パディ・ドノバンが21歳のいとこ、ジム・ドノバンにデビュー戦を前に送ったアドバイスはたった3語――「アンディの言うことを聞け」。
年長のパディは土曜、北アイルランド・ベルファストのウィンザー・パークで
ルイス・クロッカーとIBFウェルター級王座を懸けて
対戦。キャリア最大の試合に挑むその数時間前、ジムはいよいよプロの世界へ足を踏み出す。
26歳のいとこと同様に、ジムも数々のアマチュア実績を持つ。国内タイトルを10度以上獲得し、2018年ヨーロッパ・スクールボーイ選手権で銀メダル、2022年世界ユース選手権で銅メダルを手にしている。
ただしパディとは違い、ジムはキャリア初戦から大きな注目を浴びることになる。いとこが世界タイトル目前という舞台で、自身もデビューを迎えるからだ。しかし彼は、この瞬間に備えてダブリンでパディと共に、アンディ・リーの下で数年間しっかりと準備を積んできた。
「14歳の頃からアンディの下でプロのように練習してきた」とジム・ドノバンは『ザ・リング』に語った。
「アンディとパディがジムにいる時は、いつも自分も一緒に練習していた。もう6~7年続けてきたことで、若いボクサーにとって本当に素晴らしい学びの時間になったよ。」
ドノバンのいとこパディに加え、ヘビー級コンテンダーの
ジョセフ・パーカー、無敗のスーパーミドル級強打者
ハムザ・シーラーズも存在することで、アンディ・リーは2026年末までにゼロから3人の世界王者を育て上げる可能性を秘めている。さらにリーは最近、ライトヘビー級の
ベン・ウィテカーも受け入れている。
リーは『ザ・リング』に対し、すでにジムはフルキャパシティであり、他の有名選手からの問い合わせもあったが、これ以上選手を抱えると仕事の質に影響が出ると感じていると語った。つまり、21歳の新人プロであるジム・ドノバンは、リーのいわゆる「ファンタスティック・ファイブ」の一員。その特別な立場を彼自身もよく理解している。
「自分にとってとても大きなことだ」と同じくミドル級で戦うジムは語る。「軽視しないし、すごく興味深いことだと思っている。自信になるし、アンディが自分を信じてくれているのは大きな励みになる。世界最高のコーチのひとりが自分の後ろ盾でいるのは本当に心強い。パディ、僕、アンディ、そして新しい仲間たちと共に成長してきた。アンディのジムで練習するようになって初めて『これはすごい』と思ったし、とても相性がよかった。
15歳のときにアンディとミット打ちをしていて、彼から“クロンク・スタイルだ”と言われたのを覚えている。15歳の子供にとって、それほど嬉しい言葉はない。パディはアンディにとって最初の選手であり、神のご加護があれば土曜には彼が初の世界王者になる。自分もその道をたどり、数年内に成し遂げたい。」
もっとも、実績あるいとことの近しい関係のもとでプロキャリアを始めることは、特別な扉を開く一方で、課題も伴う。特にいとことの距離の近さから、比較や厳しい視線を受ける可能性が高い。
「僕たちは兄弟のように育った」とジムは言う。「お互いの父親が兄弟で、一緒に育った。夏休みもジムも、すべて一緒。初めてジムに行ったのは5歳か6歳のときで、その時点でパディはすでにアイルランド王者だった。パディの父は7人乗りのスペースワゴンで、毎日僕らをエニスからリムリックへ連れて行ってくれた。パディはずっと僕の人生の中にいた。パディの父はいつも“お前たちは同じスタイル、同じタイプのボクサーだ”と言っていた。今は人々が僕の試合を見て『え、パディにいとこがいたのか?』と思うだろう。僕は彼の影にいることを心配していない。自分の考えも方向性も分かっているから。」
それでも、年長のいとこがジムで寄り添ってくれることは大きなメリットとなる。だからこそ、デビュー戦に向けた非常に簡潔なアドバイスに行き着く。
「要は『アンディの言うことを聞け』ってこと」とジムは語る。「パディがそうしているように、アンディが言うことはすべて聞く。彼はマスターであり、頭脳だ。油断せず、規律を守り、ジムに通い続けて一生懸命に努力すること。それがチャンスを最大限に活かす一番の方法だと分かっている。僕にとってはすべてが土曜から始まる。そしてその舞台が、いとこが世界ウェルター級王座を獲得するアンダーカードという最高の瞬間になる。彼はアンディの導きでそこまで来た。僕も必ずそこに辿り着く。」