカルド・ララを2回TKOに仕留めた。
対戦相手の33歳メキシカン、ララ(24勝14敗2分、12KO)は、ボディから顔面へのコンビネーションに対応できず。ジェファーズの得意とするアッパーカットも炸裂し、その一撃で12年戦士のララはダウンを喫する。
初回終了のゴングに救われ何とか立ち上がったが、第2ラウンド開始からまもなく、再びジェファーズのボディブローに悶絶しキャンバスへ。今回は立ち上がることができず、レフェリーがカウントアウト。試合は開始40秒で終了した。
試合結果
メインカード
ヘビー級:フレイザー・クラーク KO1(1分52秒)エベネザー・テテ
ミドル級:タイラー・デニー 判定勝ち(PTS10・97–92)エルヴィス・アホルガ
プレリム
ウェルター級:エリオット・ウェール 判定勝ち(PTS8・79–74)ルーカス・バリンゴール
ミドル級:トロイ・コールマン TKO7(1分21秒)ブラッドリー・ゴールドスミス
スーパーミドル級:マーク・ジェファーズ KO2(0分40秒)リカルド・ララ