よく言われることだが、“最後の試合で見せた姿こそが、その選手の真価”である。
残念ながら、
エロール・スペンス・ジュニアにとって最後の試合は、決して良いものではなかった。
約5年間、スペンス(28勝1敗、22KO)と
テレンス・クロフォードは、ウェルター級の覇権を巡って綱引きを続けてきた。誰に聞くかによって意見は分かれ、スペンス支持派とクロフォード支持派が拮抗していた。
しかし、2023年7月29日、ついに両者がボクシング界の利害を整理し、対戦が実現。クロフォード(41勝0敗、31KO)は一方的な試合展開でスペンスを打ち砕いた。それ以降、スペンスはリングから遠ざかっている。それでも、世間の記憶からは薄れつつある今も、クロフォードの中でスペンスの存在は消えていない。
「俺は彼に10点を与えるよ」とクロフォードは
『ザ・リング・マガジン』のインタビューで語った。「満点の10点さ。」
現在クロフォードは、
2025年9月13日にネバダ州ラスベガスのアレジアント・スタジアムで行われるカネロ・アルバレス戦に向けて、過酷なトレーニングキャンプの真っ只中にある。パウンド・フォー・パウンドのスターを打ち負かすための戦術を練る傍ら、2階級上げるためにこれまで以上にウェイトトレーニングにも力を入れている。
そんな中でも、
アルバレスはあのスペンス戦の夜を時折思い出す。
試合前は、どちらが勝つか分からない接戦になると見られていた。しかし実際には、それとは程遠い展開となった。
現在、スペンスの評価を下げようとする声も聞かれるが、クロフォードはそうした風潮に乗るつもりはない。スペンス自身も、わざわざネットで自分を擁護する必要などないと考えている。誰であれ、スペンスの戦績を丁寧に振り返れば、彼がどれほど偉大なファイターだったかを思い出すはずだ。
「彼は無敗の統一世界王者だった。目の前に立ちはだかるウェルター級の選手を次々となぎ倒してきた。世界王者を何人も倒してきたんだ。だから俺は、彼に10点を与える。」