華やかな発表会見を終え、“ジェリー・マグワイア風”の光沢ある契約映像もネットのアーカイブに収まり、
ベン・ウィテカーはいまアイルランドでトレーナーのアンディ・リーとともに、地味だが欠かせないトレーニングの日々に励む。
キャリア初期をボクサー(Boxxer)陣営のもとで過ごしたウィテカー(9勝0敗1分、6KO)は、11月29日にバーミンガムのNECアリーナで開催される大会で、
ドイツのベンジャミン・ガヴァジ(19勝1敗、13KO)を相手にマッチルーム初戦を迎える。この試合はDAZNで配信される予定だ。
マッチルームCEOのフランク・スミスは、カリスマ性あふれるウィテカーがまだ“完成形”には遠いとしながらも、28歳のライトヘビー級ファイターを迎えるタイミングとして「まさに今がベスト」だと語る。
「私たちはベンを世界的なスーパースターに育てたい。彼にはその能力がある」とスミスは『
ザ・リング』誌に語る。
「これまでの試合では、マッチメークの面で彼にとってベストな環境とは言えなかったと思う。彼にはもっとステップアップして、ファイターとしての成長を続ける必要がある。彼はまだ28歳だ。」
競り合う試合や国内ライバル対決は常に注目を集め、チケットの売り上げを生む。しかし、
ナジーム・ハメド、
リッキー・ハットン、
アンソニー・ジョシュアのような本物の“クロスオーバースター”は、熱心なファンだけでなく一般層にも「彼らのミット打ちやシャドーボクシングを見るためにお金を払いたい」と思わせる力を持っていた。
ウィテカーはまだその領域に達するには長い道のりがあるが、彼には英国ボクシング界――そしてマッチルーム陣営――に新たな活力をもたらすだけのポテンシャルがある。
ウィテカーの生まれ持った才能とオリンピックで培った実績は、コアなファンから対戦相手のレベルについて厳しく見られる要因にもなる。しかし、マッチルームがファンに彼の“物語”を信じさせることができれば、そのスター性とショーマンシップによって、単なる試合ではなく“見せる舞台”を求めるファンからの支持を得ることができるだろう。
「彼は今後5年から8年の間、このスポーツのスーパースターになれるだけの資質を持っている。あとは自分でそれを証明するだけだ」とスミスは語る。
「彼には才能がある。オリンピックでメダルを取るような選手が才能を持っていないはずがない。そして彼は、これまで求められたことをすべてやってのけてきた。」
「最初のリアム・キャメロン戦はあのような結末になったが、
彼は再戦でしっかり修正し、成長した姿を見せた。それ以上に何を求めることがある?」
「それに、彼のことを好きでも嫌いでも、結局はみんな彼を見てしまうんだ。長年にわたって彼と多くの時間を過ごしてきたし、プロモートしていない時期でもよく知っている。本当に感じのいい、礼儀正しい男だよ。」
「この競技では“ショービズ的な要素”が欠かせない。人々があなたについて語る――たとえ好意的でも否定的でも――そのこと自体がこのビジネスの本質なんだ。」
ライトヘビー級はまさに“トップヘビー”な階級だ。
統一王者の
ドミトリー・ビボル(WBA・WBO・IBF)と、元4団体統一王者
アルツール・ベテルビエフが依然として階級の頂点に君臨している。
11月22日、WBC王者
デビッド・ベナビデスが、2度のタイトル挑戦経験を持つ
アンソニー・ヤードを迎えて初防衛戦に臨む。この試合はサウジアラビア・リヤドで開催される『ザ・リングIV』大会のメインイベントとして行われ、ベナビデスにとって自らが“エリートの一員”であることを証明する絶好の機会となる。
マッチルームは、ウィテカーを数多くのコンテンダーたちの中を通して着実に導くことができるだろう。さらに重要なのは、彼にはリング内外で貴重な経験を積ませてくれる多彩な英国ライバルたちがいるという点だ。
無理な飛躍をする必要はなく、スミスはマッチルームが計画を崩すつもりはないと強調する。
「世界レベルに到達するのは2027年だと思う」とスミスは語る。「これからの14か月は“活動量”がテーマだ。試合を重ね、勢いをつける時期になる。」
「14か月で4試合――今年末に1試合、来年に3試合。そのうえで2027年に入るころには、さらにランクを上げていく。」
「彼はアメリカでも大きな注目度を持っている。来年はアメリカで試合をする予定だし、イギリスでも2試合は行うだろう。私たちにとって大事なのは、彼というスターを育てることだ。これまで彼は、すべて自分自身の力で話題をつくり出してきたんだから。」