タイラー・デニーに、静かに身を引くつもりはない。元ヨーロピアン・ミドル級王者は、再び160ポンド級への挑戦を仕掛ける準備が整っている。
デニーの階級内での台頭は、近年の英国ボクシング界において最も意外性がありながらも、多くの支持を集めた物語のひとつだった。
4度目の挑戦でイングランド・ミドル級王座を獲得したデニーは、その後連勝を重ね、ついには土曜夜のメインイベント常連選手となり、地元ウルヴァーハンプトンのファンの前でヨーロピアン王座を手にするまでに至った。
しかし昨年9月、デニーの快進撃(8戦無敗の記録)はウェンブリー・スタジアムの有名なアーチの下で終止符を打たれた。ダニエル・デュボアがアンソニー・ジョシュアをノックアウトしたアンダーカードで、ハムザ・シーラズにストップされたのだ。
デニー(19勝3敗3分、1KO)は今週末、再びリングに戻ってくる。日曜の夜、バーミンガムのリゾーツ・ワールド・アリーナで、ガーナのエルヴィス・アホルガ(13勝3敗、12KO)と対戦する予定だ。
33歳のデニーは、シンデレラ・ストーリーの続きを書くために戻ってきたわけではない。自分が“健闘しただけのアンダードッグ”以上の存在であることを証明するつもりもない。そうしたフェーズはすでに過去のものだ。
「それがモチベーションってわけじゃない」と、デニーは『ザ・リング・マガジン』に語った。「ただ、自分なりの理由で戻ってきたいんだ。俺の戦歴を見れば、ただのアンダードッグ以上の存在だってわかるはずだよ」
「無敗の選手たちをアウェイの立場で何度か倒してきたしね。誰もが納得するわけじゃないけど、自分の戦績が物語っていると思ってるよ」
「最初のうちは、確かに挑戦者の物語みたいなところはあったかもしれない。でも、ブラッド・レアやブラッド・ポールとの試合を投げかけられて、それに勝って、さらにフェリックス・キャッシュにもしっかり勝ったとなれば、自分はある程度確立された存在だと思いたいし、もう少しリスペクトされてもいいんじゃないかと思う。でもまあ、全員を満足させるなんて無理だよな?」
「俺にとって、まだ終わってない。リストにもう何人か名前を加えたいし、すべてが終わったときには、“よくやったな”って誇りを持って振り返られるはずさ」
デニーがここまで来られたのは、ひとえに一貫した努力と献身があったからだ。イングランド王座を手にするまでに4度の挑戦を要したものの、一度勢いに乗ってからは、数々の国内ライバルたちが彼を止めることはできなかった。
ハムザ・シーラズとの敗戦は、何も変えなかった。デニーはすぐにジムに戻り、これまでと同じ日常に自然と溶け込んでいった。
かつてうまくいった方法は、再び通用する――タイラー・デニーはそう信じている。今回、彼は山の中腹まで蹴落とされたかもしれないが、自分を再びその厳しい道のりへと駆り立てる“やる気”や“覚悟”を探し求める必要はなかった。
「毎日、歯を食いしばって続けていくしかないんだ。毎日、日々、やり続けることが大事なんだ。相手選手との戦いでは、最終的にどっちが強く望んでいるかが勝敗を分けることもあるからね」と彼は語る。
「俺はキャリアを通じて、すべての試合、すべてのキャンプに、全力を注いできた。だから結果がどうであれ、少しは胸を張れるよ」
「前回の試合は、もちろん本当に悔しかったよ。だからこそ、あそこまでフラストレーションが溜まったんだろうな。でも、時間って癒しの力があるだろ? もう乗り越えたよ。今は前に進む準備ができてる」
「それがボクシングさ。ときに本当に残酷なものだけど、こういうことが起こるのは俺が初めてでも最後でもない。ただ、大事なのはどう立ち直るかってことだと思う。俺はこれまでも何度も立ち直ってきた」
ハムザ・シーラズはすでにミドル級戦線から去り、今後数週間でこの階級の勢力図はさらに変化することになりそうだ。4月26日には、『リング・マガジン』史上初となる主催興行が開催され、160ポンドでの因縁対決、クリス・ユーバンクJr vs コナー・ベンが実現。また、注目度はやや控えめながら、リアム・スミスとアイルランドのアーロン・マッケンナによる興味深い試合も組まれている。
そんな中で、タイラー・デニーの復帰戦はやや控えめな舞台かもしれないが、エルヴィス・アホルガに勝利することは、再び“トップテーブル”へ返り咲くためには絶対に欠かせない一歩だ。
「自分の力は本当に信じてるし、まだまだビッグファイトや大きなタイトルを手にするチャンスがあると思ってる」とデニーは語る。
「それに、もっと稼ぎたいっていうのも正直ある。もう33歳だから、できるだけ稼ぎたいよ。別に衰えてきたとかじゃないし、むしろ今が一番調子いいって言ってもいいくらいだよ」
「何年も前とは状況が違うと思う。いろんなスポーツで選手寿命が延びていて、みんな自分の体をより大切にするようになってる。
自分も、まだまだ全力でやれるだけのものを持ってるよ」