スーパーウェルター級のロアーク・ナップは、順調にキャリアを積み重ねていた。しかし、昨年6月に無名のメキシコ人ホルヘ・ガルシア・ペレスにまさかの3回TKO負けを喫し、大きなつまずきを経験した。
その後、再起戦で勝利を挙げたナップに、フランス・パリで無敗のバカリ・サマケと対戦する機会が訪れたとき、断る理由はなかった。
「タイトル戦線に戻らなきゃいけない。この試合はそのための最高のチャンスだし、勝てると分かってるし、信じてる。」
ナップ(17勝2敗1分、12KO)はザ・リングにそう語った。
「この試合に勝てば、キャリアの流れを一気に変えることができる。あの敗戦から自分を立て直し、近い将来、世界タイトルへの挑戦につなげることも可能になる。」
26歳の南アフリカ人ナップは、あの敗北が自分にとって痛手だったことを認めつつも、すでに気持ちを切り替えており、再び厳しい戦いに身を投じる覚悟はできている。
「普段通りに前に進んだ。引きずるタイプじゃないし、時々ふと、あのとき勝ってたら今ごろどこまで行ってたかなと考えることはある。でも、物事には理由があって起こると信じてる。強くなるには何度か頭をぶつける必要がある。それも経験の一部だし、言わば補助輪だ。もちろん世界レベルではああいう負け方はしたくないけど、成長するために必要なことなら受け入れる。」
ナップは現在、ヨハネスブルグのブライアン・ミッチェル・ジムで、名伯楽ヴシ・ムトロの指導を受けながら調整を重ねており、試合当日に待ち受ける現実をしっかりと理解している。
「間違いなく彼は優れたファイターだ。そうじゃなきゃWBCシルバーベルトを持っているはずがない。キャリアの積み方も完璧だと思う。チームが理想的にマネジメントしてきたし、そうあるべきなんだ。」
「俺は相手の映像をあまり見ない。自分自身に集中して、自分の強みを磨くことに専念している。相手の研究はチームの役目だ。彼らが分析して、作戦を練っていく。自分は軽く映像を見た程度で、深くは見ていない。サマケはとてもスリックなスタイルを持っている。いわゆるフィリー・シェルで構えて、パンチの選び方も非常に巧みだ。無駄打ちは一切しないし、狙い澄ました一撃を正確に打ってくる。テクニカルな試合になるだろう。」
「うちのコーチが見た印象と、俺たちが練ってきたプランでは、多くの相手が彼の正面に立ってしまっている。でも俺はそうしない。動く標的を当てるのは難しい。あいつがスリックで滑らかなのと同じくらい、俺もスリックで滑らかに動く。簡単には打たせない。これは、きっと素晴らしい試合になる。」
今回のサマケ対ナップ戦は少し変わっていて、ラッパーのガゾと“ダブル主演”の形で開催される。だが、ナップは観客の規模に関係なく、目の前の試合だけに集中している。
「観客が5人だろうが、コロナ禍のように無観客だろうが、4万人のスタジアムだろうが関係ない。結局はリングに上がって戦うだけ。人がいようがいまいが、やるべきことは変わらない。だから、観客の数は気にしていない。でも正直、ワクワクはしてる。ああいう舞台で試合ができるのはめったにないことだし、夢でもあった。試合の重みも、賭かっているものの大きさも理解してる。」
この試合は、ナップのキャリアにとって重要な分岐点であり、家族の人生を変える可能性もある。
「だからこそ、これだけの努力を積み重ねてきたし、これからもそれは変わらない。あの夜、どんな結果になっても、俺はリングにすべてを置いてくる。それだけだ。もし思い通りにいかなかったとしても、家族のために心を込めて戦う。」
「こういう試合に勝つことは、キャリアにとってとてつもなく大きな意味を持つ。でも、期待ばかりを膨らませないようにしている。まだ卵もかえってないのにヒナを数えるわけにはいかないからな。まずはサマケを倒すこと、それが第一。勝ってから、どんな扉が開かれるかを見ていきたい。」
「今はとにかく目の前の仕事に集中している。いわゆるトンネル・ビジョンってやつだ。試合が終わるまでは、一切目をそらさない。すべてのシステムは稼働中。あとは4月19日、WBCシルバータイトルを勝ち取って、家族のもとへ誇りを持って帰るだけだ。」
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