テレンス・クロフォードほど多彩に難題を解く術を持つファイターは、ほとんど存在しない。
4階級制覇王者で2度の4団体統一を果たしたクロフォードは、相手をアウトボクシングすることも、前に出てプレッシャーをかけることもでき、しかもオーソドックスとサウスポー両方の構えでそれを実行できる。だが、今週土曜にラスベガスのアレジアント・スタジアムで行われる
カネロ・アルバレスの
スーパーミドル級4団体統一戦に挑むにあたり、クロフォードはキャリア最大の試練に臨むことになる。
勝利してこの時代最高のファイターとしての地位を確立するには、持てる技術をすべて駆使する必要がある。最大の焦点のひとつは、クロフォードがどの構えで戦うのかという点だ。近年のクロフォードはサウスポー一本に絞って戦ってきた。それ以前は、序盤をオーソドックスでスタートし、試合の早い段階でサウスポーにスイッチし、そのまま左構えで落ち着くのが常だった。
常識的に考えれば、クロフォード(41勝無敗31KO)はサウスポーで戦うのが妥当であり、番狂わせを起こすにはそれが最善の策と見られる。
サウスポーで構えることには自然な利点がある。オーソドックスの選手は左利きの相手に慣れていない場合が多いのに対し、サウスポーは普段から無数のラウンドを右利き相手にトレーニングや実戦で積んでいる。オーソドックスとサウスポーの対決では、前手と前足のポジション争いが必ずと言っていいほど発生する。両者の手足が近い距離に位置するためだ。
アルバレス(63勝2敗2分39KO)はキャリアを通じて、エリート級のサウスポーに手を焼いてきた。オースティン・トラウトや
エリスランディ・ララはキャリア初期のアルバレスに厳しい試練を与え、ジャッジのジェリー・ロスを含む一部は、ララが勝利に値すると考えたほどだ。アルバレスはトラウトには判定3-0で、ララには判定2-1で勝利を収めた。
また、
ビリー・ジョー・サンダースも健闘したが、アルバレスの強烈な右アッパーで右眼窩を骨折し、8回終了時にセコンドが試合を止めざるを得なかった。
アルバレスは過去15年でサウスポー相手に6戦全勝(3KO)している。しかし、それはクロフォードがトラウト、ララ、サンダースらがアルバレス戦で見せた戦術を取り入れて成功できない、という意味ではない。
距離をコントロールし、アルバレスが間合いを詰めようとする瞬間に代償を払わせ、逆に押し返すこと――これこそがトラウト、ララ、サンダースが最も成果を挙げたポイントだった。そして、距離管理と入り際のカウンターに関しては、クロフォードはボクシング界でも屈指の存在だ。
ネブラスカ州オマハ出身のクロフォードは、2021年11月の
ショーン・ポーター戦でそれを証明した。10回、ポーターが飛び込み距離を詰めようとした瞬間、左アッパーで倒し、さらに同ラウンド中にもう一度ダウンを奪って逆転。クロフォードはポーターをストップした史上唯一の男となった。
クロフォードはアルバレス戦でも、ポーター戦同様に身長とリーチで優位を持つ。ただし、メキシコのスーパースターは不用意に距離を詰めるタイプではない。クロフォードは身長173cm、リーチ188cm。一方、アルバレスは身長171cm、リーチ179cm。ポーターは身長170cm、リーチ177cmだった。
この明確なリーチ差は、クロフォードがサウスポーで戦うべき理由をさらに裏付ける。約10cmのリーチ差は、被弾せずに出入りするための重要な武器になる。
サウスポーで戦えば、クロフォードは右に動く際に優位を得られる。さらに、アルバレスを常に回らせ続けて足を固めさせない効果も期待できる。フットワークとスピードで優勢に立ち、足の位置取りで勝てれば、アルバレス最大の武器である左フックを封じることにもつながる。
とはいえ、どちらの構えを選ぼうともクロフォードの道のりは険しい。12ラウンドをほぼ完璧に戦う必要があるうえ、判定で番狂わせを起こすには明確な勝利を収めなければならないだろう。
最終的には、サウスポーで得られる自然なアドバンテージと、クロフォードが持つスピードやスキルでの優位性を組み合わせることこそ、キャリア3度目の4団体統一を狙う彼にとって最良の選択になるはずだ。