リチャード・トーレスは、キャリア最大級の比喩的・文字通りの挑戦に見事に対応した――土曜夜、ラスベガスでの一戦である。
積極的でサイズ的には小柄なサウスポーであるトーレスは、序盤から積極的に攻め、中盤にはグイド・ヴィアネッロの戦術的な修正にも対応し、10ラウンドのヘビー級戦をユナニマス・デシジョン(3者一致の判定)で制した。トーレスにとって最も安定した武器となったのは右フックで、ジャッジのティム・チータム(97-92)、マックス・デ・ルカ(98-91)、スティーブ・ワイスフェルド(98-91)を納得させ、パームス・カジノ・リゾート内パール・シアターで行われた9試合興行のメインイベントを制した。
第2ラウンドには、レフェリーのトーマス・テイラーがヴィアネッロに対し、クリンチの多用による減点を科した。トーレスは右まぶたのカットに悩まされ、終盤2ラウンドでは視界を妨げられながらも勝ち切った。
カリフォルニア州トゥラリー出身の25歳、トーレスはこれで13勝0敗と無敗をキープ。2021年の東京五輪で銀メダルを獲得した彼にとっては、プロキャリアで初めてのフルラウンド戦となったが、身長・体重で勝るヴィアネッロ(13勝3敗1分、11KO)を明確に打ち負かした。
なお、30歳のヴィアネッロは2016年リオ五輪でイタリア代表として出場した経歴を持ち、戦績には3敗1分があるが、トーレスにとってはプロキャリア最大の試練となる相手だった。
身長6フィート6インチ(約198cm)、体重242ポンド(約110kg)のヴィアネッロは、リチャード・トーレスよりも身長で約10センチ、体重で13ポンド(約6キロ)上回っていた。しかし、そうした体格差にもかかわらず、トーレスは臆することなく距離を詰め、試合を通して内側からプレッシャーをかけ続けた。
第10ラウンドでは、トーレスがTKOを狙って最後まで猛攻を仕掛けたが、タフなヴィアネッロはそれをしのぎ切り、ゴングまで辿り着いた。
第10ラウンド残り40秒を切った場面では、トーレスのボディブローが決まり、ヴィアネッロは息を整えるような仕草を見せた。ラウンドの前半にも、トーレスの右フックがヴィアネッロを捉えていた。
第9ラウンド序盤では、積極的に攻めたトーレスがいくつもの強打をヒットさせたが、同ラウンド中に右まぶたをカットし、それ以降の2分間はディフェンス意識を高めて戦うこととなった。
第8ラウンド開始1分以内には、トーレスの右フックが再びヴィアネッロに命中。ヴィアネッロはその時点で疲労が見られたが、その後も右の強打を放って反撃を試みた。
残り40秒を切った場面では、トーレスの強烈な左がヴィアネッロをぐらつかせ、トーレスはその勢いに乗ろうとしたが、ヴィアネッロもまだ危険なパンチを返してくるため、トーレスは慎重さを失わなかった。
第7ラウンド終盤では、トーレスの右フックがヒットしたものの、ヴィアネッロも右ストレートを打ち返した。同ラウンド開始1分過ぎには、ヴィアネッロの右がトーレスを後退させるシーンもあった。
第6ラウンドでは、ヴィアネッロがこれまでのラウンドの中で最も多くのジャブとパワーパンチをヒットさせた。彼はこのラウンドで距離を上手く保ち、トーレスに中へ入り込ませないことで、自身のパンチが潰されるのを防いだ。
第5ラウンド終盤、ヴィアネッロは一時的に距離を作り、ストレートの右をヒットさせた。
ラウンド序盤には、トーレスの右フックが早々にヒット。さらに残り1分40秒を切った場面でも再び右フックを決めたが、ヴィアネッロはジャブで応戦し、トーレスの勢いを止めた。
第4ラウンド残り1分には、トーマス・テイラー主審が両者に対してラビットパンチ(後頭部へのパンチ)について警告を与えた。ラウンド序盤には、ヴィアネッロが頭部へのストレートとボディへのパンチを立て続けに決めている。
第3ラウンド残り1分を切った場面では、トーレスがインサイドから左をヒット。一方、残り2分を切った直後には、ヴィアネッロが距離を作って右ストレートをクリーンヒットさせていた。
第3ラウンド開始前、レフェリーのテイラーは、第2ラウンドでホールディングによる減点を科したヴィアネッロのコーナーを訪れ、その戦術について改めて警告を与えた。
第2ラウンド残り1分16秒、テイラーはホールディングの多さに苛立ちを見せながらヴィアネッロから1ポイントを減点。その後、ヴィアネッロは右アッパーカットを狙ったが空振りに終わり、逆にトーレスの右フックをカウンターでもらった。
同ラウンド開始25秒ほどの場面でも、ヴィアネッロがトーレスを組み止めようとしたところで、トーレスのショートの右フックがヒット。その数秒後、テイラーは2ラウンド連続となるホールディングに対し、厳しい警告を与えた。
第1ラウンドでは、トーレスが内側から力で押し込もうとするたびに、ヴィアネッロが何度もクリンチで対応。その結果、開始から1分経過時に、テイラーがホールディングを止めるよう強く警告。
その直後、トーレスが頭を下げて前進してきたところに、ヴィアネッロは右アッパーカットをヒット。その後はクリンチの中で互いにパンチを打ち合うなど、レスリングのような展開も見られた。
Keith Idec は『ザ・リング・マガジン』の上級記者兼コラムニスト。X(旧Twitter)では @idecboxing で連絡可能。