ジャロン・エニスが枕に頭をのせるたび、同じ鮮明な夢が彼の頭に浮かぶ。
その27歳は、暗い部屋の中にいて、光を放っているのは彼の腰と肩に巻かれた5本の世界タイトルだけ。しかし、ちょうどその夢に心地よさを感じ始めた瞬間、彼は目を覚まし、落胆の感情がじわじわと込み上げてくる。
エニスにとって、自分のトロフィー棚はまだ理想の姿ではないかもしれないが、すでに十分なタイトルを手にしている。IBF王座に加えて、最近では空位だったリング誌のチャンピオンベルトを獲得。さらにその過程で、エイマンタス・スタニオニスのWBA王座までも奪い取った。
現在、エニスは3本のタイトルを同時に保持しているが、ブライアン・ノーマン・ジュニアとマリオ・バリオスが残りの2本を持っており、それが4団体統一の“最後のピース”となっている。
そんな中、エニスの父でありトレーナーでもあるデリック“ブージー”・エニスは、自身の息子がその2人を同じ夜に倒す力を持っていると信じてやまない。そして、それを証明する機会が訪れることを願ってはいるが、ただ黙って待ち続けるつもりはないとも語っている。
「俺たちはあいつらを待ち続けるつもりはない」と、“ブージー”・エニスは『ザ・リング・マガジン』に語った。
リング誌王者、IBF王者、そしてWBA王者となったばかりのジャロン・エニスは、体格的に大柄な147ポンド(ウェルター級)のファイターだ。しかし、普段はかなり重い体重で過ごしているにもかかわらず、減量には問題なく成功している。それでも、この階級での時間はそう長くはないと見られている。
残る2人の王者のうち、マリオ・バリオスは主に沈黙を保っている。彼はアベル・ラモス戦で精彩を欠き、スプリット・ドロー(引き分け)に終わったばかりだ。一方、ブライアン・ノーマン・ジュニアは、かなり声高に発信を続けている。
24歳のブライアン・ノーマン・ジュニアとそのチームは、機会があるごとにエニス陣営を批判し、「契約書を送ってこい」と挑発している。もし交渉がまとまれば次戦で激突する可能性もあるが、統一戦の実現が引き延ばされ続け、減量に疲弊したエニスが我慢の限界を迎えた場合、父であるブージーは、息子が王座を返上して階級を上げる可能性もあると見ている。
「すべては“ブーツ”の気持ち次第だ。本人が階級を上げたいと思ったときが、そのときだ。」